2008年6月30日 月曜日
昨日、閉店前にお客さんが素晴らしい太宰イラストをお描きあげいただけたので、
6月末まで、としていた「あなたが描く太宰展」をもう1週間ほど延長させていただきます。
ちなみにこんなかんじです。

描いていただいた方々、ありがとうございました。
個性溢れる太宰治像、いいですね〜。素敵です。

MXテレビの方はリアルタイムでは見れなかったのですが、サイトのニュースの動画で
今なら映像が見れます。私はそれで見る事ができました。
こんな風に「没後60年太宰治人気ふたたび」と文字が映り、キャスターさんが話しているのを
目にすると、やはり嬉しく、実感が湧いてきますね。今も尚読まれている、という。

ところで「MXテレビ、お宅で映りますか?」と、このところ何人かの方に聞いてみたのですが、
たまたまなのか、映らない、というお答えが多かったです。
ちなみにますたーに「MXテレビって知ってる?」と聞いてみたら「サンテレビのようなもの」という答えで
俄然嬉しくなっちゃったのでした。

太宰の初版本や写真、墓前の様子が映ると緊張感が漂い、
それとなく雨に濡れた紫陽花の花なんかも映り、いいかんじに纏まっていたと思います。
文学館やカチカチ山の絵本など、見て気になった人はいたんじゃないかな

映像で見れた自分の顔はどうも眉毛がこわい(笑)自分で適当に剃刀で剃ったのが丸分かり。
そっちに気がいきすぎてリップを塗るのも忘れていいる、という状態でしたが、
まあそんなことはどうでもよく・・・この関西訛りの人なんか嬉しそうだな、
と我ながら思いました(笑) やっぱり出てますね、イントネーションバリバリ関西やん!みたいな。
でも私のルーツは関西。ならばその部分は大事にし続けていきながら、
関西風でからっと明るく穏やかに、太宰を追いかけていけばいいんじゃないかな、と思う。
木陰で本を読んでいても、それだけじゃ照れくさい。どこか笑いのオチを求めてしまう、
文学少女に成りきれなかった青春時代。だってお笑いのお国の人だもの。
大人になってからでも遅くない。今なら本を読み終えても、
カットの声かかるまで空を見上げてうっとり、くらい軽くこなせる。
「京都に行きたい、住んでもいい」と知人への絵葉書に託し、密かな願望を抱いていた太宰、
そして京都から恋焦がれ三鷹にやってきた私、これも何か意味があるのではないかな。

撮影の時、太宰の魅力について聞かれた時の回答に文章の上手さの他、「センスの良さ」と答えたのですが、
そこでリポーターさんが、「現代にこんなに太宰作品が読まれる事、また最後の地に三鷹を選んだのも
彼のセンスの良さなのかな」と言われ、「そうですよ」と賛同したのです。
時代を超えても十分通用する題材、センテンス、常に読者の事を念頭に置いたからこそ。
戦時中に書かれたものを見れば特にわかる。

うちのお店がやっていけるのも、三鷹だからというのはおおいにあると思うし、お客さんからも言われる。
太宰の事を除いても余りある。なんだかのんびりしているような、落ち着くような文化的なムードがある、と。
うちの店も、この街角も、そんなホッとするようなムードのある場所として在り続けたい。


2008年6月28日 土曜日
お客さんからたーんと桜桃をいただいたのですよ。


すごいでしょ、これ。

先日の桜桃忌ダザイヴェートに参加してくださった72歳の女性の方が、お礼に、と持ってきてくださったのです。
「この前はとても良かった、また次はいつあるのですか?こんな歳だけど参加して良かったのかしら?
また参加してもいい?ほんとにいいの?」
と繰り返されるので、「勿論ですよ。是非ご参加ください」と何度もお答えする。

「パンドラの匣」の初版本の装丁を手がけたのが、ご親類の方、というのが
太宰治に関心を持つきっかけだったそうです。
いろんな世代の方に集まっていただいてこそとても面白い議論ができるし、
斬新な意見も色々お聞きできたこと、早くレポートに書かなくてはいけません(今度こそ早目に!)

喫茶オーダーいただいたお客さんにも桜桃を添えました。
この輝き方って、独特ですよね、まさに宝石だ。あまり紅いものがない店内で一際輝いていました。

おばあちゃんやおじいちゃんたちと演劇や折り紙などを行う会を進めるお仕事をされているお客さん
がいらっしゃって、この時期だからなのか、太宰治の玉川上水心中の寸劇をされたそうです。
おばあちゃんパワーがものすごくて、「私が愛人役ね!」と富栄役の取り合いになったそうな。
可愛らしいおばあちゃんたち・・・その演劇、見てみたかったですね。
悲劇もパロディーにしてしまうような、心中の美しい面だけを見ることが可能であるかのような、
その枯れゆくゆえの肉体と精神のパワーを目の当たりにしてみたかった。

で、太宰はダンディなおじいちゃんが務めたのでしょうか??気になるところです。
とにかくおばあちゃん達が元気、と微笑ましい話を聞きました。
今みなさん篤姫に夢中らしいのですが、「ついに篤姫が男入りしたね」と話題が持ちきりで、
「男入り」って何ですか?と質問するとバシッと叩かれるような勢いだとか。
そんな野暮な事、麗しき乙女に聞かないでよ”ってとこでしょうか?
か、かわいすぎる!そんなチャーミングなおばあちゃんになってみたいものですね。
私は篤姫は坂本龍馬が登場してから(玉木君だから♪)見ようと思っている、というのは邪道でしょうか
なのでよくわからないのですが、男入りってなんでしょね?(マジ)

で、検索してみたらご丁寧に「お床入り」ではないですか?と出た(笑)はいっ。意味わかりましたっ!
最近の検索は優秀ですね、進化してるな〜。私も見習わなければ。


2008年6月27日 金曜日
一応テレビ収録があるので前日に眉毛を自分で整えた。
なんか女性のみなさんとてもお上手に眉を描かれてますよね、私どうもこういうの不器用なようで。
前にますたーと一緒にドンキホーテに行った時に電動眉カットを購入した事を思い出したのですが、
ない。せっかく買ったのにいざという時に出てこないんだから、ほんとダメですね、私って。
「夫婦揃って松屋でご飯食べて帰りにドンキに寄る」、「帰宅して電源入れてみて、うわー、何これー!
とキャーキャー言いながら眉カット実演してみる」というイベントを終えたらそれで自己完結してしまっている
ようなところがあって。賢い奥様までの道は遠い・・・
本を買う時も昔はレジで購入した時点で通過点をクリアした気分になりそのまま積ん読コース、
という事が多かった。それもアリだと思うけど、古本屋になってからは
買った本はなるべく早く読むようにしている。というか新刊本を購入する機会がグッと減りましたからね。

で、なんか眉がこわいかんじになってしまった。ま、いっか、すぐ伸びてくるでしょう。
前に節約生活の中でも、入浴剤やボディローションの類だけは好きなものを使うようにしている、
と日記に書いた記憶がありますが、今もそれは継続していて、そういうお店の前を通ると素通りできない。
いろいろ試し塗りして気分を高揚させている。
今は石鹸はMARKS&WEB、ボディバターはモリンガ(アーユルヴェーダって言葉にやられて即買い)
を使用中。ロクシタンのは高いのでオークションでお得なのが出た時だけ使用、ってかんじでした。
そろそろ切れそうなので次はどうしようか、と思っていたら
ボディショップでAQUA LILYの限定キットが発売していたので迷ったけど買ってしまいました。2100円。
最近で一番大きなお買物です。


こんな可愛いBOXに入ってるし、この季節に百合ということで、白百合の弔いの意味も込めて購入を決意。
右にあるのはコンビニに売っていた安いマニキュアですが、「桜桃色」と表示されていたのに惹かれて購入。
塗るあてはなく、眺めるためだけにマニキュアを買う、これぞ文学少女!な行動
2100円使ったので、この日のご飯はマクドナルドでフィレオフィッシュ100円!とポテトを人間観察しながら
チビチビ食べる・・・隣に座った人が食べてたアイスが美味しそうで追加してしまう・・・体冷えまくる・・・の図

しかし・・・そう、私は遅れてきた文学少女。制服に身を包んだ女生徒の頃にもし電車通学だったら、
その頃から文学少女だったかもしれない。でも自転車で放課後喫茶店に寄りコールミティを飲んでも
片手に文庫、ではなく友達とのおしゃべりが楽しくて仕方ないような女生徒だった。
文化祭では全校生徒を前に「ピンクのモーツァルト」を熱唱。
そもそも文学少女はカラオケでラウドネスは歌いませんね(笑)

長々と自分語りをしてしまいましたが、これは前置き。
収録中にお店について、太宰について語り終わった後、
「羨ましいですよね、こういう自分の好きなものに囲まれてお店を経営するというのは」というリポーターさん
の言葉に、「いえいえ、優雅に泳いでいるように見えて、水面下では足をバタバタしているんですよ」と
お決まりのセリフを答えながら色々考えてました。

今の時代ってひじょうに生き難いんですよね。新聞を読んでいても現実の厳しさを痛感してやまない。
同時に私はなんてラッキーなんだろう、とこの有り難味を忘れるなよ、と。
自分を冷静に分析すると、お店の経営者としての総合点では失格点がスレスレなところ大有り。
もっとボロ出る筈。太宰をビジネスにした(という言い方はよく客観的に例えられるのであえてここでも表現します)
着眼点や真新しさは高得点かもしれないけれど、突出したプラスがマイナスを補えているだけ。
これからもこのまんまでいける、とは思うなよ〜、と気付けてきているのが現状です。
勿論、続けますけれど、自分の満足度の高さを優先してしまうタイプの人間なので、そこに甘えなさんな、
という事を以後もっと意識していかないと。

今日はお客さんにも「いいですね、幸せですよね、好きな本に囲まれて」と言われたので、
「その分贅沢はできませんよ」とお答えしたら、「これが贅沢でなくて何が贅沢なのでしょう」と
返されてしまって納得・・・たしかにそのとおりですね。

昨日は坂口安吾に似たかんじのスーツの男性がコーヒーを飲まれて、なんとなくこの方社長さん風?な
そんな雰囲気が漂っていた。お会計後に名刺をくださったら、うちの店の紹介を過去に掲載してくださった雑誌の
版元の方だった。こんな時に私はもう長年「申し訳ありません、ただ今名刺を切らしておりまして」
と口頭で自己紹介してきている。
オープンの時にまとめて刷って、切れたらそのまんまにしてきてしまっているのです。
こういうところもダメですよね。
ショップカードだって、イラストレーターさんが素敵なのを作ってくださっているのに、現在ちょっと発注を
休止している。すべて長年に渡る資金不足のためです。最優先の家賃や仕入れ代を工面すると
もうあとまったく余裕がない、この状態が慢性化しているんですよね。うーん、月末はいつも頭痛がする。。
42歳、遅れてきた文学少女、恋の革命はもう実質卒業したので、
店主として成長する革命、その為に時間を費やしていきたいと思っております。果たしてどうなるのか、
見届けてやってください。


