営業日記(2002/02)。
2002年2月28日 木曜日 |
昨日は定休日。 今日は雨が降ったりで、お店も暇々なので昨日のお休みのことを今回は、書いてみます。 お昼近くに起きて、図書館行って、郵便局行って、吉祥寺行って、銀座行って、神保町行って、 渋谷経由で池ノ上行って、吉祥寺に帰って、家に帰った。 お休みだと、嬉しくて、前の夜から遠足前夜のごとくわくわくしてる。 で、深夜の吉祥寺とかチャリでくりだすのです。 お金ないし飲めないからお店入るとしても、古本屋か喫茶店なんだけど、とにかく夜風の中走ってるってだけで 満足。 休みは絶対でかける。っていっても店がらみなので仕事半分、かな? その間、食事はとらない。けどケーキ&お茶は何度でもする。 昨日は武蔵野珈琲店、風月堂、十二月文庫、でお茶しました。 銀座に行ったのは、宇野亜喜良展が目的。地下のポストカードがすばらしく、しばし夢の中。 なんと宇野先生本人が雑誌かなにかのインタビューのため、やってこられたのでした。 声が聞きたくて、近くでカードを見ていたら、インタビュアーの方が 「イラストレーターでなく、画家になろうと思ったことはないのですか?」と質問された。 その答えは、今ここでなく、活字で読もう、となぜか思い、すぐに会場をあとにしたのです。 それに、モダンジュース別冊宇野亜喜良特集をまだ全部読んでなかった、というのもある。 夢の中のままの気分で、通りゆく銀座のスタイリッシュな人々をながめながらお茶が飲みたい、と思い 風月堂へ。 その後、チョコレートのお店リシャール、画材屋の月光荘(与謝野晶子が命名したとか)へ寄り道し しばし銀ブラ。その後は神保町、東京堂書店の週刊読書人フェアや、周辺の古書店めぐり。 丸の内線、半蔵門線、井の頭線を経て池の上へ。 十二月文庫というお店に行きたかったのです。 エムカンの松浦さんがうちの店に来てくださった時に、「十二月文庫に雰囲気が似てる。」と言っておられたので とっても行ってみたかったのです。 女性ひとりでやっておられる古本とカフェとレコードのお店で、 すっごい素敵です。あんまり教えたくない、という人の気持ちが少しわかるくらいいいお店です。 目の前で、あんなにやわらかいまなざしと指先でドリップされたら、誰だって忘れられない珈琲になると思うのです。 なんか、うまくいえないけど、その女性は、お湯とポットを、魔法のようにあやつっていたのです。 子供の頃、ふとんの中で母におはなしをしてもらうそのすこしまえの満ち足りた気持ちを思い出しました。 実際とてもおいしくて、一杯の珈琲って、こんなに人をしあわせな気持ちにさせるんだ、と思った。 ドリップって、きっと技術と同じくらいハートが勝負。 そんなことをあらたに確信した休日の夜でした。 あ、そうそう武蔵野珈琲店のコーヒーもおいしかった。2杯目飲もうかと迷ったくらい。 さて、雇われマスターさんの方に、「今日、なにしてた?」って聞くと 「松屋行って、どうしても電車が乗りたくなったから三鷹から吉祥寺まで中央線に乗った」 やっぱり松屋か電車だと思った。そのローテーションだもんね。 そんなかんじの、水曜日なのでした。 |
2002年2月26日 火曜日 |
店をやっていて楽しいことのひとつに、お客さんからの情報が得られることがある。 店近辺のこととか、吉祥寺のおいしいお店情報、書店、図書館情報、などなど・・ 今日も、「校正」というお仕事について興味深い話をお聞きしました。 まずアルバイトが見て、そのあと2重、3重、とチェックがあるらしいのだけど、 その校正後でも間違いが発生することがあるそうです。 たとえば、列車に乗る描写があった時、窓の風景、富士山がどちらに見えるかに 辻褄があわなくなると、作家さんにダメだししなくちゃいけない、とか。 故・司馬遼太郎はおだやかな人で、「まあ おはなしなんだから」といった反応だったそうです。 そう、おはなしでいいんじゃないか、と私も思うんですけどね。 そうそう、校正後の間違い、岩波書店はまったく発生しなかったそうです。 一日20ページしか読んじゃいけない、とか決まりがあるらしいです。 そんな話を、文字やディスプレイ、ブラウン管からじゃなく、 身をもって体験してきた人から直に聞けるのは、なかなかおもしろいです。 新刊書店員時代は、ゆっくりお話、なんてできなかったから新鮮ですね。 |
