2010年10月31日 日曜日
朗読会延期は残念でしたけど、中村さんと連携で話し合いが出来て、
前日のうちに告知する事が出来たので、ベストは尽くせたかな、と思っていたのですが、
当日の同時刻での台風の展開は思ったほどではなかったですね。
でもこういう事も起こる。大変勉強になりました。
なにより中村さんが前日から色々と行動してくださったので、こちらはかなり助かり感謝です。
12月18日の詳細については近いうちにお知らせいたしますので、お待ち下さい。
どの作品に決まろうと、とにかく出席したい!という方はお早めにお知らせ下さい。
参加予定だったほとんどの方が、延期の日に参加表明をされているので、
どちらにせよ募集人数は若干名となりますのでよろしくお願いします。

台風が来なければ行われる筈だった朗読会予定の時間に、中村さん宛てに花束が届いたのです。

中村さんの朗読を以前にお聴きになった方からでした。
こんなに素敵な贈り物をくださったのに、開催されなかったのはやはり残念でしたね。

雨風の中、届けてくださった吉祥寺のお花屋さんの男性がとても明るい方で、
センチになっていた私の気分もパッと華やぐ事が出来ました。
窓一枚隔てれば外は台風という状況の中、花束が一層輝いて見えました。

さっそく中村さんに連絡すると、本日、娘さんと一緒に来店され、無事に花束をお渡しする事が出来ました。
娘さんの「トモダチコレクション」に私が登録されているという事で見るのを楽しみにしていた
その画像を見ることも出来ました。白いスカートに赤いカーデ姿で、本人よりキュートなかんじで
嬉しかったです。着せ替えとかも出来るんですよね、最近の子供たちの遊びは進んでますねー

進んでいるのは子供たちのものだけではないようで、最近お客さんから
ときメモに夢中になってる、とそのバーチャル彼氏の画像を見せてもらった事もあります。
私がそういうものを持ったとしたらどっぷりとハマりそうなので、最初から手を出さないようにしています。
気分を良くするアイテムなら、どんなものでもOKですよね。
更新しながらこうしてアップした花束を見てるだけでも、1テンション上がる事が出来る。
今はそれで十分かなー


2010年10月27日 水曜日
おかげさまで冷蔵庫の入れ替え、無事完了いたしました。
いやー、もうまいりましたね。いかに冷蔵庫は店の心臓部なんだという事を思い知らされました。
冷蔵庫うつになるかという時に、かなりお客さんに助けられまして、本当に感謝です。

リサイクルショップにあっためぼしい冷蔵庫を購入しに出かけた時に既に売り切れで開店から
絶望の淵に落ちていた日は、早々にお話が面白いお客さんが来店してくださって、
家族でパヒュームのコンサートに行く話とか、新大久保のコーヒープリンス2号店に行った時の話とか
過去に3姉妹全員揃ってとあるクイズプレイヤーの大ファンだった話なんかを面白おかしくお聞きし、
何度も笑い転げるうちにすっかり冷蔵庫うつも吹き飛びました。
次回来店いただけた時はパヒュームライブレポ話が聞けるかと楽しみにしております。
私も行きたかったんですよねー、東京ドーム。
実はあーちゃんの大ファンなんですよ。

そんなこんなで結果、6000円台で中古の冷蔵庫を購入。ネットで見つけました。
お休みの水曜日に入れ替えを行いました。
この日は休みが一日潰れようと、冷蔵庫に捧げる覚悟でいたのですが、
冷蔵庫うつを吹き飛ばすために1時間だけひとりカラオケをしてから頭を切り替える事に。
先日SONGSで懐かしい歌声を聴かせてくれた八神純子ヒットメドレーを中心に、今日はなつメロ縛りでいこうと。
ちょっとその日のカラオケナンバーレポを。

・想い出のスクリーン
八神さんの曲で一番好き。小学校6年の時に好きな男子がこの曲を教室で口笛吹いていたり、
男子なのに原田真二のピンナップ(死語?)を下敷きに入れていたのを発見して
私たちって深いところで繋がっている!って妄想してすごく嬉しかった思い出がある(笑)
こんな経験があるから綿矢りさ最新作「勝手にふるえてろ」を面白く読みました。

・パープルタウン
中学2年の時の何かの催しでこの曲の替え歌の作詞を担当しました。
2年8組だったので「パープルタウン」のところを「Fight two eight」に変えて。

・ミスターブルー
クラスの女子が、この歌詞の「あなたの大きさって何の事だと思う?」という議論を持ち出し、
数人で延々と話し合った記憶があります。中学生って耳年増というか、そういう話大好きな時期ですよね

・ポーラースター
ラストの「は〜」を半音づつ上げていくところ、さすがに苦しくてクリヤしたとは言い難い。
「夜間飛行」を歌いたかったけど、アルバム曲なのでリストになし。残念・・・

・You don't give up 
高音の曲を歌ったら朋ちゃんを高らかに歌いたくなったので。朋ちゃん色々あるけどFight!

・恋しさと せつなさと 心強さと
朋ちゃん歌ったら、この曲のPVで小室氏がピアノの鍵盤を叩く綺麗な指が見たくなったので。

・異邦人
八神純子を歌ったらこの曲も歌いたくなった。アルバム「夢がたり」は名盤。中古屋で探してみよう。

・ブルー
ときたらやっぱり渡辺真知子のこの名曲も。子供の時はよくわからずに歌ってたけど、
大人になった今、痛いほどわかるこの歌詞の気持ち。情感込め度はここがピーク。

・恋の予感
ワインレッド歌おうと思ったら近くの部屋から「消えそうにー」って聴こえてきたからかぶっては失礼と思いこちらを。
この曲中であと残り時間10分の連絡が。

・傷つけた人々へ
ただ今第28次?くらいの尾崎豊ブームが自分の中に来ているので今日どうしても歌いたかった。
ルックスといい声といい強烈な個性といい・・もしかしたら100年に1人くらいの人かも、と最近本気で思う。

・熱
あと2、3分しかない、って時の私の定番。aikoの熱。短いけどええ曲や〜

こんなかんじのラインナップでした。って何の報告だよ(笑)


そしてスッキリしたところで入れ替え式本番に臨む。店へ。頭に巻いたターバンは鉢巻の代わり。気合十分。
いそいそ準備していると、約束の時間よりも2時間も早く業者さんが来店し、
「これから2時間でこの周辺を片付けようと思ってたのですが」と説明すると、
「自分が前の作業が早く終わりすぎたので来ただけですから、自分手伝いますよ」と
めっためたに散らかっている周辺を、手ばやく処理されていく。
予定外の展開で、こんなところ見られて恥ずかしい反面、かなり助かったのは事実。
少々ぶっきらぼうでも丁寧に迅速に仕事してくださった。感謝。

負け犬でおなじみの酒井さんエッセイに「台車系に萌え」というのがあって、台車をひょいひょいって
操る人たちにグッとくる人たちの気持ちは私もおおいにわかるのですが、
今回はこのくらいのサイズなら台車無用、ってかんじで冷蔵庫をかるーく持ち上げてらっしゃいました。
まさに軍手萌えです。

業者さんとのやりとりは終わり、夫も帰宅したようなので、何かあったら彼に頼めばいい、と少々気が楽に。
あとは配置の微調整や再設定、って時にいくつか壁があったのですが、
そこからは「ドライバー持って来るわ」とちょっとクルクルっとドライバー回してくれただけで
解決してくれた夫に萌えました(笑)私1人ではどうにもならなかったです。

ということで、来店時やメールでアドバイスくださった方々含め、ご心配をおかけしましたが
なんとか入れ替え式を終了する事ができ、今現在もスムーズに動いております。
色々とありがとうございました。電化製品が次々に壊れていくのは、これでストップだと
祈るばかりです。予期せぬ出費を取り戻すべく頑張らなければ。


2010年10月24日 日曜日
トップページでお知らせしたとおり、突然冷蔵庫が壊れてしまいまして、
アタフタしております。ついこの間もミルが壊れて買い替えたところです。
お店も9年目を迎え、すっかりいろいろなものの寿命がきているようです。
あのボンボン時計さえも、最近止まる間隔が狭まってきた。
今のうちに心して1音1音をこの耳に刻んでおかなければいけないな・・・
いやいや、もうちょっと頑張ってもらわないと。
せめて10周年を迎えるその日の音色を、この小さなお店で高らかに響かせてほしいと心から願います。