2008年6月26日 木曜日
TOKYO-MXテレビの収録がありました。
この模様は6月30日(月)17:55分からのニュースの枠で流れる予定です。
没後60年において三鷹市と太宰治の特集、そのリポートのようなかんじらしいです。
特に打ち合わせとか、リハーサルとかはなく、自然に会話している様子を撮影、
というような流れで終始リラックスできました。
うちのお店だけでなく、太宰に関するどんな事が流れるのか、今から放送内容が楽しみです。
でも私はこのチャンネルを見れないので、リアルタイムでは見ることできません。。
もしお家にいらっしゃって、MXが映る方は是非ご覧になってみてくださいね。
とりあえずご報告までです〜

2008年6月24日 火曜日
日曜日、蟹江敬三さんの太宰治作品朗読会へ出かけた後、
ここへ休憩にお茶を飲みに来てくださったお客さんからお話を伺えました。
蟹江さん曰く、太宰の事は最初嫌いだったそうです。
女性と心中というのが大きな理由だそうで。でも読んでみたらやっぱりすごい、と思われたそうな。

こちらのお客さんも同じように、太宰に良いイメージを持ってなかったそうです。
でもとても嬉しいことに、うちのお店の紹介記事などを見るにつれ、まずこの「フォスフォレッセンス」を
読んでみようか、という気になって本を入手して読んでみたところ、悪くなかった、と。
それ以来ちょこちょこと他の太宰作品も読むようになり、段々心捕らえられていった、と。
ご年配のお客さんですので、人生の後半からの太宰治スタートですね。

毎年行われている俳優による太宰作品の朗読、そういうわけで直前になってどうしても聴いてみたくなった。
しかしもうチケットは完売。当日の空席かキャンセル待ちなどが出るかどうか賭けで朝一番に
並んで問い合わせてみたら、奇跡的に?席を確保することができ拝聴できた、という次第。
その経過を嬉しそうに話してくださるとお顔色が段々明るくなってきて、私も思わず笑顔になってしまった。
「こちらさんのおかげでいいひとときを過ごせましたよ、ありがとう」とお帰りになられたけれど、
こういう瞬間、お店をやってきて良かったなーって実感するのです。

生誕100年記念で「斜陽」が映画化されるようですね。
主演の佐藤江梨子さんが桜桃忌当日に禅林寺に来られたようで、お忙しいだろうに
人が大勢いる禅林寺にこの日にちゃんとやって来られたというのはかず子役への気合を感じますね。
上原役がぬっくんということで私はとても喜んでいたのですが、周囲は「え?温水さん?」ってちょっと
シーンとなる1場面もダザイヴェート中のでありました。
個人的には上原が見所だと思ってます。私はぬっくんにエロティズムを感じるのですが、もしかして少数派?
ま、今はとにかく完成を楽しみにしていようと思います。

とここまで必死でキイを打ちました。
実は桜桃忌当日、19日、またPCが全く動かなくなり、なんでこんな日に?と思って
念力込めてスイッチ入れたらウィーンと起動した。夕方にやっと。
それ以来また動いたり動かなかったり、なので不安な日々が続いているのですが、
今日こそ更新しようと思っていたのに開店後2時間くらいは死んでた。諦めた頃に
また念力でウィーンときたので「よっし!今のうち!」と鬼のようにキイを叩いたので、
あまり誤字脱字チェックできないままにとりあえず動いてるうちにアップしちゃいます。
支離滅裂だったらすいません。

桜桃忌が終わった、と浸っているのも束の間。
もう生誕100年という祭りへの準備が始まっています。
躍らせていただきますよ。一人の人間にはいろんな側面があるけれど、
私が追い求めていくのはきっと「明るい太宰」なのだろうな、と思う。水面にきらめくオレンジ色のような・・・

堅い、尊い、敬虔な、賢い、フツカヨイな、ダークな、そんな太宰は他所様にお任せして、
うちは明るい太宰を追及して、私もいつも明るく太陽のようでいれるようでいたいかな。
どうかそんな私を、この場所を、これからも見守っていただけたらありがたいです。
没後60年の桜桃忌、お疲れ様でした。



2008年6月20日 金曜日
桜桃忌の日、届いたものを他にもいくつかご紹介。
毎年桜桃忌に合わせて催される、太宰治作品をモチーフとした演劇第五回は「華燭」です。
三鷹市芸術文化センター+高井浩子(東京タンバリン)presents
ということで、そのパンフレットを数枚おそらく劇団員の方が持ってこられました。
素敵なデザインで、松浦弥太郎さんの寄せた文章を読む事ができる豪華さ。
すごくいいですよ、これ。読み終えてピシッと引き締まる想いがしました。
「ミーハーは別に良いが、度が過ぎぬように」と自分に言い聞かせた。



ふと松浦さんの本や文章に出くわすことは度々あって、その度に初心に戻れるんです。
「10年経ってようやくやりたいことができるようになる、見えてくる」という言葉を指針にして、
まずは10年は必ずやり遂げなければ、と目標にしている。
オープンの日にちゃんとやって来てくださって、色紙に一言書いてくださった事、
この出来事を大事にしたいから、苦しい時も頑張れた時もあった。
といつのまにか松浦さんバナシになってしまいましたが、この演劇「華燭」興味のある方は是非
見にいかれたらどうでしょうか?6月27日からです。詳細はサイトをご覧ください。

桜桃忌当日、宅配便が。中を開けるとこんな可愛らしいフェルト人形が!


なんと太宰の本を読んでます。表紙には太宰の写真、裏表紙にはうちのお店のロゴ、すばらしすぎる!!
うちのお店のマスコット「フォス夫」君の登場です。フォス子はオープン当事からいる子豚ちゃんなので。フォス夫。
こちらを桜桃忌の日に届けてくださったのは、書店員時代の同僚。当事からセンスの良さに一目置いてました。
その方のブログhonnohonnoほんのほんので紹介されている朝倉かすみ著「タイム屋文庫」をお奨めしてくださったのですが、
ちょうど雑誌GINZAの豊崎由美さんのブックレビューを読んでこの本が気になっていたんです。
朝倉かすみに外れナシ、とベタ褒めだったし。ちなみに当店では「そんなはずない」が在庫あります。

ブログより紹介文を拝借して
「そして その女性店主は一人の男性を待っている
すごく会いたい ただばったりもう一度・・・ 
会いたい思いだけでこの貸本屋を作ったのだ」
これを読んだだけで無性にこの本を読みたくなりました。
愛読書が太宰治なフォス夫くん、みなさんに可愛がってもらえるといいな〜。

読みたい本がいくつも出てくるのをどう消化していくか、が私の大いなるテーマだった事を思い出す。
時間の使い方もヘタだからな。はい、そこでプライオリティの確認ね、社員時代を思い出すな〜


2008年6月19日 木曜日
2008年6月19日桜桃忌、曇り空。
禅林寺へ行くのは前日までにひっそりと済ませ、本日はチャリで玉川上水を走り、
遺体が上がった新橋まで行くことにした。


スタートは三鷹駅前。三鷹橋って書いてたかな?紫陽花がきれいです。
最初は新橋に到着するまでに、紫陽花にくっついたかたつむりが発見できないか、とひとつひとつ
チェックしながら進んだのですが、途中で断念・・・かたつむりを探そうとするなんて、それは野暮というものだよ、
と太宰の声が聞こえるような気がして。「あ、かたつむり」と予期せず出会うのがいいに決まってる。だからやめた。
その前に雨じゃないじゃん!って突っ込みはナシね。それこそヤボな質問ですわね。


流れ、流れて、流されて 流されて そうつぶやきながらひたすらペダルを漕ぐ
不思議な道。私の人生を変えた道。ここにある道。

 
辿り着いた新橋。 川を見下ろすと、錦鯉が光ってる。     そして蛇もとぐろを巻いている。

入水の場所や墓前にはもう結構人がいるだろうけど、新橋で立ち止まっているのは私だけ。
60年前の今日、ここはすごい人だかりだった。歴史的な瞬間だった。
今は私と静かな川の流れと木々を揺らす風の音だけ。静かなもんです。
ただこの川の表面にオレンジの光を見た時、すごくざわざわした。
ずんずんとこっちに向かってくるし。気分は「華麗なる一族」の鉄平さん!まさにスローモーションなかんじ。
左手にうごめくものがあってよく見たら蛇がゆっくりと川に沈もうとしてるし、なんだか不思議な体験をしましたよ。

今年の桜桃忌、私すごく楽しかったです。さすがにこの日は通常営業の間も忙しく、たくさんの方に来ていただいて
嬉しい限りです。久しぶりにお会いできた方も、今日初めて訪れてくださった方もいらっしゃったし、
私は朝から爽やかに上水を駆け抜けたのも身体に良かったのか、オレンジの光でテンションが上がったのも
効果があったのか、ずっと気分が良くて仕方ない1日となりました。
そしてダザイヴェートに参加してくださった方々、ありがとうございます。
なんか、レベルたかっ!ってかんじで、自分の勉強不足をつくづく感じさせられました。
私はただくねくねしてるだけで(笑)って、えーっと、今度こそ近くレポ報告させていただくつもりであります。
この没後60年の桜桃忌をお店で迎えられた事にもし忘れ物、心残りがあるとしたら、
さんざん近日レポアップ!と宣言しておきながらちっとも進んでいない事です。
今自分がどれだけ恵まれた環境にいるのか、それについて真剣に考えてみたらさぼってるヒマはないのです。
今度こそズボラな私を捨て、そう、今朝新橋の上から川底に向かって「ぽい」と投げ捨てました。
証人は、あの錦鯉(であってるのかな?不安)です。そう、蛇もいました。彼らに誓って私はもっと真剣にならねば
いけない。行動します。が、その前にじゃがポックル食べてちょっと休憩していいですか?