2002年2月25日 月曜日 |
オープンしてからなにかと慌ただしく、「ゆっくりとコーヒーをどうぞ」と言うばかりで 自分がのんびりお茶、というのをずいぶんやってなかった。 昨日、友達が本を持ってきてくれて、とびきりおいしいチーズケーキまで持ってきてくれた。 閉店したあと、お店の片隅でチーズケーキ&コーヒーをいただくことにした。 そのチーズケーキの一口めといったら、もう歯と脳と胃がくっついてとろけそうなくらい美味。 持って来てくれた画集をしばしパラパラ見ながら、ゆっくりと味わいました。 「アンソール/マグリット」のタイトルを見つけ、マグリット目当てで選んだ本なのに、 アンソール(知らなかった)の絵を、いたく気に入ってしまった。 昔はタッシェンから出てたマグリット画集がとても欲しくて、でも高いので結局手にいれられなかった。 でも、趣味も変わったのかな。 アンソールの方がひっかかる。 「鼻が上をむいた女」「海辺のカーニヴァル」「ロシア音楽」 知らなかったけどとても心ひかれる。 「ロシア音楽」にある男性の足、手のくみかた、まなざしがいい。 奇抜なものより、日常の中のささやかな場面を切り取った絵の方が好きになってる。 「歴史」を意識しはじめると、刹那の光をみつけたくなる。 古本っていいな、と思う。心底古本が好きになってる。 この画集も、新刊書店や出版社の冷たい倉庫からやってきたのでなく、 人が息をして、生活していた家の本棚からきたからいいのだと私は思う。 もちろん、誰も手をつけてないピッカピカの本は、すばらしいし、 古いものを扱う、また保存していくのは細心の注意が必要だけど 私は今、古いもの、時間を経てきたものへの愛着を溢れんばかりに感じている。 いろんな意味での「古典」を見直していきたいと思う。 |
2002年2月24日 日曜日 |
「外から見ると、すごく仲睦まじくていいかんじでしたよ。」 お店に後輩がやってきてくれて(嬉しかったです。ありがとう) そんなふうに述べてくれたのだけど、実はよく言われる。 たしかに仲はいいけれど、店ではドライにしてるつもりなんだけどな・・・ ま、自然体でいこう。 夫婦でやっていくことについて、今のところ経済的な心配以外は、スムーズにいってる。 私たちの性格が、正反対なのが良いのだと思う。 「なんでもすばらしい主義の八方美人は、かえって信頼されないよ」 そんなことを時々ボソッと言ってくれる。 助かる。 私って好きな人やものが多すぎて(林檎ちゃんの歌にもそんな歌詞があった)あっちへこっちへ 常に宙に浮いてるようなところがあるから、気をつけないといけない。 009の予約タイマーさえ忘れなければ、ふだんは温和な人なので、しばらくは 協力してもらうことにする。 よろしく。 昨日、ある方のサイトを見て、吉祥寺や代官山の喫茶店にとても行きたくなったのだけど、 そのある方がお店に来店された。楽しくカフェの話などさせていただき、あと地元のいい場所を まったく知らない自分にとっては大きな発見がいろいろあった。ICUの並木道まで今度歩いていこうかな |
2002年2月23日 土曜日 |