万超えは当たり前の古時計の並ぶなか
「これはそろそろ壊れるかもしれないから安くしている」という、
ひとつだけ5000円で売られていたこの時計が、一番長く動いてくれているのだから、
予想というものはいい方向に裏切られる場合があり、この時ほど嬉しいものはない。
縁や直感、人々に愛されて寿命が延びる事もあるのだという事を、教えてもらった気がする。
私もまだまだ元気で頑張らなくては。

壊れてわかる事もある。
今新しい冷蔵庫を買う事はとってもイタイので、なんとか自力で直す方法はないかと
ネットで調べまくっていたのですが、あるいは修理が安く出来る方法なども見てみたけれど、
とにかく時間がない。早急になんとかしなくては。冷蔵庫が壊れるとカフェは何も出来ない。
ダテにお店の中心に鎮座してないな、と感心している場合でもなく・・・
結局中古で購入する事に決めました。

両サイドを掌で当ててみて温かくなければもうダメ、と検索で調べた結果に出てきて触ってみると、冷たい。
冷蔵庫のサイドの表面って温かかったっけ?という、すぐそばにあるぬくもりに
長年手を当てていない事にちょっと驚いた。

それを確かめるためだけに一旦家に帰ってさっそく冷蔵庫のサイドの壁に手を当ててみた。あったかい。
しばらくそのままじっとしていた。
壊れなければ、もしかしたら一生、冷蔵庫というものは冷たいもの、と思い込んだままでいたかもしれない。

花嫁失格ですな、こんな常識を忘れていたとは。ま、花嫁ってトシでもないですけど(笑)
中はこんなに冷たいのに、外は温かい。ああ、そんな歌がありました。深海冷蔵庫。
冷蔵庫の灯りでパーティ、なんて歌もありました。

そしてまた店に戻ろうとして歩いていると、暗い地面に照り返すほどの煌々とした満月。
かけらをばら撒くみたいに光ってる。
あったまった掌を天にかざすと、また指先からいっきに冷たくなるくらいの月の感触。
なんだか詩が生まれそうな瞬間。やはり秋ですね。

しかし店に帰った途端、いっきに現実が押し寄せる。
そうです、なんとかしなくてはいけませぬ。
今の冷蔵庫を回収して新しい冷蔵庫を設置する段取りや費用の事を考えると、眩暈がしそう・・・
でもいつもどおり、こうなったらイベント感覚で前向きにやるしかないですね。
冷蔵庫交換式のはじまりはじまり〜って。

冷蔵庫の周辺は店の心臓部といっても過言じゃないので、入れ替えにあたって
電源を止めなくてはいけない時間が出来るかもしれません。
一時的に電話やメールが見れない事になる場合は、事前に予告いたしますし、長くとも1日で復活すると思います。
復帰まで喫茶メニューもホットドリンクのみ、と色々とご迷惑・ご心配をおかけしますが、
どうぞよろしくお願いいたします。

でも壊れた日が1週間遅かったら、朗読会の日で大変だった事を思うと、少しは空気を読んでくれたようで
長年働いてくれた冷蔵庫に感謝です。
朗読会まであと1週間を切りました。申し込み受付はあと1名様のみで終了という状況ですので、
ご希望の方はお早めにお知らせくださるよう、お願いいたします。
尚・当日は午後5時50分で通常営業は閉店となりますので、よろしくお願いします。

秋の読書会も11月13日(土)18時〜20時です。作品テーマは「皮膚と心」です。
参加希望の方はお知らせ下さいね。イベントページに詳細をアップしました。
特に申し出がなかったので、今回も私が決めました。
実は「正義と微笑」と迷いました。

太宰作品の文庫本はいろんな人が表紙になっていて、生田君とか松ケンや岡田君の有名どころ、
AKBの女性ものなどがあって、どれも評判や売れ行きはいいようですが、
私がタレント表紙もの太宰作品文庫で一番気に入ってるのは、
小柳友さん表紙のSDP文庫「正義と微笑」なんです。だからもっと広めたいなと思って。

え、そんだけの理由でテーマ決めんの?と驚かれそうですが、
うーんうーん、何にしようか・・・と決めるよりも、ふと頭の中に浮かんで、というラフな思い付きから
選ぶ事が多いんです。一応なるべく季節に沿った、&メジャーどころから選ぶようにはしているのですが。
でもま、秋ですし、久しぶりに女言葉の太宰節をたくさん頭の中に吸い込みたい気がしたので、
「皮膚と心」に決めました。
あとはイベントお知らせページにも書いたように蒼井優ちゃんの愛読書、ってことで閃きました。

さっきさんざん月の輝きについてありふれた気持ちを綴りましたが、
「皮膚と心」にある「お月さまの拡大写真を見て、吐きそうになったことがあります。」
という一行には参ります。おそれいりまめです。
凡人と芸術家の間には地面と月ほどの距離があるな、とつくづく超えられない壁を感じさせられます。

本当は今回の更新でもっと書きたい事がいろいろあったのです。
「日々の呟き」の話とか。つくづく観る事が出来て良かったと思います。
ただ今は頭の中で冷蔵庫でいっぱいで、
事前にやるべき事も多々あるので、また後日に書かせていただきますね。

今週は色々あった・・・また新しい1週間だ。まずは新しい冷蔵庫が来る。きっと来る。
ってまだ買ってもいない。調査&物色中です。でも時間がない。色々とうまくいきますように。

そんな、冷蔵庫の事に頭のスイッチを切り替えた時に、黒田三郎の詩集が数冊入荷する。
冷蔵庫を忘れてしばし読み耽ってしまう・・・こんな秋の夜に、言葉のごちそう、私は幸福者。
例え冷蔵庫壊れて途方に暮れていたとしても。

詩を読んだから、ちょっとセンチメンタルになったのかもしれない。
でもまずは冷蔵庫、冷蔵庫。3,4がなくて5に冷蔵庫。
外側冷たくて中はあたたかい冷蔵庫ってこの世にあるのかな?
そんな事考えるヒマあるのなら、少しでも情報収集に時間を使え、ということで、今日はこのへんで。


2010年10月9日(土曜日)
雑誌ananの10/6号の村上春樹の連載エッセイ「村上ラヂオ」を読んだ方はいらっしゃいますか?
タイトルが「太宰治は好きですか?」となっていて驚きました。

村上春樹が太宰治についてどう思っているのかというと、どちらかというと苦手な方、という認識でした。
一体何を見て?あるいは読んで?と問われるとソースの記憶はないのですが・・・
だから私の知るところにおいては、村上春樹が太宰治について言及した媒体は、今回が初めて、
という事にになりますね。

興味のある方は是非読んでいただきたいのですが、要約すると、
長い間、太宰は苦手だったけど、最近朗読された太宰作品をipodにダウンロードして、
旅行先の車中なんかでちょくちょく聴いている。
太宰の文章は肌があうとは言いがたいが、なぜか朗読だと鷹揚に受け入れる事ができる、
そんな内容でした。あと、三島が「太宰さんの文学はきらいです」と直接言った事にも触れています。

一番クスッと笑ってしまったのは、お約束の「やれやれ」が登場しているところ。
さすが太宰、村上春樹に「やれやれ」とため息をちゃんとつかせている。
私はたまらなく嬉しくなってしまったのでした。

さて、気になるのは、誰の声の朗読で、何の作品なのでしょうか?
「村上先生に質問」とかいう本がありましたね、是非聞いてみたいものです。

しかし呼ぶものですね〜、
私、個人的にananは大好きな雑誌ですが、さすがに40代になってからは、
毎週愛読するほどではなくなり、好きな特集号のみ図書館でバックナンバーを借りるくらいで、
あとはコンビニなんかで温め待ちの間に後ろの占いのみチェックするくらいだったんです。

ところが、なぜか今週号は後じゃなくて、前からパラパラめくってみたんです。なんとなく。
そしたら「太宰治」の文字が目に飛び込んできた、というわけですよ。
霊感が働いたのですね。

ということで読書の秋、朗読の秋、耳で聴く、五感で聴く太宰治、
ときにはジーンときたり、ときには「やれやれ」とため息をつきながら、味わってみませんか?