そう、じゃがポックル(はあと)これが美味しくてハマってしまいました。
北海道から桜桃忌に来られた斜陽というHPを運営するマッチさんからいただいたお土産。
こちらのHPは老舗であり、ひじょうにわかりやすく太宰治の事を解説してあります。
過去の金木での生誕祭の写真、また最新では今年の桜桃忌の太宰の墓前の写真などが見れます。

私は桜桃忌リアルタイムはお店にいるので墓前の様子はわからないので写真で見てわかってはいたけどびっくり。
すごいですね、没してから60年経ってもこんなに愛されて太宰はしあわせものですね、
と一応思ってはみるものの、今朝玉川上水沿いを新橋まで駆けてみてからどうもすっきりしないものも残る。
あの人食い川で流されて息絶える寸前、太宰は何を思ったのだろうか、そればかり考えてしまう。
安吾が「不良少年とキリスト」で(遺書が体をなしていない。めちゃめちゃ酔っ払っていたようだ)
と書いていたように、遺書に対して何か悔いはなかったのだろうか、と。
太宰の死に顔は安らかであった、というのがなんとも救いなのですけど。
富栄さんのお墓がひっそりと写っていますが、私も今度供え物を用意して永泉寺を訪れてみようと思っています。

好きになればなるほどわからなくなるかんじがしている。恋愛初期は必ず甘いもの。頭がしびれるもの。
私もようやくその時期を過ぎて、深くその人を理解したいと思い苦しむ段階に入ったのかと思うと、
これもまたたのしみなかんじがする。しかしその域になるまで6年もかかるとは(笑)いや、やりがいありますね。

桜桃忌には行かなくともお客さんが色々その様子を教えてくださる。
今日の文学サロンでは太宰Tシャツが飛ぶように売れていたそうな。またその太宰グッズを入れる専用袋に
太宰ロゴのデザインが模してあるので、その袋を持っている人はサロン帰りと一目でわかる。
桜桃忌に実際そのTシャツを着用して参加されている人もチラホラいらっしゃった、
これってミュージシャンのコンサートと同じですよね。そっか、桜桃忌はライブなんだ。
でもそれでいいのかもしれない。ひっそり太宰と対話したい人はちょっとずらして訪れるだろうし、
桜桃忌当日は祭りでいいのかもしれませんね。

コスプレ?の人も少しいた、コスプレというか、もしもう一度高校生に戻れるのなら、
制服で桜桃忌に行きたかった。ホンモノの「女生徒」の制服姿、これは今風に言うとJK時代しか
不可能な事なので。私が桜桃忌に行ってた時にリアル女生徒チラホラ見ましたけど、ひときわ眩しいですからね。
でも私の過去の実際の高校時代はというと、文学少女ではなかったのです。
ディスコで踊ってる方が楽しかったし、クラスでは活発な方でした。私は要するに根がミーハーなんですよね。
ま、今はそんな私の話はええか。今私ができるコスプレ?ないな・・・
禅林寺の門から出るまでずっと白いパラソルをクルックルッ、くらいしか芸がありません。
となにかとオチを笑いへ持っていってすべるのは大阪人の性なのです。お許しを。


そうです。40過ぎてもミーハーなので桜桃忌にはとりあえずカタチから入って気分を盛り上げる。
毎年この時期だけ履くVANSチェリー、ソックスもチェリー、キャミソールもチェリー、イタイかしら、いいわよね。

えっと桜桃忌の様子聞き耳の話題に戻って・・・
講堂での対話での発表では発言が今年は活発であった、
三島についての話題も出た、あと皆さん私に報告してくださるのが、
太宰の生き方に憧れて現在は年上女性のヒモをしている、という男性の話。
私をよく知る人は「店主さんの好きそうなハナシ」というかんじで教えてくださるのですが、そのとーりで(笑)
くわしく!な反応してました。

真っ赤なワンピース姿の水川あさみ似の女性がとてもキュートな太宰イラストを書いてくださったのは
嬉しかったな。おしゃれ童子な太宰を描いていただきました。6月中貼ってあるので是非ご覧になってください。
黒いワンピースの女性もおきれいな方で、私にはバックに白百合が見えた。
私の新聞記事の写真を切り取って「これあなた?」と来てくださったおじいさまとか、
そういえば開店一番のお客さんは大阪から日帰りで来られていた。金田町の話題をここでしたのはお初でした。


お花もたくさん、いただきものも、お客さんも今日はたくさん、賑やかな1日。心はずむ1日。
太宰治さん、99回目の誕生日おめでとう。なかんじで♪

そして〆はダザイヴェート。そうそう、この前若者は「ダザイ」っていうんだ、と他人事のように書いて
しまったのですが、よく考えたら私も使ってましたね(笑)しかも造語で。
詳しくは近日中にレポいたしますが、いやー、ほんとありがとうございました、皆様。
勉強不足痛感。読書不足も痛感。でも最中もすごくワクワクしてました、私。
一言でシンプルに楽しかった。時間足りないかんじがしたし。
私は「なんて言ったらいいのかな・・・」ばかり言ってたような気がする。
皆さんはバシバシ意見を交わしてるというのに。四十にしてまだまだ未熟者、チェリー女史です。

そんな桜桃忌当日を終えて、やっぱり太宰はしあわせものだと断言できる。
この時代にこんなに熱い議論をされる人、まだまだ底は深い気がする人、生きてる間はずっとハニカミの人、
安らかに眠っている今は、この状況を、祭りを、素直に喜んでいるのではないかと・・・思いたい。

寝る前に「あの錦鯉って太宰かな」なんてぶっとんだ事を言う私にますたーは
「君はほんまにしあわせやな〜」といつものセリフを。わかってますよ、そのいつもの一言が聞いてみたく
なったからちょっと言ってみただけさ(笑)



2008年6月16日 月曜日
死して後の幸福の日々
本日の日経新聞の春秋に太宰の事が書かれていたようです。
「本物は時代を経て、むしろ輝きを増す。太宰はその代表選手だろう。」など、太宰を賞賛している文章が続く。
文学サロンの盛況ぶりや「女生徒」の普遍性、「現代の文芸のどれほどが、60年後に命脈を保てようか」
という言葉は例の文春の吉本隆明の記事の文章を思い出しました。

昨日お客さんとも話題にしていたのですが、三鷹市の太宰生誕100年事業への急ピッチもすごい。
三鷹太宰治マップ(100円)が完成し、文学サロンで購入できる。太宰ゆかりの場所に案内板も設置。
またサロンで太宰Tシャツや一筆箋など太宰グッズの販売も開始、ロゴマークも完成、とすごいです。
なかでも原きよさんが7月2日にサロンで朗読されるのは楽しみですね。

春秋にしてみても太宰が賞賛され盛り上がってくると勿論素直に嬉しいのですが、
同時に「太宰〜?ここ最近の盛り上がりぶりは何なの?」みたいな悪口が聞こえてくると
なぜかホッとするような、そんな不思議な感情もあるのです。ヘンでしょうか。
でもそれはほんの10%くらいですよ。
前より多くの人が太宰の本を手にとったり関心を持たれているとしたら、うちの店にとっては最高です。

そうです、かくいう私もおおいにのっからせていただいた張本人ですから。


この季節にうちの店の外観がさくらんぼと太宰一色になるのも窓辺の風物詩です。

先日お客さんが窓辺に座られてコーヒーを飲みながら「気持ちいいなー、ここ」と誰にでもなく言われて、
思わず洩れたような一言。それがとっても嬉しかったんですよ。
そう、太宰を好きな方も、全くどうでもいい方も、ここで気持ちよく過ごして頂けたら、
それが一番私も嬉しく心地よい事。

歩くのにとても時間のかかる、もうかなり高齢のおばあちゃんがこの窓辺に置いてあった「武蔵野心中」を
購入された。「この人、きれいな人だったんだね」とゆっくりゆっくり、帰っていかれた。
本を読んでどう思われたかな?

若いファンは親しみを込めて「ダザイ」と書いたりする、か(春秋より)
時代は移り変わっていってるのですね。
ファンも小奇麗な人が多いのかな?そういえばネットワーク大学の太宰百夜に通ってるお客さんが、
最近の若い講師さんはイケメンですよ、なんて言われてた。たしかに。
私が行った回で若い先生は2人いらっしゃったけど、すごく爽やかで今風というか、
普通にモテそうな清潔感ある人でした。勿論、イケメン大好きな私は嬉しい限りなのですが(笑)
もっさりとしたそれこそ顰蹙・・・まで言うとアレか、そこまで言わないけど、
煙草の吸いすぎで指先が黄色く変化してるような、そんな
無頼派風な太宰ファンの人にも存在し続けてほしいと思います。

そのお客さんに金木の太宰生誕100年祭の今年のポスターを写メで見せてもらいました。
バー・ルパンに腰掛ける太宰の写真でした。かっこいい・・・今このポスターが一番欲しいかも。

なんだかんだ書いてしまいましたが、盛り下がってるより盛り上がってる方が全然いいわけで。
うちも頑張ります!
お客さんには話し始めているのですが、夏休み特別企画で中・高校生も是非ご参加を!な企画で
「走れメロス」の読書会をする!とか、今盛り上がっている「蟹工船」を太宰とからめて読書会をする!とか、
実際滝壺に行って「魚服記」の読書会をする!とか、色々案は練っております。
今年はまだ無理かもしれませんが、年4回の読書会というけれど夏は桜桃忌に重ねているので、
「夏」枠で夏休みの課外授業的な事、番外編的なことをするのもいいかな?と思い始めたわけです。

映画「ジェイン・オースティンの読書会」を観た時に、海辺の読書会のシーンがあって、これだ!と閃いたのです。
実際適した滝つぼがあるのか?とか、難しければ他に作品とリンクできる夏っぽい場所はないか?とか
色々考えながら過ごしていきたいと思っていますので、同じように何か閃いた方、お知恵をお貸しください。

では次回の営業日はもう桜桃忌当日であります。明日明後日は連休をとらせていただきます。
桜桃忌ダザイヴェートはまだ少し余裕がありますので、当日参加してみたい方はご連絡いただくか、
来店時お伝えください。メールのお返事は19日木曜日以降となります事、ご了承ください。
19日は桜桃を用意して、お待ちしております。


2008年6月15日 日曜日
先日日記に書いたシブリの近くのいい匂いのする樹は「朴の木」ほおのき、というのだそうです。
タイサンボクの木、ともマグノリヤ、とも言うようで、木蓮科で大きな葉が特徴。
ロクシタンのボディクリームにそういえば「マグノリヤ」があったな、と思い出しました。
その植物に詳しいお客さんからまたカモミールの小さな花をいただきました。

レモンバームのいい匂いがします。
そういえばこのところ悩みのタネは蚊対策です。通りの桜の木が急成長している影響もあり、
虫が近辺に大量発生しています。ドアが開く度に足の長い蚊なんかがとフラ〜っとご一緒に来店されるわけです。
せっかく来店くださったお客さんに不快な思いをさせてしまっていないか、気になるところです。

お客さん情報ですが、蚊対策は今年新時代が到来していて、軒下に下げるシートタイプ「虫コナーズ」が注目だそうで、
今度薬局に行ったらチェックしてみようと思います。実は昨日もう四隅に置くやつは購入したので、さっそく置いてます。
さて、効果はどうでしょうか?
先日吉祥寺で新らしめな古本屋さんを見つけたら、入り口のところにいいかんじの煙がゆらゆらと。
どこが源?と確かめると蚊取り線香を潜らせていた模様。これだ!と閃いて、というかパクらせていただいて(笑)
うちの入り口にも蚊取り線香を仕掛けようかな、など色々目論んでおります。
やっぱり日本の夏、こころの夏、ですよね・・・違ったかな?
若い人が始める古本屋には夢があるな〜。粋な工夫があるな〜。
本を買ったら素敵な栞を頂きましたよ。是非頑張っていただきたいものです。

そう、若い人が創る本も斬新です。
今、三鷹図書館でのテーマ図書コーナーで太宰治が特集されているのですが、そこで先日
異彩をはなった1冊の本に目がいきました。「アスピリンの恋 太宰治」とだけ表紙にあります。
出版社は飯塚書店。デザインや編集は男性の名が3名。
ページをめくってみてますます不思議な感触。駆け込み訴えやチャンス、太田静子宛書簡が絵画と共にある。
それがほんの2,3日前の事かな?