「郵便碁」って知ってますか? 私も全く知らなかったのですが、お客さんがはまってらっしゃるようなのです。 インターネット碁はけっこう浸透してると思うのだけど、郵便碁ってめんどくさくないのかな って思いません? 今日、お客さんからその「郵便碁」の紙を見せてもらいました。 会社のとなりの机の同僚と、わざわざポストにその封書を入れて、 「次の手は?」とやりとりするそうです。 でも、そういうのってなんかいいですね。 「わざわざ」という言葉、それは場合によって「趣き」を生み出す。 遠回りをした時に、なにか発見があることと似てる。 旦那に鉄道写真でも送ってみようか、とふと考えた(方向が違うか・・) 今日も友人がやってきてくれて、とっても嬉しかった。 でも、ちょうど忙しくなってあたふたしてしまい、反省点が多い。 「お店の写真をとらせてください」というカフェ関係の方も来店されたり さっきまでの暇さが信じられない、といった忙しさが一瞬ながらあった。 もっと手際よくならなければ・・課題は多い。 頑張ろう。 |
2002年2月22日 金曜日 |
2月22日は猫の日、ということで、 入り口の「本日のおすすめ本」コーナーに、「ネコマンガ」と雑誌「NEKO」を置いてみたりする。 「太宰はどうも、人間失格のイメージがあって、いまいち好きになれないんですよ」 と言ってたお客さんが、佐内正史の写真がいいかんじのビジュアルブック 「女生徒」を店で読み終えた。 そのお客さんいはく、「最後がグッときて泣きそうになった」そうで、 その後、禅林寺まで行ってしまったらしい。 とても嬉しく思う。 太宰を嫌いという人を、明るい作品もあるんですよ!とか考えを変えてほしい、とかいうのは 実はあまりない。 太宰を好きな人も嫌いな人もどうでもいい人もいろいろいていい。 そのお客さんにも、「なにかいいのありますか?」と聞かれたので、おすすめしてみたのです。 嬉しいのは、日常の中、グッときて泣きそうになるようなことってなかなかないので、 この店内でそんな気持ちになってくれたことがとても嬉しいのです。 私も、新しい気持ちになりたくて、今朝いつもより早起きして、禅林寺の太宰の墓前に行ってきました。 いつでも、そこにあるもの、その大きな包容力 このお店も、そんな存在になっていきたいです。 |
2002年2月21日 木曜日 |
昨日は、定休日。 20日の火曜日、うちの店に月光仮面が現れました。 お店に、ひとりの男性が 「処分したい本があるのでひきとってもらえますか?」と車で颯爽と現れたのでした。 身分証明書をご提示いただければ、お時間おありでしたら査定させていただきます、とお返事すると かなり汚れてる本も混ざってるので、ひきとってもらえるだけで良い、とのこと。 その方も、車だったし、私もちょうどコーヒーを作ってる途中だったこともあって ゆっくりお礼もできぬ間に、風のように去っていかれました。 あとで本を見てみると、貴重な本が交じっていました。 その本たちを見ていると、さっきの人の本棚の匂いが漂ってきて これらの本、また違う誰かにかわいがられるといいね、と思い 自分の使命みたいなてごたえも感じました。 春風のような一瞬の出来事だったけど、 このお店を応援してくれる人がいる、と勇気づけられました。 そう、月光仮面みたい。 ありがとうございました。 |
2002年2月19日 火曜日 |
船出・・ 今の気分は、そんな言葉がピッタリ当てはまります。 小さな船が大海へと漕ぎ出した。 次に目指す大陸まで逃げ場はない。 不安がない、と言えば嘘になる。 でも、航海したくてたまらなかった頃の自分を思うとまだ見ぬ新しい大地への期待の方が大きく、胸が高鳴る。 「フォスフォレッセンス」をオープンして2週間がたった。 そして、web店舗もオープンすることができた。 未熟な店主の毎日ですが、航海したなら、日誌をつけなくちゃ、ってかんじで綴っていきますので、よろしかったら見てくださいね。 |