中村雅子さんの10月30日の朗読会は引き続き、18時の回のみ参加者申し込み受付中です。
詳しくはイベントページをご覧下さい。

30日の前に来週、16日(土)には大宮となみ丸さんで朗読会をされますよ。


「となみ丸で太宰を読む  その2」

2010年 10月16日(土)

  昼の部  12時スタート   2000円 (昼食つき)

  夜の部  18時スタート   3500円 (夕食と地酒一杯)

青森郷土料理の店「となみ丸」にて

さいたま市大宮区宮町 3−7(大宮駅 東口 7分 東光寺となり)

電話 「となみ丸」さん 048−795−9273(要予約)

演目  「黄金風景」 「Sさんの接待(津軽より抜粋)」

参加したい方は、問い合わせてみて下さいね。
もう満席になってしまっていたらすみません。

こちらで先日お知らせしていた土田さんの朗読会は、
土田さんの一身上の都合により、中止となりました。
また時期を見て実現する事を望んでおりますので、その時は報告させていただきます。
参加を検討していただいた方がいらっしゃいましたら、申し訳ございません。
またの機会に是非よろしくお願いいたします。


朗読といえば、今宵のProject BUNGAKU太宰治のアフタートークゲストは原きよさんですね。
元々参加を希望していた人に加え、
村上春樹のエッセイを読んで太宰作品を朗読から入る事に興味を持ち始め、
今日この時間をきっかけにして朗読にハマっていく人、そんな人ももしかしたら会場にいるかもしれませんね。
太宰朗読ナイト、実にタイムリーだと思いますよ。

この企画、面白いな〜、と思っていたのですが、
来店いただいたお客さんからチラホラと感想をお聞きすると、内容も充実しているようです。

中村さんが来店された時、ブログにも書かれていますが、小野才八郎さんがゲストだった時に行かれたようで、
その興奮が伝わってくるかのように、どんな事を話されたのか、
まざまざと様子が浮かぶような津軽弁で話してくださりました。
小野さんは太宰の直弟子さんで、ゲストの中でも太宰と直接話した唯一の人物だったんじゃないかな?
予定時間を少し過ぎるほどの白熱トークだったようですよ。

昨日来店いただいたお客さんは、ゲスト蒼井そらさんの回に行かれたようで、
やはりというか、若い男性のお客さんが多かったそうですが、楽しいトークだったようです。
蒼井さんがゲストなのは何故?もしや太宰の愛読者?という疑問が普通浮かぶと思うのですが、
ご本人は全く太宰作品を読んだ事がないそうです。
主催者側の方は、そういう真っ白な方もゲストに、という狙いでオファーされたようです。
太宰の事は、「説教したくなるけど、ハマってしまうかもしれない・・・」と語られていたそうですよ。

しかし4つの太宰作品の演劇を毎回行い、違うゲストを呼んでのアフタートーク、
生誕百年が終わった今年、こんな面白い事をやってくれる人たちがいるというのは、
なんだかワクワクしてくるような嬉しさがありますね。

ゲストの顔ぶれもとても興味深い、話を聴いてみたい人たちばかり、よく実現したな、とも思いますし、
小野才八郎さんのような、深く太宰を敬愛していないとなかなか思いつかないような人選も。
貴重な機会をつくられた事に、感謝したいですね。

そう、生誕百年は終わったのではなく、はじまりだった?種まきだった?
と思うくらい、今年も太宰治の世界はじんわりと、種子が花に、花が樹に、と広がっていってるのを感じます。
あくまでじんわり、なのですが。

朗読、というカタチで取り入れるとすんなり入ってきた、という発見もあれば、
映像で見ると心に残って離れない、という見方もある。
最近の太宰作品がTV番組で映像化されたものをいくつか鑑賞する事が出来た。
「葉桜と魔笛」「走れメロス」「犯人」
どれも素晴らしかった。「葉桜と魔笛」はラスト、涙が溢れた。
また機会あるごとに詳しい感想なども書いていきたいと思います。

太宰作品って、いろんな可能性を秘めているけど、実に料理しやすいのも特徴だと思う。
だから朗読は勿論、映像、演劇の題材にも多く使われる。
未来の作家だよな〜、ってつくづく思いますね。

そんなたくさんの刺激を受け取りつつ、うちの店からも発信していきたいです。
秋の読書会の日程は11月13日(土)18時〜20時に決まりました。
作品テーマは「皮膚と心」です。
詳細は、次回更新時にアップします。参加申し込み受付はもう開始しますので、
是非ご連絡下さいね。あるいは直接、お申し付け下さい。
どうぞよろしくお願いします。

3連休のスタートですが、大雨でヒマです・・・
明日、明後日も開店していますので、どうぞご来店下さいね。



2010年10月1日 金曜日
10月になりました。神無月です。出番です。

あの熱帯夜が嘘のように、このところ寝やすいですね。
秋の虫の音に包まれて眠るこの季節、歳をとるごとに好きになっていく。
あっという間に冬になってしまうのだろうから、この短く過ごしやすい時期を
じっくり味わいたい。

奈良での余韻もなかなか冷めやらない。
いろんな「微笑」が浮かんでくる。
仏像の微笑、出会った人々の微笑、
前回の日記の最後に写っている鹿だって、微笑を浮かべて眠っているように見えるし。
自分自身も微笑を絶やさずにずっといられたら、どんなにいいでしょう。

土門拳の写真展を観た事で、奈良にハマッた経験がある、というお客さんは
私に室生寺を推薦してくださった。
違うお客さんにも、室生寺とか当麻寺が、似合いそうですよ、と言ってくださった。

自分に似合う寺?そんな例えは生まれてこのかた一度も言われた事がない。初体験。
明日にでも行ってみたいけれど、そっと心に秘めて、静かに育てていきましょう。
折口信夫の「死者の書」も読まねば。
山寺ならば、足腰も鍛えておかなくては。

でもいい事ばかり、というのはやはり、甘い。
二月堂でひいたおみくじの辛口ぶりには驚いた。


「凶」を引いたのも久しぶりだったのですが、
「のぞみかなひがたく腹心の下人あるひは友だちも心がはりするくらいの不仕合にてあしき事度かさなる運なり
○喜び事なし○待人きたらず○訴訟中途にさはりできて叶はず○失物出がたし○あらそひ事負になるべし
○売買ともに大いなる損あり○生死十に八九は死すべし

と、悪いことしか書いてない(笑)
ここまですごい、というか容赦ない、というか、実はこれツンデレみくじで最後の最後に
「しかし努力すれば道また開けし」とかあるかな?と期待してみたのも束の間、最後の最後が一番こわひ!
ドッキリ?と言いたくなる様な・・・

迷いましたが、こういうのは受け止めつつ、笑い飛ばしてしまうのがよろし、とアップ。
ひとりで抱えててもなんだかちょっと凹んじゃうので。

私に一番足りない、なにくそ、今に見とれ!精神、それを目覚めさせるための天からの手紙、
と受け取り、今後1年お店が順調に滞りなく過ごし、「おみくじ、ふっ飛ばしましたね」と
皆さんに思ってもらうために頑張ります。

決して悪ふざけではありませんので、どうかご不快になられませんように。。。
さすが一筋縄ではいかない。やさしさと柔らかさをふんだんに頂いたと思ったら、
容赦ない一撃!おそるべし奈良の底力。

今回、おみくじをここだけでひこうと思ったら、この結果だったので、
春日大社の平城遷都1300年verの鹿みくじも買ってしまいました。


今しか手に入らない、という言葉には弱いですね。普通verも可愛いくて好きですが、今回は限定ものを。
白い鹿は神様の遣いだとも言いますからね。
こちらは小吉でした。


三鷹にお住まいだった頃にとてもお世話になっていたお客さんが、
編物展を開かれています。

      
三鷹市役所前にある喫茶「山茶花」さんにて。     こちらの本には森さんの紹介と、森さんデザインのセーターを
喫茶の営業はなし、店内で展示のみ開催。      俳優の宮川一朗太さんが着用されているページがあります。
                                (日本ヴォーグ社発行 素晴らしき編物野郎)表紙は天宮良さん!