そしたら今日、その本の営業、というか「ただ置いておいていただいて、気になった人に手にとってもらえる
だけで良いのですが」という欲のない営業さん?が来店されたのです。偶然というか引き寄せというか、
とりあえず本を置かせていただくことにしました。太宰棚に面出しでありますので、どうぞ手にとってみてください。
文中に注釈がたくさんあるのですが、そのひとつひとつのマークまで凝っていたり、なにかと斬新な本です。

例の太宰から静子さんへの書簡「一ばんいいひととして、ひっそり命がけで生きていて下さい。コヒシイ」
というのが本の最後にあるのが個人的に嬉しいです、そうお伝えしました。
満点の星の下、玉川上水沿いの道で太宰が二重廻しのなかに静子さんを包み込み、
圧しかぶさるようにして抱きすくめ、荒々しいほどのはげしさで接吻した、という
野原一夫著「回想 太宰治」のある一節を思い出していました。

編集やディレクター名で男性かと思っていたけれど、女性の方でした。
なんでも駅の名前を2つくっつけてみた、というペンネームにはすごい発想だな、と感心しました。
私にはない発想の仕方。蚊対策について教えてくれたのも彼女です。
まだパラパラとしか読めてないので、時間のある時にゆっくり目を通してみます。



2008年6月14日 土曜日
露出後の週末というのに意外にヒマなうちの店。そう、これがフォスフォレッセンス。
でもうちの店に話をしたいという目的で来てくださった方とはじっくり会話できるのが良い点。
今日は出版社で長年雑誌づくりに関わってこられたというお客さんに貴重なお話を伺えた。

今読まれている本は「顰蹙文学カフェ 高橋源一郎 山田詠美 講談社」ということもあってか、
来店中の会話の中で20回くらい「顰蹙」という言葉が登場しました。
仕舞いには「フォスフォレンスの意味は燐光、でなく顰蹙、ってくらいに」なんて過激な発言が(笑)
でも短い時間の中でも多くのものを学べた気がします。

開口一番に朝日の記事を見てご来店いただいたこと、フォスフォレンス(この方は終始こう呼ばれてました)
の意味をすぐ調べてみた事、など説明いただき、
「あなたは何か書いていますか?いつか必ず書く日が来ますよ」と言う鋭い眼光にドキドキしました。
そして「なるべくこのお店の今のスタイルは変えない方がいいね。淡々とただ続けていたらいい。
改新しない方がこの店の魅力は失われない」にまたドキッ。まさに私の目標のスタイルです。
このおじさま、ただものではないな、しかしここはこういうおじさまをよく引き寄せるな、なんて思っていると
「随分過激な本が並んでいるね」と今度は意外なお言葉。
ここにいる私は過激だなんて一度も思ったことなかったのですが、そうか、見る人によってはそう感じられるんだ。
だったら私もあまりこの性格を変えず、ふわーっとしたかんじで居続ける方がいいのだろうな。
過激×過激でなく過激×柔軟、ならうまく溶け合っていけるような気がするのです。

瀬戸内寂聴の新聞連載「奇縁まんだら」のコピーをくださったり、棚に並んでいた岩野泡鳴の「放浪」について、
(カニの缶詰を作る事業に失敗して北海道中逃げまくる話らしい)
太宰が尊敬する作家、葛西善蔵.の湖畔手記の素晴らしさ、馬込文士村について、など色々レクチャーして
いただいて、それがすごく引き込まれて、これらの作品を全て読んでみたくなりました。

そしてなにより太宰の話。「奇縁まんだら」のコピーにも「マイナスをプラスにする魔術師こそ小説家」
という表題があったのですが、太宰はまさにそれだね、と。
真の文学が生まれる為には一夫一婦制では無理。顰蹙を買うくらいでないとね、と。
「文藝春秋最新号に吉本隆明が『蟹工船と新貧困社会』という記事を寄せているけど読んでください
文学とはつまり沈黙だと書いている。読むことは書くこと、書くことは読むこと、
自問自答し自分の中で積もっているものの表現だ、太宰にはそれがある」と。

「秋葉原の事件のようなことは現代にはまた起きるかもしれないですよ。
太宰ナビという文庫の表紙に書いています。『ナイフを持つ前に太宰を読め』と」
もうずっとひとコマの講義を聴いている学生のような気分でした。
こっちがコーヒーと本代をいただくという段階になって目が覚めたようになりましたが。
実に刺激あるお話をありがとうございました。
土曜日でもヒマな時間があるからこそできる事。
フォスフォレンス?顰蹙文学カフェ、または無頼派ブックカフェ、目指しつつ
このスタイルのまま、続けていきたいと思っております。そう、淡々と。


2008年6月12日 木曜日
朝日新聞「太宰治と私」掲載の日。
たくさんの方からメールやお声かけいただき、とてもありがたかったです。
あんなに大きく、しかもカラーで自分の素顔が出ているのはやはり照れます。
カメラマンの方の腕が良すぎで、雨が近づく日の予報代わりの私の天然くせっ毛のチリチリ具合まで
まるで絵画のように(笑)そのまんま、現れていたのもありますが。

でもみなさんすごく褒め言葉がお上手で、「知的なかんじ」とか
「手の仕草とラフなシャツの着方と素顔はかえって貫禄出ます」とか
「バックの本とよく似合われてます。長年本に携わってきたからこそ醸し出せる雰囲気ですよね」
とか良く言ってくださって嬉しい限りです。対して
「一応紙面に出るのに眉をちゃんと描こうとかないワケ?」なーんて声もあったとかなかったとか・・・

記事を読み終わってみると、ここに出ている人って本当に自分?中の真の自分は負けてないか?
なんて気分にもなっていたので、そんな声を聞けてようやくこれは他でもないあなたですよ、と飲み込めたかんじ。
最後の台詞が上手いな、と読んだ時は思いましたが、自分なんだ、すご・・・
文学に無縁の人だったら引く人は引くかも、という思いも
「文学少女って30代40代になってからはちょっと生きにくくなって、部屋で本読み続けるくらいになっちゃう事が多くて。
そう思うとその後の文学少女の生き方としてはバイブルですからこのまま突っ走ってください」など
ためらいを取り去ってくださるような、心強い言葉をいっぱい頂きました。
たしかに紙面通じて天国の太宰にラブレター送るような技は現代に出来る女性はなかなかいないだろう、
ライバルいますか?いたらかかってきてもいいですよ?
なーんて強気に出ちゃう方がかっこいいですよね、ここまで来たら。
(と書きつつ手が震える小心者な私・・・)

たまに質問されるのでひとつだけ念の為説明しておくと、私の経歴として美容師資格所得後、
立命館大学生協書籍部にいたのはパート勤務です。正社員ではありません。
昼間に生協書籍部でパートとして働きながら、夜は2部学生として日本文学を学んでいたわけです。
今の読書会のベースになるものは、ゼミの時間へ対する情熱の抜け殻でもあるかも。
当時は不真面目だったから、あんな夢の時間をなんでもっと真剣に取り組まなかったかなーっていう
ひとつひとつ穴を埋めていってるかんじがします。ちなみに私は「走れメロス」の発表を経験しています。

で、大学卒業後、書店に正社員として就職しました。7年間勤めて辞め、三鷹に転居、現在に至ります。
他の媒体の紹介記事などで、たまに「生協書籍部で店長を経て」等紹介されているものがあり、
恐れ多い!とおののいたので、一応訂正しておきますね。

私としては、前日の朝日新聞夕刊に、例の太宰のバー・ルパンでの写真のカットが大きく掲載されていた事
がとにかく嬉しくて。次の日にバトンのように?自分が「太宰治」の文字と共に記事になった、
というのはこれは本当に幸せなことだな、と思います。余韻はずっと続いていますよ。

最も嬉しかったことは、生前の太宰の近くにいた方の娘さんよりご連絡いただき、
「今日の記事を見て、嬉しくなって」とお話してくださった事です。
「父はもしかしたら、私たち家族よりも、太宰さんの事が好きだったかもしれません」
私もその方の書籍を読んだ事があり、その声を聞いて途中でこみ上げてくるものがありました。
その一言に太宰の魅力が全部詰まっているかのような、
私の中で「間違いない」という想いが湧き上がってきました。それは店を開いて良かった、とか
太宰に実際会ったらきっと私も好きになってただろう、とかいろんな主語にかかります。
「あなたのようなお若い方が太宰さんをお好きで、お店を始められて、というのを本当に嬉しく思います。
今の若い人って太宰さんとかそもそも昔の人の本ってもう読まないでしょう?」
とおっしゃられたので、そこだけは少し強調して「そんなことないですよ、太宰さんの本、若い人も
たくさん読んでますよ」と言うと少し驚かれてました。
また一度お店に伺ってゆっくりとお話を、ということになりましたが、楽しみにお待ちしております。
そんな風にいろんな事があった1日となりました。
今日という日を終えて、さあ寝よう、とベッドに入ったらなんとなくモヤーっとしたものが。なに?これ。
ますます太宰さんの事が好きになっていました。私の熱病は永遠に?続きそうです。



2008年6月10日 火曜日
今日は久々にお店で笑い転げました。
オープン後、ほぼ同時に男性のお客さんが来店され、太宰トークで盛り上がりました。
先日の読売新聞と雑誌を見てご来店いただいたということで、光栄ですね。
お一人の方は太宰と同じ津軽ご出身の方、もう一人の方は九州ご出身の方、
たまたま席が隣同士になっただけだけど、私がパスタを作っている間、自然に色々とお話されていた。
時々起こるお客さん同士のセッション、しかも日本の北と南ということで、中身はとっても個性的なものに。
津軽の方は「三鷹に住みたい。引っ越してきたい」と地図を持ってこられていた。
ああここにも以前の私がいる。この方は本当に三鷹にやってきそうな、そんな予感がした。

津軽の人の訛りって素敵だ。ほんの少しお話しただけでわかったし。
その方はほんとにお茶目な方で、とてもよくしゃべりよく笑い、今日1日で数々の「語録」を生み出した。
「文学ロマンはもう行った?」「あのー、それって文学サロンの事ですか?」「それそれ(大笑)」
「フォスフォレッ%"#%$%&&&%$& って俺どうしても言えないわ。これって何弁?」で大爆笑。
まだ話して間もない九州のお客さんに「俺が教えてやるよ」
これは九州のお客さんの奥様が津軽じょんがらに惚れてしまったエピソードの話題の時。
でもあっけらかんとした物言いはその一言だけで、すぐさま「あなたさまは」なんて丁寧な言い方をされる。
私が九州のお客さんと話していると、津軽のお客さんはガラス越しに若い女性と目が合い「ニッコリ」と
アイコンタクトをされている。ほんと隅におけない(笑)
ああ、津軽の人の逞しさ、ユーモア、強さ、やんちゃ、そんなものを見たような心地よいものが店内に流れる。

かと思えば、なぜか「カサブランカ」の話題になった時、やたらお詳しいし、
「実らない恋だからいいのよ」なんてちょっとしんみりしたムードで名セリフを吐かれる。
本当に恋は実らないからいいような、そんな気がしてきた。ちょっと救われたりも。

九州の方は70歳近い、とのことですが、山登りをされるせいかとっても若々しくダンディーなかんじ。
なんでも高校の同窓生OBのサイトに色々写真を投稿するのに熱中している、とのことで今日もカメラをご持参。
津軽の方もカメラを持ってらっしゃったのですが、写す時は席から店全体の遠景をパチリと1枚撮影するのみ。
その時に「津軽の方の人ってたいていこうなんですよ。写真撮るからこっちに出てきて、とか言わない」
と九州の方が一言。ああ、なるほど、そういうのってあるのかな?ハニカミとはちょっと違うかな?