私も本日開店前に行ってきました。編物好きな人は是非、お立ち寄り下さい。10月2日(土)の17時までです。あと1日・・
男性が編むセーターというのもカッチリしていて、素敵だと思います。
ちなみに私はアクリル(かな?)たわしを買いました。

お気づきの方も多いと思うのですが、この夏、うちのお店の前の三鷹通りを隔てたところに、
新しくリサイクルショップが出来たのです。
リサイクルショップ好きの方は、当店来店前後に立ち寄ってみて下さいね。
なんだかこのあたりも新しいお店が増えてきて嬉しく思います。

もうひとつイベントのお知らせを。

お店で扱っている、太宰治ポストカードを作成いただいている消しゴムはんこ作家
史緒さんがスタンプイベントに参加されます。
実際に消しゴムはんこを見れるチャンス!?詳しくは史緒さんのサイト http://web.mac.com/fumifumu/ 
までどうぞ。

秋晴れの気持ちいい週末になりそうです。本とコーヒーのゆったりとした時間を
過ごすには最適な季節です。
いろんな寄り道を楽しみつつ、うちにも是非お立ち寄り下さいね。
お待ちしております。


2010年9月27日 月曜日
すゐえんの あまつをとめが ころもでの 
ひまにもすめる あきのそらかな
会津八一 南京唱和より


夕暮れの奈良・薬師寺


自分でも結構思い切ったと思う。
毎年どんな状況でも、相変わらずのギリギリの節約生活ぶりを披露しているという日々でも、
年に一度のひとり旅だけはオープン以来欠かしていない。
その時間がないと、あとの360日が頑張れないから、と毎年書いている気がするけれど、
今年も例年になくお決まりの言葉を書かせていただく。

でも水曜日の連休にひっつけて休みをとるのが通常だったので、
3連休にぶっつけたのは自分でも冒険だと思う。
しかも青春18切符が使えない時期の旅というのは、おそらく初じゃないかな、と。
相変わらず直感で行動するところだけは、いくつになっても変わらないみたいです。

結果、今回の旅は今思い出しても胸がじんわりと熱くなるほど良かった。
近年の旅報告では、階段を駆け上がった瞬間に列車のドアが閉まって
その後2時間くらい時間を潰さなくてはいけなくなったとか、つくづくトシを感じましたとか、
失敗談も多くありましたが、今回はすべて順調に事が運び、具合が悪くなる事も一度もなく、
実に快適に過ごしました。ただめちゃくちゃ暑かったけど・・・
クーラーよけのストールとか一回も使わなかったし。

行き先は平城遷都1300年の都、奈良大和路。
目的は薬師寺での安全地帯の野外ライブ、せんとくん、鹿・・・
己の掃除。仏像を見つめて心を洗いたいという想い。
そしてはるか昔懐かしい、塔への憧れ。

さて、問題は青春18切符のシーズンではないということです。
新幹線往復なんて費用を捻出できるわけがあーりません。
そこで久々に往復夜行バス、という「トライ」に挑戦する事にしたのです。

色々調べた結果、VIPライナーの女性専用のプルメリア号にしました。
バス会社はたくさんありますが、この会社はワンコイン、500円で東京→関西行きを運行して
業界の話題をさらったり、専用ラウンジがあったり、以前から注目はしていたのです。

なにより女性専用車が充実しているし、ルックスやネーミングがいけてる。
サイトを見ていただければわかるのですが、「プルメリア」や「チェリッシュ」
そのうちきっと「女子的夜行バスの旅」なんて雑誌の特集になるのではないかという乙女心ど真ん中なバスなのです。
リボン付の天蓋カーテンがついているホテル並みのアメニティを誇るバスなんて、そうはない筈。

低反発シートも期待どおり、いいかんじでしたし、なによりプライベートカーテンがあるから、
自分だけの世界に浸れるんですよ。これ一番大事!

夜行バス歴は実はかなり長い私。20代の頃は何度も使ったし、その頃は窓にカーテンなんかなくて、
景色見放題だったんですが、それが良かったんです!
非日常な景色を見つめながら、夜のしじまを駆け抜けてゆく感覚が好きで、バスに乗ってました。
特に一番前の左側の席(通称オタ席という、と先日お客さんとバス談義で盛り上がったような記憶が・・・)がお気に入りで、
そこがとれたら寝てるなんてもったいない!と、ずーっと朝までビュンビュン通り過ぎていく景色を見つめ、
考え事をしていた気がします。

でも私が30代になって夜行バスに乗ったら、窓はカーテンでビシッと隙間なく閉じられるようになっていた。
当たり前の事なんですよね、とにかく乗客の方々は寝てしまいたい、というのが総意でしょう。
私は窓の外が見たくて仕方がなかったけど。

だから今回、カーテンはありがたかった。といっても、光漏れしないようにそーっと隙間からしか外を見なかったけど。
それでも、チラチラ見えた外の景色、空、トラックの群れ、それらは旅のはじまりの気分を一層盛り上げてくれました。
時々床がブルーの照明に染まって、ホント竜宮城気分でしたよ。

問題はサービスエリア。ここでウロウロするのも大好きなのですが、というかトイレ行くから必ず降りるのですが、
夜行バスに乗って毎回とまどうのが、サービスエリアから自分のバスに戻る時。


うわわわーーー!バスが多すぎてどのバスに戻ったらいいのかわからんーーー!状態。

しかしこんな時にも安心。

「プルメリア」という目立つ電飾が煌々としているので、大丈夫。
無機質なバスの群れの中でポツン、と咲いた花のようなカワイイ奴。(最初のサービスエリアでかなーり情が移ってます)
たくさんあるバスの中で、必ずあなたを見つけるわ、私、みたいな(夜中で壊れております♪)
しかもドア付近で待ってくれている乗務員さん、寝ぼけててよく覚えてないけど、結構若くてかんじのいいお兄さんでした。
この写真、スポットライトの位置も最高で、床に模様まで出来てるし、なんか舞台装置みたいに映ってるし、
まさに「プルメリアの伝説」ってかんじ。(妄想炸裂ですな・・・)


こんな冊子も発行しているんです。こういうのは好きだから勿論、お持ち帰り。
社長さん(ネコなのか?)は25年前、佐川急便の運転手で、昼夜問わず働き節約を重ね・・・というところから
スタートされているようで、いやー、私はまだまだ頑張りが足りんな、とおおいに刺激を受けたのでありました。
えっと・・・まわしものではありませんので!

しばらく18切符ばかり使っていて、夜行バスにはすっかり縁遠くなっていたのですが、
時間を有効に使おうと思えば、夜行バスが一番なのですよね。宿泊費も浮くし。
事前予約でトイレに近い独立シートを選択できるし、40代の女ひとりバス移動は予想していたよりもずっと快適でした。

名残惜しくバスを降りると、目の前は京都駅でテンション上がる。
今回は京都にはほんのちょっとしか滞在できなかったので、またじっくりと過ごしに来たいですね。
駅の階段を上がると、待ちに待ったせんとくんとの対面に朝からヒートアップ!

                
京都なのにせんとくんに夢中。せんとくんものを見る度に写メっちゃう。  こちらは奈良駅のせんとくん。

嫌いな人もいるかもしれませんが、私はかなり好きです。恋レベルです。
ひとり旅中って、心の恋人を決めてる方が楽しいじゃないですか。
奈良を歩いていると、あちこちにせんとくんが居るから、都内に帰ってきて全く姿を見ないのが
当たり前とはいえとても淋しかったですね。

奈良といえば、鹿ですね。
        
奈良には鹿がよく似合う・・・                   等間隔で佇む鹿たち。かわいい!

鹿せんべえを買ってあげようかと思ったのですが、そんな私の前を「ギャーーー!!」と
女性が逃げまくっている。
人が少なかったせいか、鹿もお腹がすいていたのか、鹿せんべえを手にするや否や
飛びつくように鹿の群れが押し寄せて、逃げまくってはった。
その様子を見た連れの男性の方が助けに行ってたのですが、
「おい!噛むな、おい!」と男の人もあたふたしてたので、ちょっと怖くなってやめときました・・・

そして東大寺、二月堂、春日大社に向かってゆっくりと歩く。

          
二月堂に続く道が、なんともいえずいいかんじ。        「蒼いバラ」という曲が好きなので、蒼いバラ模様のスカートで参戦。
                                     古都のみちを翻し、1300歩は確実に歩いたな

なんとなく身に覚えのある道。
思えば京都時代、よく奈良に来ていた事を思い出す。
20代の頃?恋人ではないけど、気にはなっている、ビミョ〜な関係の男子とデートした事もあるし、
夫と同棲時代に一緒に飛鳥を巡った事もある。
もっと遡れば煮詰まりまくっていた小雨の休日、空いた近鉄特急に飛び乗った日もあった。

広い通りを歩いていて昔の事を思い出した。
美術館か、絵画展に吸い込まれるように入った一昔前の自分。
薬師寺か外国か、オベリスク、塔の絵があって、
「何十日もの間、奴隷のようにただ建物の完成のために働かされる人々、
しかしあの塔の頂にただ憧れて、勇気づけられて、彼らは働き続ける」みたいなかんじの説明文があった。
ハッキリ思い出した。その絵のタイトルも作者も思い出せないけれど、
その時の煮詰まった自分に希望を与える一節となったのだった。

私がなぜか薬師寺に惹かれ、やってきたのも、潜在的な理由があったのかも。
あの頃の気持ちを思い出せ、という事なのかもしれない。
毎日自分がしている事が、そびえる塔の建物に繋がっていけてるのか、
そこに「希望」はあるのか、わからなかった頃。

その舞台が今はこの手の中にある事、煉瓦を積み立て続ければ、必ず
塔の頂きへ行けるのに、なぜもっと天に近づこうとしない?と何かが私に呼びかけるような・・・
鹿がしゃべったのかな?


「鹿男あをによし」で、はじめて鹿がしゃべった飛火野に近い、春日大社の森にいる鹿。
この付近ではなぜかものすごく鹿にモテて、鹿の方から近づいてこられる。
この鹿くんは、私に近づいてきて離れない。何か言いたい事あったのかな?せんべえなくてごめんね。
神無月も近いし、「そろそろ本気出す出番よ」と伝えにきてくれた、と受け取ることにしよう。
実際は「びい」という可愛らしい声を聞かせてくれたまでなのですが。

近くで鹿せんべえを売ってるおばちゃんの口上が笑えた。
「東大寺の鹿は気性荒いけど、ここらの鹿はおとなしいよ。せんべえやるんやったら絶対こっちでやりいよ〜」
あー、関西のおばちゃんやな・・・と思わず笑ってしまったのですが、たしかに事実だ。
たった今この私が見てきたのですから。
でも近づいてきた鹿たちはせんべえが欲しかったのかと思うと、次回はもっと大判振る舞いしよう、と決意。

しかし春日大社付近の森は、歩いていると気持ちが良い。
この前新聞の「おすすめの日本の森」で春日山原始林が第四位になってただけの事はある。
神域林ですからね。

興福寺の国宝館で阿修羅像も見ました。ガラスケースなしですから威力すごかったです。
その空間に入っただけで、そこだけ後光がピカーッ!と差してるから目に入ってくる。
せっかく順番に見たかったのに・・・と思っても時遅し。
やはりセンターに鎮座してるのですよね。

でもあまり歴史や仏像に知識が明るくない私は、男前ぶりと、あのズボン、私の寝巻きに似てるなあ
なんて邪念も浮かびまくり(こんな事書いたらバチ当りそうだ・・・)
でも人ってひとつの顔じゃないよね、と。3つの顔の説明文には感銘を受けました。
唇をきっと結びつつ、前を向いていこうという表情、そうだよね、幸せいっぱい笑顔いっぱいに人に見せても
唇を噛む瞬間だって裏ではいっぱいあるよね、って。

例えば人を好きになって、その人の事あまり知らなくて、
「本当の自分を知ったらきっと嫌いになるよ」なんて言われたり、また自分がそう思う立場になったとしても、
その人の一面を見て好きになったのだから、それもその人の核の一部に触れられた事になるのだから
その気持ちは認めてあげようよ、って思う。
勿論、もう一つの顔を見たら一気に冷めたり、嫌いになるかもしれないけど、
その時に「私の想像していた人じゃなかった」っていうのは違うよな、と。

なんか奈良に行って説教臭くなってたらすみません、一時的なものです。
でも自分よりうんと長い時を過ごしてきた建物、大地、仏様を見つめて、
人間について考える時間を持つというのも、
普段は日々の生活に追われ、なかなかない事だから、いいのではないかと思う。

今回のお宿は、宿代2500円の奈良ウガヤゲストハウス
女性専用のドミトリーに素泊まりしました。
特注のひのきのベッドではグッスリ眠れたし、ロビーの壁には一面の本棚。カフェも併設なので、
コーヒーも飲める、ちょっとブックカフェちっくなところに惹かれて予約したのですが、選んで正解でした。

          
薬局を改造したというロビー、カフェにもなります。        「奈良のお宿の春日さん」さえきまな著 実業之日本社
水道管パイプスピーカーから流れる音楽もグッド!       こちらのゲストハウスを舞台にした、こんな本も発見!


右の画像の本の著者・さえきまなさんとはオーナーさんが四国・遍路の旅で出会い、
宿のヘルパー募集のイラストを書いてもらって宿に貼り出していたものを、宿泊した出版社の方の目にとまって
この本が出来上がるきっかけになったそうです。

出会いに対して前向きなオーラが溢れている空間だと、そんな事が起こるのも不思議ではないような気がします。
小鹿の春日さんが、このお宿にヘルパーとしてやってきた、というストーリーで、春日さんの可愛らしさ、一生懸命な姿に
コロッとやられてしまいました。また、奈良のガイドマップもついていますよ。

旅の最中にこのようなキラッとした本に巡り会える事、奈良の良心に出会える事は、本当に幸運だと思います。
地元の書店で、「奈良発 オレたちシカをなめるなよ!」VS「奈良のお宿の春日さん」コーナーが
出来ていて、あとお宿のトイレにこの本のチラシが貼ってあったから、もしや・・・ここのこと?と気付けたのです。


こちらのゲストハウスのオーナーさんはまだ30代前半の若い男性。
お父様を亡くされて、やりたい事を探そう、とお遍路の旅に出られた。
大分・別府や沖縄なども旅され、ゲストハウスを知り、これまで接点のなかった人との交流が生まれる
空間に魅力を感じ、大学時代過ごした奈良で、自分も同じ空間を作ろうと決めた。
そして2008年にこのゲストハウスをオープンされたということです。
ロビーのテーブルにあった、ゲストハウス紹介記事の下敷きからメモ書きしたものです。
(毎日新聞奈良版 2010 3/17 ならリビング2010 ?/29 ?はすみません、私の字が汚く1か6か5か不明です。)

また、「同じ目線で考える」というタイトルの新聞記事に心をとらわれ、私の奈良路の道案内になってくれました。
そこにはお父様を亡くされた悲しみの最中、「中宮寺」の菩薩半侶加像を目の前にした瞬間、涙が止まらなくなった
という内容が記されていた。その記事を読み、そこに写っている仏様の穏やかな表情を見つけ、
私今回はここいこ。この仏像を見に行こう、と決めたのでした。

本当は金峯山寺の金剛蔵王権現の特別開帳を見学に行こうと計画を立てていたのです。
どうせなら今しか見れないものを、と。
薬師寺ライブを鑑賞後、怒りや不安な気持ちにもしなったとしたら、ここに来て
あの青い鬼のようなお顔に救済を求めようかと。

でも全く反対の気持ちになれたので、穏やかなものが見たくなった。
(不勉強ですみません、鬼のような、とか失礼極まりないと思うのですが、
無知なりに感じたままを素直に書き綴ってております)

こんなふうに気分次第で行き先が変わるのはひとり旅の特権。
こちらのお宿にご縁があったのだから、この下敷きを読んで心動かされた事で
明日の行き先が風のように流れていく、というのは実に心地よかった。


そんなきっかけでやってきた中宮寺。尼寺らしく、どこか女性らしい趣のお寺。楚々とした佇まいで落ち着く。
大勢の人は法隆寺の方向へ歩を進めていくけれど、そちらは今度奈良に来れたら1日がかりで訪れたいと思います。

というか、ここ、以前にも来た場所でした。
あの時、何を願ったのか、すっかり忘れてしまった・・・
二度目のご対面でしたが、アルカイックスマイルというよりは、
とにかくすっぽりとやさしさに包まれるかんじがしました。
こんなやさしさが、奈良にはあったのだ。はるばる来た甲斐があった。