九州のお客さんが「とてもいい刺激をありがとうございます」と気持ちよく帰っていかれた後、
津軽のお客さんが最後にちょっと真剣なまなざしで
人間失格に「神に問う。信頼は罪なりや」と出てきて、次のページでまた繰り返すところあるでしょ?
おそらくここがキモだと思うんよね。これを突き詰められたら人間失格を理解できた、と言えるように思うわけ。
とさっきまでとは違うモードでおっしゃられました。

「文学ロマン(また間違えてる!)の人は丁寧に自分を行きたいところまで案内してくれたんよ」
と地図の太宰ゆかりの場所を指す。三鷹に住みたくなったのもわかる気がする。私にはよーくわかる。
また来ます。今度は旦那さんも見たいね。もしかして太宰みたいな人?と聞いてこられたので、
「いえ、普通の人です」と定番の答えを返すと
「男は普通で真面目にお金を稼いでくれて、あんまりしゃべりすぎんのが一番じゃよ」
みたいな事を最後に言われてお帰りになられました。
さんざんしゃべりまくった人に「男は黙って」みたいな事を最後の最後で言われたのが思わず
プッと吹き出してしまって・・・今日何回目だろう。
いやー、実によく笑った。声をあげてケタケタ笑った。
その後の静けさが異常に感じたら、いつもはきっと聞き逃している、「クワックワッ」とどこかで
鳴いている鳥の声がよく聞こえた。男は黙って・・・も最もだけど
たまにはお茶目でユーモアある津軽男子に振り回されるのもいいかな、そんなふうに思ったらまた吹き出した
あー、楽しかった。


2008年6月10日 月曜日
昨日街中でお客さんと偶然お会いした。
井の頭通りを自転車で走っていたら「だばさん!」と声をかけられた。
鼻歌を歌ってすっかり油断していたのでかなり恥ずかしかったけれど、嬉しかったです。
こんなところでお会いするなんて!と2人ともびっくりしてました。

あー、でももっと油断している時でなくて良かった。あるいは何か焦ってる時とか。
最近では例えば渋谷。文化村の映画館に行くのに渋谷駅から適当に道玄坂を上へ上へ
上がってれば着くだろう、とタカをくくっていたらさあ大変。
映画の時間が迫っているのにちょっと迷ったみたいで。
交番で道を聞いてから走りましたよ。必死な形相で。しかもホテル街を!
ちょうど出てきたカップルがチラホラ歩いている中、ひとりでひた走っている時に考えたことは、
こういう時だけは、お客さんに偶然会いたくない。だってどっちも気まずいじゃん!って(笑)
映画は無事間に合ってホッとしたけど、あそこホテル多すぎ。あんなに多くても皆やっていけるのなら
現代の過剰な恋愛至上主義も大いなる経済効果があるのか、など考えてしまう。
って「恋愛」って言葉がどこかから聞こえると、「なになに?」て過剰反応してしまうおばさんがここに一人・・・
なんでもいいけど「おばさん」と「だばさん」ってちょっと似てるな(笑)

なんで吉祥寺方面へ向かっていたかというと、お客さんからいい匂いのする樹の話を聞いたんです。
ジブリ美術館の入り口付近に5本くらい並んでいる樹で、5月下旬〜6月上旬のみ、なんともいえない
いい匂いを醸し出す、樹の名前はちゃんと聞いてメモとってあったのに、なぜかそのメモがどっかいってしまった(涙)
場所はとにかくジブリの近くにいったらいい匂いしてるからわかる、と。特に早朝が良い、と。
東京へ来たての頃、気分が参りそうになるとそこへ行ってその樹の香りに癒されていた、と。

その話を聞いてから気になっていたんですけど、なかなか行くチャンスがないまま6月上旬が過ぎていく。
そういえばお客さんから個展の案内のポストカードを置かせていただけますか?と頂いたそのギャラリーって
たしかジブリの前になかったっけ?ならきっかけもつかめたし、行こう。今日行ってまおう!と
決めて向かっていたわけです。

ですが、結局その「いい匂いのする樹」は発見できませんでした。
というか、ジブリから「楽しかった〜♪」顔の人々がどんどん吐き出されてくる中、
一本一本樹の匂いをかいでは「違うな・・・」とか言ってる私、どう見えても怪しい人です。
その樹についてはまたそのお客さんが来店された時にもっと詳しく聞いてから又行くとして、
ギャラリーに行ってみました。しかし個展の展示は終了していた・・・だから早く行動すれば良かったのに。
カフェ付のギャラリーだったのでお腹もすいていたし、じゃ今日はカフェを利用することに。
なかなか落ち着けるいいキャラリーカフェですよ。コーヒーも美味しいし、おかわりできるし。
terraceというお店です。 すぐ近くには天然酵母のパン「風のすみか」や新しいパティスリーなんかも出来ていた
ようだし、ちょっと足を延ばせばシフォンケーキの美味しいハーブスとかもっと行くとパンが美味しいサナとかあって
自転車で駆け抜けるには公園もあるし下連雀1丁目辺りって最高な環境かな、と思います。

コーヒーのおかわりが無料のお店って貴重だな〜って思います。うち?すいません、経費上現状ではちょっと
余裕がありませんでして・・・でもその姿勢から学ぶことは多いですね。
UCCカフェプラザもおかわり無料で、とってもかんじの良い店員さんとかいて、勉強になりますね。
朝から気持ち良く接してもらえると、その日1日気分良いですからね。

最も気持ち良い1日を迎えるためにも、早朝のいい匂いの香の樹をいい頃が過ぎるまでに
味わえますように


2008年6月5日 木曜日
オープンの時、奇襲に遭いました(いい意味で)
前々から取材していただいている読売新聞の記者の方がガラス越しにニッコリ。右手に新聞。
なんでも今日の朝刊にうちのお店の紹介記事が出ているとの事。
「えっ?」とビックリしている暇もなく、
明日も掲載するから写真を撮らせてください、とのこと。
「いやー、昨日一応電話したんですけどね」って昨日はうちは定休日です(笑)

というわけで、また予期せぬ写真撮影となったわけで、
相変わらず私は髪ボサボサ、すっぴん、なわけで・・・
あたふたしている間に「はい、このへん見て下さい」と完全に記者さんのペース。
次はこのあたりで、そこの棚の本の整理、という雰囲気で、
とこっちはかなり近影。撮影後、画像をチェックしながら
「1枚目の方がお店全体がわかっていいですね。ありがとうございます、ではこれにて」
と風のように去っていかれました。
さすが、仕事早い。爽やかな嵐が去った静けさに包まれ開店したのでした。

翌朝は新聞を見に図書館へ行ったのですが、読売のコーナーはからっぽ。
いろんな本を見ながらチラ見し、戻った!と、とりにいくと別の人に寸前で奪われる、みたいな繰り返しで
運悪く見れず諦めました。夫に「1部買ってきて、ダメモト」と一応メールしましたが、結果は予想どおり(泣)
(前回掲載時の過去の日記参照。いつの話だ(笑)
なんとか翌々日見れました。写真が使われたのは近影でなく(ホッ)遠目の店全体がよくわかるショットでした。

と、そんな経緯があったのでここに報告する事もなく先に記事が出ました。
読売新聞朝刊の「太宰新風景 没後60年」というコーナーに5日、6日、と2回に渡り紹介していただいております。
お客さんからメールや口頭で「見たわよ」とお知らせいただき、嬉しいかぎりです。
前回の日記で書いていた朝日新聞の取材のものは来週の水曜日か木曜日あたりに掲載される予定とのことです。
あと、日経も没後60年で太宰を取り上げるかもしれずお話をしたので、何か掲載があるかもしれません。

読売の記者さんは多分私より年下ではありますが、おそらく同世代で関西ご出身の方。
私が1999年、パソコンを使い始めていろんなホームページに書き込みをしたり、交流するのが
楽しくてたまらなかった話をした時に、記者さんもまだミクシィとかSNSがない頃に、
新聞記者になりたい人が集うサイトを運営されていた、とのことで、
今やりたい事を実現なさって仕事に脂が乗ってる感がお話をしていて伝わってきました。

今回の連載は私もとても楽しみにしていました。没後60年、文学サロンもできた、太宰ムードは盛り上がっている、
だけどいや、待てよ?みたいな。太宰が好きな人や、従来出てきている話題ばかりでなく、
嫌いな人の話を取り上げたり、反対のベクトルの部分にも視点を向けた記事を書いてみたい、と語っておられたので。
私の事もいつも優しく穏やかな店主さん、ではなく悪魔な部分(と書くとちょっと響き悪いので、
小悪魔、と書いておこう)なところも引き出してくださったような、面白い記事になっていると感じました。
タイトルで一目瞭然ですけどね、「太宰新風景」21世紀になっても太宰のいのちは途絶えてないよ、
新しい風景を生み出してるよ、みたいな。
最終回まで楽しみに読ませていただこうと思っています。

勿論、朝日新聞の「太宰治と私 没後60年」も毎回興味深く読ませていただいております。
連載第一回目、林聖子さんの記事で、太宰が長くきれいな指をしていて、煙草を吸うとかっこいい、
というところを読んではうっとり、としておりました。煙草の煙が来るのは嫌いなんですけど、
長く美しい指の男性が煙草を吸う姿、横顔、は好きなんです。ガラス越しで見れば無問題、かな?