またこれを仕上げた仏師がいたという事にも感銘を受けた。
人間がこういうものを、この微笑をつくったのだ、このようなものを人はつくれるのだという事に呆然とした。

斑鳩の里があまりになつかしいかんじがして、心穏やかで、
中宮寺の近くの林に禅林寺で拾った落ち葉を落としてきました。
ここの空気をどうぞ、と。
京都に住みたかった太宰、奈良だってきっと気に入ったと思うのです。

お宿での時間に戻って
せっかくだからコーヒーをいただき、淹れていただいたスタッフさんとしばらくお話していたのですが、
私が三鷹でブックカフェをしていると言うと、「話聞かせて下さい!」と目を輝かせられたので、
質問に答えたりこちらが質問したり、可愛らしい岐阜ミックス関西弁を聞くのが楽しくて
いろんな仕草交えて小鹿のようで、もっとしゃべってほしい!なんて思いながら過ごしていたのです。

今はコーヒーを焙煎の段階から携わって、お客さんに飲んでいただくまでの過程が面白くて仕方がない、とのこと。
豆の段階から作業して、ほんの少しの事で味が変わってくる、その奥深さはすごい、と言う。
なんか奈良に来てからの出来事が、いちいち今の自分に訴えかけてくることばかり。

私が奈良のブックカフェを訪問したい、と言うと「パビリオンブックス」「古書喫茶ちちろ」の行き方を詳しく調べて
くれて、おかげさまで両店にスムーズに辿り着けました。
またこちらにお世話になる事があれば、彼女の元気な姿に再会したいと思います。いつかきっと・・・

パビリオンブックスは元々世界の絵本のオンライン古書店でした。3年半かけて古民家をリノベーションし、
古書販売と喫茶営業のお店を開店されたようです。
店主さんは、思いつきで奈良から東京まで歩いて旅された事があるそうで、もうそれだけで
ここのお店を好きになってしまうエピソードですね・・・ちなみに3週間ほどかかったそうですが。
naracafe.com にてお店が出来るまでのコラムを発見しました。お店のブログでもきっと読める筈。
上記サイトは他の奈良のカフェやイベント情報なども充実しています。


絵本とコーヒーの店 パビリオンブックス
近鉄奈良駅から近いですが、喧騒をはなれた静かな路地の奥にあって、とってもいいお店でした。
コーヒーもチーズケーキもとても美味しく、丁寧につくられている事が伝わってきます。
なにより店主ご夫妻のお人柄が温かく、お店もゆったりとした雰囲気で居心地良かった。
奈良らしいお店に巡り会えてラッキーでした。

そしてならまち文庫古書喫茶ちちろへ。奈良へ行くことがあれば絶対に立ち寄りたかったお店。
ようやく夢が叶いました。


店主のうだしげきさんは、映画『殯の森』に主演された事もある、というのは結構知られていると思います。

入った瞬間、好きな人にはたまらない空間がそこにある。
ほんの一瞬でここがどういう場所なのかわかってしまう感覚ってありません?
この居心地をうちも目指したいものですね・・・
おそらくそれは店主のうださんの魅力と共通していて、年輪というものも必要とする
私にはまだまだ到達できない世界が広がっていました。

店、というか民家なので、奥には金魚が水槽の中でゆらゆら泳いでいたり、
近所の子供たち?がお店に遊びに来ていたり、非日常なんだけど、あまりにも日常的な、
懐かしい情景だった。

2階は「河瀬直美ギャラリー」で、河瀬さんが着用していた古着?があったり、
映画や奈良に関する色々な資料を閲覧できるスペース、
若い作家さんの手作りものの展示など、ちょっとやそっとの時間では全部見れないような充実ぶりでした。
それでいて部屋のはしっこには普通に洗濯物がぶら下がっている抜け感とか、私はひじょうに気に入りましたね。

うださんとお話できたタイミングの良さに感謝した。
東京で古書喫茶を私もやってます、とご挨拶できたこと、
今回はそれだけで十分でした。
ものすごく親しみやすいお方です。
ここは賃貸なんで、赤字ですよ、と笑いながらおっしゃる。
この余裕、そう、私は今自分に一番欲しいものの答が最後の最後で得られたかんじ。

この仕事を選んでいて、贅沢しようというのはそもそも間違い。
それでもこのかんじ、あの太宰が見た井の頭公園の池の水面の静けさ、気高さ、のようなものに
少しでも近づきたいと思う。もっと真剣にならないといけないな、とそんな結論を持って旅の帰り路を行くのでした。

帰りのバスは奈良から直接帰りたかったので、VIPライナーではなくJRバス。
それまでの時間に余裕があるので、奈良駅に行くまでの最後の行き先、奈良ホテルへ。
奈良の夜は早いので、ホテルまで向かう道が暗くて心細くもなりましたが、
池と興福寺の五重の塔のシルエットが遠くに見えていたから大丈夫でした。
夜は夜で、幻想的で美しい。
「塔が見える。塔が見えるね。」そんな事を自分に言い聞かせながら歩いていくと、無事到着しました。

奈良ホテルは太宰と同い年です。昨年誕生百年を迎えた古都の迎賓館。
正面玄関はさすがのズッシリとした佇まいですよ。
正面じゃない入口にはせんとくんがここにもいましたが。

              
オードリー・ヘップバーンが訪れた時に写真撮影した場所。      100年記念コースターが欲しかったのですが、もうないとのことでした。
アインシュタインが弾いたというピアノも間近で見ましたよ。      でもこの普通バージョンも良いです。絵ハガキなどを書いて過ごした
時もセピア色に染まっていくホテル。一度は宿泊してみたい。     ティーラウンジ(夜はBARになります)

あとは奈良駅に向かって歩くだけ。時間にまだ余裕があれば喫茶「たまき」に寄りたかったのですが、
余裕を見た方がいいから今回はやめておきました。
じっくり見てまわれなかったので、せめて通り過ぎようとならまち経由コースを選んだのですが、
さすが夜は早い奈良。ほとんどのお店が閉まっていて、実にさびしい夜道。
奈良女性ひとり旅を計画している方は、夜歩くコースは十分にリサーチしておく方が良いですよ。

これまた心細くなってきたところへ、目の前に交番登場。
「奈良駅まで行くのはこの道まっすぐで合ってますよね?」と確認すると、
「一番人通りがマシな道」を教えてくれました。感謝。
それでも、「ええ、これでマシ?」ってほど、暗かったので、あのまま進んでいたら、
私このトシで泣いてたかもしれません。そりゃないか(笑)

いいタイミングで交番に出会ったり、何かと守られてる感に感謝しながら、無事に奈良駅に到着。
帰りのバスでは1つめのサービスエリアを過ぎたらすぐに眠れたので、起きたらもうすぐ到着、という
素晴らしく順調な旅となったのでありますが、最後の最後にやらかしてしまいました。

夜行バスをしょちゅう利用していた頃、ひそかに憧れていた事があります。
それは、東京駅ではなく、ひとつ手前の「霞ヶ関」で下車する事。
大抵の人は東京駅で降りるのですが、夜行バスを出張で利用しているような、スーツ姿のリーマンさんが
5,6人そこで降りるのを横で見ながら「今からさっそく仕事なんだ、かっこええなあ」って
憧れの眼差しで見送っていたのでした。

颯爽と仕事に行くリーマンさんに自分も混じってみたい、と今回は「奈良→霞ヶ関」を選択したのですが、
それが悲劇の始まり。
「次は霞ヶ関。お降りの方はベルでお知らせください」とアナウンス。
まあ誰か押すでしょう、とシャイな?自分は待っていました。
すると二度目のアナウンス。「霞ヶ関でお降りの方、いらっしゃいませんか?」
ええ?もしかしてこの広いバスの中で私だけなん??と目覚めたてからパニクりそうになりましたが、
どうやらそのようです。プチッとボタンを押してひとり狭い車内を進み、バスを降りたのですが、
いやー、恥ずかしかった〜。行動遅くてすみませんでした!

運転手さんにお礼を言い、バス亭でしばらくボーッとしてしまった。
無事に都内に帰ってこれた喜びは勿論ありました。
しかし、スーツのリーマンさんなど周りに1人もいない。そりゃそうだ、今日は祝日だった。

こうなったらここから荷物抱えて東京駅まで歩く!断固として歩く!と、トボトボとまだ洗顔&髪といてない状態で
東京駅目指して歩いたのでした。
どんな罰ゲーム?と、そんな自分の状況を笑うのは私のいつものクセ。

でも収穫もありました。
颯爽と歩くリーマンさんの姿は見られなかったけど、東京駅へ向かう私の水先案内人は、夜行バスの群れ。
何台も何台も、長い距離を乗客を乗せて走ってきた夜行バスたちが、もうすぐ無事に到着できる、と
東京駅へ向かっていくその姿は、朝日に照らされてすごく眩しく見えた。

誰も居ない晴海通りで「夜行バス、かっこいい!」って大声出したら気持ちよかった。
「おつかれさまー!」と声もかけた。
そんなことはまずないのだけど、バスからそちらもお疲れさん、気をつけて〜!って手を振られてるような気がして、
東京駅まで歩く気満々になったのでした。

といっても夜行バスに乗ってたら霞ヶ関・東京間はあっという間だけど、歩いたら随分かかる。
途中でペニンシュラが目の前に聳え立っていたので、贅沢に旅のシメはホテルの朝食でも・・と思ってみたら!
朝食2800円〜、ですって。無理無理。とひらすら歩を進めたのでした。

東京駅は大好きなので、ロッカーに荷物を入れて、結構長い時間ウロウロしてました。
荷物を抱えてキョロキョロしていた女の子と目が合うと、明らかな東北のイントネーションで
「丸の内線はどこかわかりますか?」と質問された。
今までなんでも質問する側だったから、ものすごくはりきって説明したりして。
出発する人、帰りゆく人、移動する人が流れていく東京駅に居ると、いろんな事を思い出すのです。

丸善など大手書店をざっと見学して、三鷹へ。
今回はバスを使った事と祝日をはさんだ事もあってか、一度も混んだ電車に乗らなかった。
三鷹へ向かう中央線車内も、もう午後だというのにずっと空いていた。良かった。

今度はもっと奈良の事を学んでから旅しようという思いでいっぱいです。
出会った人たちに感謝の気持ちを込めて、旅日記を終わらせていただきます。
久々の超長文日記にお付き合いいただき、ありがとうございました。
奈良で得たやさしさ、柔らかさをお店に還元できたら良いな、と思っています。
是非皆様のご来店を心よりお待ちしております。


ここからは薬師寺での安全地帯のライブのレポ的な日記になりますので、別枠にさせていただきますね。

今、玉置さんについて語るのはひじょうに複雑。
プライベートでワイドショーを賑わせようと、歌で黙らせればそれで良し、という考えでいたのですが、
その歌もグラついてしまったニュースが流れ、正直不安でした。
その日のライブを楽しみにしていた人の事を思うとひじょうに残念な気持ちと、
膵炎という重い病気をされていた事もあり、完治されているのかどうかは謎。
それでも歌うためにステロイドとかお薬の副作用とかで
バランスを崩されてるのではないかとか、周囲がもっとコントロール出来た事はなかったのか・・・
とかいろいろな気持ちが交差する。

どっちみちいくら考えてもライブを実際に見ていない自分には答は出ない事。
少数だけど、例のライブすごく楽しめた、というレポなども発見したし。
それならもう見に行くしかないよな、という結論に。
どこか生き急いでいるような気がしないでもないし・・・とにかく見ておかなくては、という衝動に駆られました。

なぜ薬師寺なのかというと、私も今持病があるので、閉鎖的な空間じゃない野外が理想的である事、
「あの頃へ」という曲が好きな自分には、何か直感的にこれへ行かねばならない、という気がして迷いなく決めたのでした。

当日は奈良の観光協会みたいな建物で宿の道順などを聞くついでに薬師寺への交通手段を質問
したりすると、「もしかして玉置浩二?」と逆に質問されたり、
おみやげ屋さんと世間話しても、「うそっ?東京から玉置浩二見にきはったん?」とか、
その度に「安全地帯です」と返すのですが、やはり今玉置さんが世間を賑わしている実感がありありと沸いてくるのでした。

当日はチケットを持っていると薬師寺拝観も出来るということで、時間差が大幅に起こるせいか、
近鉄電車内も心配していたような混雑はなくて、ゆうゆうに座れました。
車窓景色がまたいいんですよ〜。ドラマの見過ぎ?と言われそうですが、鹿男よろしく
一匹こちらを見つめているはぐれ鹿はいまいか?と注意していましたが、現れませんでした。
小川先生みたいな人、いないかな?と車内を見回してみましたが、いませんでした(当たり前)

ananの今年後半の占いによると、牡牛座はちょうど旅の期間中に良き出会いがあると書いてあったな、
なんて事をふと思い出して、マイ鹿!ってくらいビビッとくる鹿との出会いがありそうでドキドキしていたのです。
せんとくんはみんなの人気者ですからね、遠くで見つめて応援してるだけなのですが・・・
などまた考えてもなんの意味もない事をえんえんとループしているうちに西の京駅到着。

バスで行くことも考えてはいたのです。
過去に奈良駅から1時間くらいかけて法隆寺にバスで行った時、
薬師寺の東塔が見えた時のあの感動を忘れていないからです。

バスだと、その端麗な姿が迫ってくるのをジワジワと味わえるから。
日本で一番美しい塔ですからね。1300年の時を越え、雨風嵐、地震に耐え、
白鴎時代からそこに在り続けている。
その東塔が、もうすぐ工事の為解体される。今回が確実に見納めである。
時間の許す限り、見つめていたくなる。

でも交通渋滞など起こりえる事を考慮し、やはり近鉄電車にした。
後で知った事ですが、ライブ中は踏み切りの音を小さくしたり消してくれたりするらしい。
全面強力しているのですね。そこに感動した事もあり、今回は西ノ京駅に降り立てた事に感謝した。

薬師寺までの参道は細く小さいけど、紫色の萩の花が咲き乱れ、とてもいい香りがした。
そこに立った瞬間、「あ、今日はきっとすべてうまくいく」そんな心境に不思議となれたのでした。

「木々の若葉や麦畑はどこにでもみられるかもしれない。
しかしその一木一草には、古の奈良の都の余香がしみわたっている。
人間が長きにわたって思いをこめた風景には香いがあるのだろう。
塔と伽藍からたち昇る千二百年の幽気が、この辺りのすべてに漂っているように思えた。」
大和古寺風物誌 亀井勝一郎著 新潮文庫 (当店でただ今350円で販売中)「薬師寺」の章より抜粋

この「余香」というものを、薬師寺で思う存分味わえた気がする。
西ノ京駅を降りたらもうそこから匂いが違う、ムードが違う。
今から竜宮城へ行ってくるような気分になる。

薬師寺についての書物を読むと、音楽的だと讃えてるものが多い。
かつて訪れたフェノロサが「凍れる音楽」と表現したのは有名どころ。
東塔の先、九輪の突端には水煙があり、そこに配されている飛行奏楽する天女が好きだ。
何気なく見ていた塔の先に、これほどまで心惹かれる理由が、その秘密を知った時にわかった気がした。
人には見えないところに秘められた美しさが好きだから。


人々の祈りも、その塔の先から天へと届いていくのだろうか・・・


薬師寺で現代人が音楽コンサートをするのは、当然の流れのように私は感じる。
でも次回は催しのないごく普通の日に訪れてみたい。
天女の奏でる音楽が、空から降ってきそうな気がするから。
とは言っても、東塔はしばらくは逢えないのですが・・・修繕工事に入り、10年は見られないという。
だからこそ、2010年9月18日、ここに来たかった。
1300年の時を経た塔の前で「あの頃へ」をここで聴きたかった。

つい先日、 高田都耶子著「父 高田好胤」という本をお店の窓辺に飾ると、
初めて来店されるおじいさまが、「こりゃあ良い本との出会いがあった!ここを歩いていたらこの本が目に飛び込んできて」
と大感謝された事があるのですが、薬師寺といえばこの名物管長さん、と皆さん結びつくようですね。

うちの夫に「何か奈良の思い出ある?」と聞くと「修学旅行で薬師寺の坊さんの話が面白かった」と言うし、
他にもお客さんに「奈良・薬師寺に行く」というと、「修学旅行でのお坊さんのお話が面白かったよ」と口を揃えておっしゃるんですよね。
私も聞いてみたかったな〜

そんな事を色々考えながら歩いていると、コンサート準備の為一旦退場。
真っ青な快晴だったので、塔にかかる天平雲は見れなかったですが、気持ちの良い秋晴れで待つのも苦じゃなかったです。