そういえば太宰が嫌い、とわざわざ言いに来るお客さんの話ですけど、
「なんで太宰のファンの店なのに、酒と煙草が出ないんだ!天国で太宰が泣くぜ、
いや、さんざん女に女房子供泣かせてるから地獄かな?」
なんてやりとりをした事もありました。数々のお客さんとのやりとりが、太宰の写真の棚の前で繰り返された・・・
まだ60年の十分の一しか時間は経てませんが、それらひとつひとつが宝物のように思えます。
そう、褒め言葉も悪口も、みな。


2008年6月3日 火曜日
6月になりました。
今日もお客さんと、「雨の日の自転車はそろそろ・・・カッパですよね(笑)」
「そうですよね、カッパ・・・どうします?(笑)」
「ブランドとかからおしゃれなの販売しそうですよね?」
「でも3万とかしますよ」
「それは買えない! でも安いビニールの着るとサウナ地獄ですよね」
「そうです、サウナです(笑)」
みたいな会話を繰り出しまして、ああ、梅雨だな、6月だな、桜桃の時期だな、と思ったわけです。

そうです。またあの季節が今年もやってきました。
桜桃忌ダザイヴェートの詳細は今週末にアップ予定です。
夕方頃から、なんて話も出ておりましたが、平日開催でますたーの都合がありますので、
18時30分〜20時閉店までの予定です。この日禅林寺に来られる方、少し足を延ばして
うちの店まで来ていただけたら嬉しいです。桜桃忌には行けないけれど、
夜のうちでの桜桃忌に太宰を語る会だけ参加してみたいという方も、是非ご参加をお待ちしております。

5月は初めての個展開催ということで、やってみてとても良かったです。
提案してくださった二艘木さんには感謝しております。
31日の最終日イベント、お絵かき座談会も無事終了し、現在店の奥のスペースには
もう一枚もイラストがない事が、少しさびしいかんじを醸し出しております。
イラストの事は正直、素人でよくはわからない私ですが、一ヶ月開催してみて
二艘木さんは若手のホープ(っていうのもちょっとありふれた言い回しですが)ってこと、
今後も面白い事をやってくれそうな人、ってことがわかりました。
そういうカンは働くから、私。
ここで「りん光する庭」展をできた事はフォスフォレッセンスの歴史のなかで、
きっといい影響を与える1ページになったと思います。

最終日イベントは一時は立ち見も出るほどで、椅子の確保に焦りましたがなんとか大丈夫で、
滞りなく流れていきました。喫茶オーダーを出し終えた後、私も二艘木さんのフリップ説明付司会ぶりや
ゲストの方の貴重なお話を聞けてラッキーでした。本で絵を見させていただいていた方もいらっしゃっっていて
バタバタしていてちゃんとご挨拶できなくてちょっと申し訳なかったですけど、
また機会があれば、ということで。今回は来ていただけただけでもとっても嬉しかったです。
真剣に聞いている参加者の皆さんの表情を見ても、何か私自身を熱くさせるものがありました。
狭い店内だったので何かと不便はあったと思いますが、足元悪い中、来てくださった皆さん、
ありがとうございました&お疲れ様でした。

奥の空いたスペースは、もう少しだけ余韻を味わってから、6月は桜桃忌の月、太宰の月、
ということで、「自由に太宰を書いてください」スペースにします。
正直やっつけ企画感がありますか?はい、否定はしません。。。
台の上に画用紙と書くものペン類を設置しておきますので、よろしかったら自由に太宰を
イラストで書いてください。6月中1ヶ月間、貼らせていただきます。
一言セリフ付や4コマ風など、真面目でもパロでもご自由にどうぞ。

そろそろ没後60年の桜桃忌が近づいているということで、朝日新聞の取材も受けました。
近日中に連載の中のひとつの話として掲載されると思います。ボツにならなければ、ですが。
毎回太宰の連載は好評らしいですよ。今なら店内に前回の連載の冊子を三鷹太宰マップの
隣に置いていますので、ご自由におとりくださいね。
今回はサロンが出来てから初の桜桃忌前のシリーズですし、注目度も高まっていると思います。
多くの人に読まれるといいですね。
写真は店内のみかな?と思っていたのですっかり油断していたら、思いっきり
インタビュー中の近距離からカメラマンさんがアップでパシパシ撮られたので、後悔後悔また後悔・・・
すっぴんだし今日に限ってシャツよれよれだし、天候の湿気で髪はボサボサだし、みたいな。
まあこんなことは今嘆いてもしゃーないし、大阪のおばちゃんっぽいかんじが出ると親しみが
湧いてかえっていいかな?(負け惜しみ発言かっこわるい42歳!笑)
他の回にどんな記事と人が登場するのかも読んでみたいので、楽しみです。


2008年6月1日 月曜日
梅雨に入ったということですが、もうすっかり入ってたじゃん!感がする雨の多い5月でしたね。
だからこそ快晴の日は貴重でしたし、5月のキラキラした光と緑と雨上がりの匂いが懐かしい
かんじがして、そういう日はよく外に出かけました。
深大寺方面の神代植物園のバラフェスタ、前はたしか10月に行ったので、5月はお初。
庭園に近づくとバラの香りがして、心身ともにリフレッシュできましたね。
バラのソフトクリームを食べる、というリベンジも出来たし!
いつか夜のライトアップの時にも来たいな

5月はプライベートでも体調は良い方だったので、映画を観たり、
aikoのライブを前から2列目で堪能したり!もう泣きましたよ・・・すぐ目の前での生歌には大感動!
大切な思い出の夢の時間がまたひとつ増えました。
自分でも歌いたくてたまらなくなり、久々にひとりカラオケに繰り出すも、ストレスが色々溜まっていたのか?
結局シャウト系のラウドネスを熱唱したり(笑)そんな予期せぬ流れを楽しみつつ、元気にやってました。

映画館行ったのも久々ですね。観たのは「ジェイン・オースティンの読書会」これ良かった。
読書会をやってる身としては劇場で観ておかなければいかないだろうな、これは。
ってかんじでライブで渋谷に行かないといけないからその日のお昼に観たんですけど、
大当たりでした。本の好きな人にはおすすめできますね、というよりも、
人生は後半の方がきっと美味しいに違いない、と感じている方におすすめ。
魅力ある中年女性が多く登場していて、スクリーンを見ている間中少しも飽きることがなかった。


こんなかんじでワインを飲みつつ読書会、いいですね。       犬ちゃんの背中を足の指で撫でながら読書、なんかいいよ。
 2枚ともパンフレットの写真より。                   こういう時間の流れ方はまだまだ憧れの範疇だけど。

中年と言われる域に入ると、ロングヘアは似合わなくなる、って思ってたし、相応しくないって思ってたけど、
映画に登場する女性たちはロングヘアをそれぞれTPOに合わせて愉しんでいて、とてもよく似合っていた。
普段はまとめているのに、晩餐会(なんと会場は図書館!)ではおろしてセクシーかつシンプルなドレス、
シックだけど上品なジュエリー、というスタイルがなんとも魅力的に映った。
あ、セミロングくらいならいいかも、って考え直したんですよね。
普段のまとめ髪にジーンズ姿もお尻がキュッとして素敵だからこそ出来る技なんでしょうけどね。
やっぱり適度な運動始めようかな・・・部屋でひとりヨガとかウォーキングなら手軽にできそうだし。

子供時代からコンプレックスだったくせ毛、天然パーマ、
梅雨の時期は憂鬱さが倍になるけれど、そろそろ決着をつけたいな
うーん・・・まだ無理かな・・・とまだまだ惑いの多いお年頃。

映画を観た後、文化村ミュージアムの割引券で「薔薇空間」を見ようかと思っていたら割引券を忘れてた・・・
せっかくだからと中庭のドゥ・マゴでお茶飲んだんですけど、この空間私落ち着く、と感じました。
天井が吹き抜けで圧迫感がなくて、BGMは人々のおしゃべりのみ、というのが静か過ぎず丁度良い。
目の前にはミニ薔薇ガーデン空間。すぐそばにブックショップ、時々ギャルソンが目の前を行く、
最近人の多い渋谷が遠ざかっていたけど、上京前にも時々来ていたこの場所は落ち着ける。
色々と学べた感もあって、久しぶりに心弾んだ外出のひとときでした。
バラが視界にあったのも良かったのかな?
贈り物でバラをいただいた時に、鎮静効果があって、と教えてくださった言葉がよぎる。
そして今月、きっと私は桜桃を口にする。目に入ったり、味わったたりして落ち着くものは
まだまだ私のなかで品切れ状態にならないだろう。そのことに幸福を感じる。

では6月も悔いなく駆け抜けられるように頑張ります。
寒かったり暑かったり、な時期ですが、からだを整えつつ雨の音をもたのしめますように。
またお茶でも飲みに、本でも見に、いらしてくださいね。お待ちしております。


2008年5月19日 月曜日
太宰作品朗読の原きよさんが来店され、嬉しいご報告を。
太宰治文学サロンでの朗読が実現する、とのこと。
サロンも数ヶ月経って内容が充実したきたのでしょうか、また行ってみよう。

そらあるき07号が入荷しました。不思議な事にこの定期便が届くと
開封する時に犀川の風を感じるんですよね。で、中身を見てまた心は金沢に飛ぶ、と。


あうん堂さんは出版もされているのですが、5月末にヘルシンキを歩く地図「Mun Helsinki」が
発売されるという事で、こちらも楽しみですね。
よく北欧に旅行されているようで、なんとも羨ましくいつも思っていたのですが、
このリーフレットを見ればこの本の魅力が予想できますよ。
読んだだけでヘルシンキを旅した気分になれそう。
今なら「そらあるき」に挟み込んでありますのでどうぞご覧下さいね。

長野県高遠の「本の家」もオープンしたのですよね。ご案内をいただきサイトアクセスしてみましたが、
赤い壁がかっこいい。開店までの様子をブログで拝見したりできます。
高遠に行かれる事があれば是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
本の町プロジェクトの事は前々から知っていて影ながら応援させていただいておりました。
日本のどこかに「本の町」をつくろうなんて素晴らしすぎる計画。
ヘイオンワイスというところがその見本の場所のようで、ちょっと気になっています。

高遠の町の中心部に移られ新たなスタートとのことで、これは信州大好きの私としましては
是非訪れてみたい!とその日を楽しみにしております。
毎年恒例の信州夏のひとり旅の有力候補ですね、高遠町。
あ、でも高遠は山桜で有名らしいので桜の頃がいいかな・・・って桜もうオワットルがな(笑)
金沢にも行きたいし、松本も。新しく行ったことのない土地開拓もしたい。
私はどうも城下町が好きらしいですね。

フォスフォレッセンスにもし支店ができるとしたら、玉川上水か下連雀2丁目あたり、
陸橋のあたり、他太宰ゆかりの場所しか考えられないのですが、
三鷹を出るとしたら以前にも書いたことのある富士山周辺。
店名はもう「つきみそう」と決めている。 これは月に一度だけの営業、とかかな。
名前にピッタリの小さなお店、条件は大きな窓から富士が見える事。庭に月見草。
そう考えるとやっぱり今からでも免許取る?うーん・・・と夢物語でも具体的に想像していく
のは楽しい。私のガス抜き場にもなるかも。

もうちょい夢物語を語らせてもらえば、もしそのような事が実現化するとしたら、
スタッフは私と主人ともうひとりくらいやはりアルバイトさんが必要になりそう。
今期唯一見ているドラマが「ラストフレンズ」なのですが、これを見る度に、
将来バイトさんを雇うとしたら、理想はタケル(瑛太)みたいな人だな、って妄想してる。
なによりコーヒーを美味しそうに淹れる才能、みたいなものを嗅覚で感じる(あくまで役柄で)
お店行って「お疲れ様」とか入ってくと「今茶渋とってました」とか言って笑顔で挨拶してくれる、
こんなのいいな〜って(我ながらイタイ)
瑛太ってふとした表情や仕草がとってもいいんですよね。
こんなタイプの人にお店にいてくれたら、って思いますよ。

でもそこばっかり見てるのはありません。なによりルカ(上野樹里)がかっこいい。
ルカが映る度にドキドキするんです。
とどめはモノローグ。毎回泣いてしまいます。
何か心の中に置き去りにした忘れ物をグイグイとひっぱられ痛いかんじ。
見忘れてもネットで補えるのがいいですね。こんな事言っちゃダメかもだけど。
吉祥寺の知ってる場所とかよく映るのが地味に嬉しいし主題歌も好き。
アルバムを聞いた時に一番ひっかかる曲だったし。
今は前クールに引き続き木曜日の夜が楽しみなのです。

明日明後日は連休になります。お天気は雨みたいですけど、それもいいかも、って気分。
2日間充電できたら木曜日からまた新鮮な気持ちで、お待ちしております。


2008年5月17日 土曜日
先日日記に大学生の方がカフェの取材で来店、と書きましたが、そのカフェマガジン「CAFEMO」が
完成しました。表紙はうちの店の窓辺でモデルさんがコーヒーを飲みながら読書されている
とっても素敵な写真です。↓


特に書店などで販売をしていないので貴重かも。中央線のブックカフェの特集、みたいなかんじ
なので興味のある方は店内に1冊常備しておきますので手にとってみてくださいね。

写真にもあるように、頂いたバラを一輪挿しにしてみました。
これが1週間くらい持つんですよね。
野ばらちゃんがエッセイで「真っ赤な薔薇を月曜日に求めれば、花の命は短いけれど、
次の月曜日まで切らさずにおける」と書いていたのをふと思い出し実行してみたのです。
一輪挿し、ちょっとハマるかも。
花のほうも通り行く人にいっぱい見てもらえるから喜んでるみたい。
特に気位の高い薔薇ですからね。照れもせずに喜びは棘に隠してすくと立っている。
エッセイにもありましたが、薔薇をボーッと長く見つめる時間はなくとも、
何かの折にふと真っ赤な薔薇が目に飛び込んでくる瞬間、いとおしい気持ちで満たされる、と。
息をするものが城にいるとやはり違う、と。
花のような街角の存在、そんな初心にかえるにも花を飾るのは良いきっかけになりました。

制服姿の生徒さんたちがたくさんお店の前を囲んで、「なんのお店?」「本屋さん?」
など明るい会話でしばらく賑やかになった頃、先生らしき女性が来店され本をお買い上げに。
「実は3年前の年賀状に、ここの窓辺の写真をプリントして使わせていただいたんですよ」
と嬉しいご報告を。
「あれから色々あって今は教師になりました」と笑顔で帰っていかれました。
生徒さんに囲まれてとてもいきいきとした笑顔。幸せそう。
どんな年賀状だったんだろう・・・とその視線の先に真っ赤なバラの花びらが飛び込んできた。
私もいきいきとしていたいな〜って思った。そう、3年後もずっと。


2008年5月13日 火曜日
42歳になりました!なんか嬉しいです。「42です」って41です、って言うより
言葉にしてみたら柔らかいかんじがするし。
これから「成熟する」という事を愉しんでいかないと、とワクワクしますよ。
そういえば先日の三鷹のお店の紹介のラジオ番組で、「キュートな女性」と紹介
されちゃいました!素直に嬉しいです。
生まれてこのかた「美人」と言われた事はないですが、「キュート」と「チャーミング」は
たまに言ってくださる機会もあり、私自身、自分の好きなところでもあるのです。
誰も見ていないところで、落ち込んだ事があった直後とかに振りつきで歌ったりして
ますもん、私。アホでしょ?でもそういう自分の気分の替え方を知っている、というのは
ラッキーな事であり、長い人生を生きていく中で結構大切。
なんか中学生くらいの時からほんと変わってないんですよね、基本的に。
勿論そのまんまの大人はやばいですよ、心根の部分の話です。

私にとっての「美」「美しいもの」ってやっぱり「人」だな〜って思うのです。
表情や造形の美しさ、色気、きれいなもの眩しいものを見た時幸せになる。
若い時よりも、そのあたりは敏感になってきて、
歳をとるということは決して減るものばかりではなく、増えるものも多くなると思っています。
その心の重量が増える分、表面はどんどん皮をはいで身軽になっていけたら、と願う。

いただいたお花で店内が華やかに


時々花を摘んで持ってきてくださるお客さん       真紅の薔薇、この圧倒されるような存在感・・美しい。
から淡いピンクの可愛らしい花束を頂く。可憐。

約1年3ヶ月ぶりに薔薇を抱えて訪ねてくださったお客さんは、前に日記でも書いたと思うけど、
前回来店時、大人になってから初めて恋に落ちた、と告白してくださった。
そのあまりにもの可愛らしさに心を打たれた私、その後どうなったかずっと気になっていた。
「まだ変わってませんよ」とあれからの事をお聞きする。相変わらずなまっすぐさに打たれる私。
毎日の中ではあまり変化は手にとって見えないけど、1年経ったら微妙に変わっている事って色々ある。
髪型とか、雰囲気とか。そしてなにより人の気持ち。
でも変わってなかった事が、なんか嬉しかったんですよね。
私も気持ちってあんまり変わらない方だから。
その分表面的な事は飽きっぽくてコロコロ変わるけど。気持ち、芯は変わらない。
植物は根を生ったら、表に見えてこなくても、あとはじっくりゆっくりひたすらに、それと似てるかな。

そうそう、植物で思い出した。三鷹ネットワーク大学の「太宰を読む百夜百冊」
よく水曜日に受講日がかぶるから、行ける時は行ってるんですよ。先日は「清貧譚」でした。
私大好きなんですよ、「清貧譚」
前日にもう一度読み返したんですけど、なんだか今の自分の境遇とかぶるところがあったので、
泣きそうになりながら読んでで、何度読み返してもいいなんて、これからもう寂しくなんてなる事は
ないかもしれない、とまで思ったくらい。
「メリイクリスマス」も行ったんですけど、どちらも会場は満員。年配の方が目立つかな?
私は歴史にうといので、その時代の背景を知る事ができたりして随分と為になっている実感が
あります。色々な切り口、アプローチの仕方があるという事は、読書会を進めていく上での勉強
にもなりますし。

面白かったのは「メリイクリスマス」の時、ラストの米兵に「メリイクリスマス」と叫ぶくだりは
当時の民衆と米兵の距離感からして想像し難いのではないか、と講師が述べると、
最後の質問コーナーで、「私はその当時三鷹におりましたが、米兵が行き来するダンスホールが
あったのを覚えていますし、フランクな米兵も実際にいたと思いますよ」というような事をおっしゃる
受講生の方がいらっしゃいました。また、「三鷹の北口(中島飛行機があったからかな?
軍事オタクのますたーに聞いてみよう)と南口で事情が少々違った」などの意見もあり、
意義ある展開になったと感じましたね。

三鷹のダンスホールといえば、富栄さんがミタカ美容院の分室として進駐軍のダンスホールの
中にある美容院に出張していたんじゃなかったろうか?
その辺も調べてみると何か発見があるかもしれない。
こうして可能性が広がっていくのは面白い。
今でも下連雀の上水近くや、ゆかりの場所周辺を歩くと毎回胸が締め付けられるようになり、
決してこのかんじに飽きることはないのだろうと思う。それは決して終わる事のない恋に近い。
新緑から雨の匂いが降ってくるこの季節は特にそう。
私はここに住めてしあわせものですね。

「太宰を読む百夜百冊」なんてなかなか粋な事してくれるな〜、と嬉しいけれど
うちも負けてられません。季節に一度の読書会、100話になるまで続けるぞ〜!
まだまだ元気で頑張らなくては。ま、でもあまり躍起になってしかめっ面になるのは避けたい。
目尻にシワができるとしても笑顔のしすぎが原因、くらいが丁度いい。
のんびりマイペースでいこうと思います。

「このお店良いですね、よく本集めましたね。トインビーなんて今なかなかないよ」と
お客さんにお褒めの言葉を頂きましたが、実はその「トインビー」をよく知らない。
古本屋としては恥なのかもしれませんが、全部カバーなんて無理ですもん。
本がやってきてくれたのはご縁だから知る努力はしますけど、無理は絶対しない。知ったかぶりは・・・
ほんのちょっとはする時あるかも(ダメですね笑)するとしてもお茶目に可愛げある知ったかぶりを。
「太宰」「古本」「カフェ」のカテゴリーよりも「熟女」「キュート」「チャーミング」のカテゴリーで
一発で出てくる女性を目指します(アホ)


2008年5月10日 土曜日
前回の日記にちょっと追記です。
テーマの件ですが、勿論、そんなテーマでレジュメを書いてみたかった、
という方が現れる可能性は十分あったのですが、本番まであまり日がなかったのですよ。
それで判断したわけです。
桜桃忌ダザイヴェートは作品による読書会形式でなく同じようにフリートーク形式なので、
是非お好きなテーマで発表したい!という方大歓迎です。
ただ今開催中の個展イベントが終了しましたら詳細を正式に発表させていただきますが、
もう決まっている、という方は早いめに言ってきていただいて結構ですよ。

個展についてなのですが、前に日記でおもいつきで色々書いてしまいましたが、
よく検討した上で改めまして、
以後は基本2週間5000円、という事で展示スペースの提供を行っていきたいと考えております。
パーティなどイベント貸切料金は1時間3000円の予定です。
個展は奥の階段下のスペースですので、小さな空間となりますが、この場所で何かしてみたい、
という方はご相談ください。

前回一番遠いお客さんで北海道から、と書きましたが韓国からも来店頂いていた事を
思い出しました。日本の友人の方が通訳をされて少しお話できたのですが、
太宰だけでなく日本文学に関心を持たれておられる、ということでした。

これから禅林寺に行く、と言われてましたが無事間に合ったかな?
「何時までですか?」とたまに聞かれるのですが、一応「日没まで」ということになっているので
微妙な案内しかできないんですよね。
でもこの言い回しはなんか好きですよ。いつも時間に追われている日本人、
たまにはお日様の陰りで時を刻んでいくという実感を持ってみたいもの。
禅林寺の地下道をくぐってお墓に出ると、都会の中の異空間だから、余計に時を忘れるし。
「もう日が沈むよ、早く」なんて言葉、忘れかけていますからね。
良い思い出をいっぱい持って帰られていると良いな、と思います。
文学サロンには行かれたのかな?
そういえば時々サロンの方が来てくださるのですが、4月に来訪者4000人を超えたので、
5月には5000人になると思います、と言われてました。多くの方が足を運ばれたのですね。
私も一回しか行ってないし、二度目の扉を開けてみようかな。
下連雀の家の見取り図があった、と聞いたので。一回目の訪問ではなかったと思います。
「おさん」のレジュメで想像の太宰家の見取り図を書いたので、確かめてみたいのです。

日本文学といえば、太宰が「座っていられないほどの興奮」と表現した井伏鱒二の「山椒魚」を
読んでみました。あー、その興奮、わかるかも。自分の中の忘れかけていた、
田舎の川沿いの道のあたりの風景、ぬめっとしたかんじ、苔むした匂いが立ち上ってくるようでした。
やっぱり日本文学は良いわ。もっと読みたい。


2008年5月5日 月曜日
そうそう、肝心なダザイヴェート撮影の報告を書いていなかったです。
当日参加頂いた皆さん、お疲れ様でした。撮影はひとつひとつの作業にとても時間がかかったので、
表で予想以上にお待たせしてしまい、申し訳なかったですが、
おかげさまで無事終了いたしました。

事前に監督側から当日のテーマのひとつに
「貴族が持つ慎ましい人、一般人に対する罪悪感」を加えてほしい。
人間失格・斜陽・黄金風景に織り交ぜて話し合ってほしい。というオファーがあり、
正直びびってました。ちょっとムズカシイんじゃないの?これー?みたいな。
なのでこれについては私が一応レジュメを作って発表・討論し、あとは皆さんにフリートークで
展開してもらおうと考えました。

実際に映画の中でどの部分が使われるのかはわかりませんが、
もし私の発表の場面があるとしたら、ちょっとぎこちなくトンチンカンな事も言ってるかもしれません。
とにかく硬めのテーマなので、太宰についてはすべて作品ありき、
と思っている自分が語るには少し浮いていたような気もします。
でも普段のダザイヴェートはその作品を究めていく作業なので、こういう機会でもないと
ちょっと変わったテーマには取り組めなかったと思うので新鮮で良かったのでは?
という参加者さんの声もあり、何事も経験なり、で有意義な時間であったと思えます。
カメラがまわっている間に話していない人はひとりもいないので、良かったです。

ジル・シオネ、マリー=フランシーヌ・ル・ジャリュ両監督は、太宰の学術的な面ではなく、
このドキョメンタリーでは主にファンの生の声を撮る、という事を中心にされているというのが
興味深いですね。会では「逆に私たちが両監督にインタビューしたいですね、
どうして太宰に惹かれたのか、またドキュメンタリーを撮ろうと思ったのか、
好きな作品は何か、などを」なんて声も出ました。
前に「ヴィヨンの妻」について少し話されていた事を思い出しました。
「ヴィヨンの妻」は仏訳されていて、素晴らしい作品だと。「おさん」は仏訳されていないそうです。
このドキュメンタリーが完成し、フランスで公開されてもっと太宰作品がたくさん訳されるといいですね。

シオネ監督はアラン・キュニー、レオス・カラックス、パトリス・シェロー、ラウル・ルイス
などの劇映画の助監督をされていて、主な作品には「マリアのお告げ」「ポンヌフの恋人」
「王妃マルゴ」「リトル・エルサレム」などがあります。私の好きなかんじのラインです。
監督としては、パリ市ナショナルフィルムセンター協力、ドキュメンタリーシリーズ(1992-1999)
などのドキュメンタリー映画を製作。という経歴があり、どのように太宰の世界を表現されるのか
ものすごく楽しみです。
今回監督から参加者の皆さんに挨拶されていた時に、
「フランス人にも太宰治を好きになってもらいたくてこの映画を製作しています」
と〆られましたが、とても率直な動機で良いな、と感じました。
日本・フランスで来年生誕100年に合わせて公開予定、との事です。

そのフランス語の言葉を少しでも理解できたら良いのに、という事をその後友人に話した時に、
「じゃあ気分だけでもパリに。ここのバケットとクロワッサンは美味いから」と
オー・バカナルに連れていってくれました。
原宿にあった時は行った事があるのですが、六本木アークヒルズ店はお初。
長いバケットをカットせずにそのままカフェラテといただき、気分はフランス人。
とーっても美味しかったです。
テイクアウトのレジ付近にあった「ボンズールジャパン」っていう無料の小冊子が
すごく内容充実してます。パリから行く、近郊の小さな旅特集で、写真見てるだけでも
楽しめました。フランス好きにはおすすめですね、これ。
フランス語はわからないけど、まあいいや。
太宰治を好き、それだけで共通なんだし。
そんな晴れた気分で六本木散歩を楽しんだのでした。


2008年5月4日 日曜日
一難去ってまた一難
なんて文字は歌詞で口ずさむ事くらいだったけど、今その渦中にいるかんじ。
今日コンビニでお手洗いをお借りしたら、入っている途中に誰かに電気を消されてしまい、
真っ暗闇の中で一瞬パニくった。ペーパーも手探りだし、何より鍵がちゃんと開けられるかが
怖かった。けど容易に外に出ることができ良かったのですが、ちょっと冷や汗かきました。

家に帰ってトイレに入ると、太ももに違和感を覚えギョッとすると、ゴキちゃんが今年初のご挨拶。
そんなもんいらんて!ってかんじなんですがぎゃああああああと表に半ケツ?で飛び出し散々でした。
ダメだ、やな流れの気がきてる。これは浄化せねば!と塩をふりかけ、ティートリーのアロマで
落ち着く。あー、でも最近届いたライブチケットが前から二番目ど真ん中!という超良席だった
からこれで差し引き並、といったところなのかな〜?なんて考えながら気功に励む日々であります。

いやいやしかしこの日記が滞っていた期間に良い事も随分あったのだった。
まずはたくさんのお客さんが来てくださった事、
一番遠方では北海道の釧路から。ヴィーナスと薬師寺展を見に来るついでに寄ってくださったらしい。
お名刺を頂くと、彫刻家の米坂ヒデノリ氏。ご紹介させていただいて良いですか?とネットで見てみると
札幌芸術の森に作品が展示されている事を知り、もしかしたら私、以前にここに来た時に目にしている
のかも?と不思議な縁を感じました。芸術の森は新婚旅行で訪れたので。
マンガの話題で楽しくお話させて頂いたお連れの女性は新聞記者さんで、
うちのお店を紹介してくださるとのこと。楽しみです。

あとたくさんの来て頂いたお客さんのお店についての嬉しい事を言ってくださった言葉や、本の話。
思い出すだけで胸の中をあたたかなものが流れます。
また是非ご来店ください。お待ちしております。


2008年5月3日 土曜日
また随分長く日記を滞らせてしまった・・・
春だ春だとはしゃいでいたのも束の間、もう初夏の風の香りがするけれど、
ちょっと酸っぱい五月のスタートに。
二艘木さんのイラスト展始まっております。
あの奥のコーナーがこんな素敵に生まれ変わっております。

 
奥の階段下の小さなコーナーが会場です。            天井の方にも何枚かあります。

芝生を引いてグリーンを置いてライトアップして、と演出は全部やってくださったので、
私も空間作りの良い勉強になりました。「滞」の場だったのが一気に新しい風通しを生んで
これはきっと風水的にも良いのでは?と感じましたね。あまり詳しくないんですけど。

オープニング・コーヒーには予想以上にたくさんの方がご来店くださって、こんな狭い店内ですので
外でしばらくお待ちいただいたり何かと不便な点があったかと思います。
作家さんを中心にとても良い雰囲気で時間が進んでいたのに、
アクシデントがあり来店くださっていた方全員に大変ご迷惑をおかけいたしました事を
お詫び申し上げます。

外で空を見ていたお客様に、その時道端におられ、自分の家をじっと見られていると勘違いした方が
いきなりまくしたてたようなのです。後で聞いた話によると、
その方においてはそのような事は一度や二度ではない、とのことでした。
その時私は店内でコーヒーをつくる準備中だったのですが、外で5分くらいでしょうか?
話を聞く状態だったのでした。とにかく今は早くご注文のコーヒーをつくりたい、お待たせするわけには
いかない、という事で頭がいっぱいで、丸く収めてしまおう収めてしまおう、とそれしか考えて
いなかった。何を言われても謝りたおす状態。それで一旦事はおさまって中に入りお詫びを述べて
続きの作業に入ったのですが、後になってよく考えてみると店主としては失格な態度であったの
かもしれない、と反省しているのです。

その空を見られていたお客様は何も悪くないのに、結局ご一緒に謝っていただくカタチになってしまった。
作家さんも間に入ってうまく緩和してくださったのですが、ここでまさに私の欠点が出た。
なぜもっと毅然とした態度をとれなかったのだろうか、と。
話を順序立ててちゃんと聞いて冷静な判断ができていれば、
営業妨害を申し立てる事も出来たかもしれない。
コーヒーが途中になって少しお待たせしてしまうのは事情をよくお話するとして、
ここではお客様をもっと守らなければいけなかったのではないか、と。
後で相談した人曰く「普通に話して通じる事が過去にもあまりなかったので、どの判断が正しかった
のかはわからない。謝らなければもっと騒いでいたかもしれないし」とのことで、
私も今だ明確な答えは出ないのですが、どっちみち自分が未熟すぎる事は痛感している。
せっかく駅から遠いこの場所にやってきて、楽しい時間を過ごしていたというのに、
そんな災難に巻き込まれたお客様の事を考えると、後で説明はしましたが気分を壊されたと
思うのです。せっかくのオープニングなのに。

ここ決定的に自分に欠けている部分なので、これは鍛え直す良い機会だと思うようにします。
マイナスの中にもプラスを生み出さないと意味がないし。
書店員時代もそうでした。私は優しさやユーモアはあるかもしれないけれど、厳しさや判断力に
欠けている事は十分自覚していて、そういう部分はパートさんたちがずば抜けて長けていたので、
ロス防止なんか私全然ダメなのに(と一応本屋を営むものがこんなん暴露したらますます店主失格
ですね)優秀な人たちにいかにカバーされて自分が生かされていたか、そんな事をふと思い出しました。

でも楽しかったんですよね、すごく。ひとつのお店を頑張って動かしていこうって、みんな同じ方向は
向けていた。あの時に学べていた事を今ちゃんと生かすべきなのに.。
一人でいると自分に厳しくなれなかったら命取りなのに。
楽しい部分だけを追いかけていたようなところがあったのかもしれない。
そんな私にカツを入れるべく、この出来事は降ってきたのかもしれません。
店内の皆様には大変申し訳なかったですけど。
でもその後すぐ和やかなムードになるのにさほど時間がかからず、イラストレーターの方が多いのか
絵を嗜んでらっしゃる方が多いからなのか、ちょっとお洒落なフォスフォレッセンス、というかんじを
私も楽しみました。おそらく作家さんのお人柄にもよるところだと思いますけど。
来店頂いた方々、ありがとうございました。

お店をすると色んな事がある。うちは今までなさすぎた方だと思う。
平和ボケしていられるに越したことはないかもしれないけど、お客さんを巻き込むのは絶対
避けなければならない。もっとしっかりしなければ。
またお客さんに救われた。この日記は翌日の4日書いているのですが、
窓辺を見て色々な表情をしてくれる子供たち、
ここに来て下さるお客さんたち、笑顔を見せてくださるだけで、話しかけてくださるだけで、
どれだけ救われたか。
どんな事があってもやはり私の居場所はここだ、と確信できる瞬間でもあった。

そして話戻ってその後、昨晩遅く、実はもっとディープな展開になりました。
詳しくはまだ書きませんが、お店の前にパトカーが来ました。
図書館で訴訟についての本を借りてきました。フワフワ四十路文学少女の私に
世間についてもっと勉強せよ!と神の声がします。書店でも、図書館でも、
分類300番台棚なんて今まで見向きもせずスルー、だった私がこの歳で少し法律の勉強?
でもなんだかワクワクします(笑)
本当は白石一文の新刊が読みたくてウズウズしているのですが、後回しにします。

でもさすがに凹んだ気分の閉店後の後片付けの時、奥のテーブルに棚の後ろに貼っていた
斜陽館の入場券のチケットが外れているのに気がつきました。
つけ直そうとそのチケットを手にとると、その裏に
「1999/8.18 RR君と2人で・・・ 一生の思い出」と私の丸い文字を発見しました。
RR君というのは今の夫の事です。ああ、これは初心に戻れということなのだな、と
しみじみその文字を見つめていました。
大丈夫、きっと応援してくれている。心強い。
そして私は元気です。またお店でお会いしましょう。




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