そして再入場、大講堂前に椅子が敷き詰められています。3500人。私は前から6列目の端っこの席。
まあまあのベストポジションです。
奈良は空が近いです。すぐそこにあるようで、一筋の飛行機雲も浮かび上がってきました。いいムード。

そして開演。
まずは管主のご挨拶。
管主さんも「玉置浩二さんと安全地帯」みたいに言ってはりました。
「玉置さんが世界遺産を前ににふさわしくないような歌もあるのですが・・・とお話されたのですが、
仏様の懐は深いので大丈夫ですよ、とお伝えしました」というところで場内大拍手。

正直心配してましたからね、褒められたものでない素行の公演が続いたので、
最悪の場合お寺側からお断りされたりなんかも・・・と。
なんのことない、ずっしりと構えられてました。さすが薬師寺さん。
そして6時の鐘がボーンと響き、厳かにライブがはじまりました。

1曲目は「じれったい」場内もノリノリ。私もノリノリ。
ノドの調子は決して良くはなさそうだけど、今日はなんとか大丈夫そう(みんな同じ思いだったと思う)
しかし間奏でなんか様子がヘン。喘ぎ始めるというか、「あーん、あはーん」の繰り返し(笑)
玉置さん大丈夫?的な心配そうなファンもチラホラ。でも今回の公演を既に何度か行ってる人は
無問題って顔していたので、ツアーを通じての演出なんだろうな、と思いました。(そうだったみたい)
あとは最後まで滞りなく終えました。

「真夜中すぎの恋 2010」はものすごく盛り上がりました。一体感ハンパないかんじ。
あんな事があったけど、観に来てらっしゃる方は大人のファンの方がほとんどで、
薬師寺での安全地帯のライブを、心底楽しもうとされていた。

アコースティックの時は着席して聴くのですが、シーンと静まり返っていました。
本来、私は静か過ぎる場所が苦手で、緊張して呼吸が下手になって焦ってくるのですが、
野外で風が当たり、なによりそんな苦手な事も忘れるくらいにこの頃は素晴らしい声で魂込めて歌われていたので、
聴くことに集中できていたのです。

チーチーって鳴く虫の音、うっすらと夕闇に染まる空、時々振り返ると消えずにちゃんと西塔、金堂、東塔が見守ってる。
この空間で聴く安全地帯のバラードたちが身に沁みたのは言うまでもない事ですね。
「あの頃へ」ももちろん。中央の席に座れた人たちはメンバーの奥に観音様がバッチリ見えて、
また違った光景だったでしょうね。入ってくるときと去っていくときを除いても、
時折手を合わせて祈ってらっしゃったように、サイドからも見えました。

そんな音楽の神様たちは、この日大いに彼らに味方したのだと思います。
後半は声がよく出ていました。
夕暮れから夜になって、月が浮かんだ時には
玉置さん、「月があそこに。朧かな?」と指差してらっしゃいました。

私は本来、くっきりとした満月が好きなのですが、この日は朧月夜がよく似合ってた。
「消えそうで燃えそうな」ってかんじで。
時折玉置さん、月を見つめて少年のような顔をされてました。
その顔を見てしまったから、ここから先は私はもう玉置さんの悪口は言えません。

すごくいいから来て!と友人や恋人や家族を誘ってライブに出かけ、
その期待を裏切られた人。
私みたいに旅の計画を練り、年に一度の贅沢で7800円必死に捻出してでかけた人、
その人たちの気持ちを思うと、やってはいけない事をやってしまったのでは?とやりきれなくなるけれど、
端まで来られた時に、近くでその熱唱する姿を見て、訴えかけてくるものがあった。
この人、むきだしなんだな、って。

動画で昔の安全地帯(玉置さんソロを含む)の映像ばかり見て、うっとりして、
その頃の玉置さんの色気と歌声に恋するような高揚感を抱いて、
「最近の玉置さんじゃなくって、私は昔の玉置さんに憧れてる」なんて思っていたけど、
玉置さんは玉置さんでその身体も魂もひとつしかない。過去も現在も未来も。今目の前にいるひとりの人間。

失望する事があったとしても、それでもこの目で見て耳で聴きたいと思うのなら、今生きて戦ってる人を応援したい。
阿修羅像の3つの顔を見て感じた事を先ほど延々と書いたけど、
その答がここに繋がってくる。

せんとくんでも鹿でもなく、今回の旅はこの場所でこの人の姿と声を聴く為に私はやってきたんだな、って実感した。
最後まで心して聴かせてもらおう、と無心になってただその時間を封じ込めた。
でも努力せずとも邪念はすぐに去った。すごく気持ち良かった。
月夜の下で「月に濡れたふたり」を聴けるなんて、贅沢なことだし、自然に身体が揺れた。

一番心に残った曲は「オレンジ」
ニューアルバムの出来がすごく良くて、全曲好きなのですが「蒼いバラ」の方が、
これぞ安全地帯ってかんじの曲で気に入ってたのです。
でも生で聴いたこの日の「オレンジ」一番印象に残る曲になった。
たったひとつのこの心で、のところの歌い方がCDやテレビと全然違う。
叫ぶように歌い上げて、この叫びには泣かされた。
奈良の大地に今の叫びが響き渡ったかと思うと、ますます泣けてくる。すごかった。

あと、もうひとつ泣きポイントがあったのは、六土さんの姿を確認した時。
私はライトファンだったので、メンバーについては正直あまり知らなかった。
ドラムの田中さんの玉置さんを見つめる優しい眼差しを好ましくおもってはいたけれどその程度。
だけど、これまた一生懸命にベースを弾いてるお姿を見た時、
仏像を見て涙を流す人みたいに、もう理由もなく感動してしまうかんじになった。

今回の再復活にかけて、サラリーマンをやめて戻ってこられたと聞いている。
思えば玉置さんの暴走でメンバーの心労も相当なものだったと思う。
それでもこうして安全地帯のライブでベースを弾いている。
もしまた休止、なんて事になったら、再就職は決して簡単な事ではないと思うのですが、
そういった状況の中で頑張ってる人を応援したくなるところがあるのは、
自分がそうだからかもしれない。
今のこの仕事しかない、他の仕事に再就職という道はもうないから。

北海道・旭川の雪の中で合宿生活をしてた頃からのメンバーさんたち、
さすが忍耐力がある。
ライトファンなんて言わずに、もっとしっかり応援したいな、なんて感じ始めてしまった。

ラストの曲は「悲しみにさよなら」観客側も大合唱。
そして最後の最後のフレーズを玉置さん、マイクレスで歌われました。
ホールじゃないから、ダイレクトに反響もなく響いてきて、これは感動しましたよ。
アンコールはなかったけど、大満足です。

              
ライブ終了後の大講堂前                           朧月と西塔 

その後夜間拝観出来たのが実にありがたかった。
夜の薬師寺もこれまた幻想的で良かったですよ。
夜の月光菩薩が拝めて感激。
お坊さんの「玉置さんは黄色のお守りを購入されました」の声に
「せっかくだからそれ買お!」と購入。感謝の気持ちはちゃんと表したいし。これはケチらず使っていいお金。

これ、後でライブレポなどを読むと
堂本剛君の時は「剛さんは赤と緑色のお守りを購入されました」など言われているようです。
しっかり商売上手ですね♪

ならAKBの時は全色売ったのか?と気になりましたが、
どうやら「ピンクのお守りを購入されました」と言われたらしいです(定かではありませぬ)
ファンの男子が皆ピンクのお守り購入するところ想像すると、微笑ましいかんじがしますね。

玄装三蔵院伽藍ではかなりの行列が出来ていたのですが、
そこへお坊さんが説法しにやってきてくれました。
ちっとも私たちを飽きさせないところはさすがです。
もっとも、ここから眺める塔のシルエットの美しさは格別で、飽きるわけなどないのですが。

「皆さん、三蔵法師さんは男だか女だかご存知ですか?では男性だと思う方」そこで多数の人が挙手。
「では女性だと思う方」そこで私は挙手しました。常に少数派へいくトライ精神のみでカンなのですが。
大勢の中で手を挙げたのは4,5人程度。私って結構チャレンジャー。ひとりで来てるのに。
答は「男性」でした。がっくし。

「女性で挙手した人、はい、テレビの見すぎです。夏目雅子さんのイメージ強いんですね」
そこで笑いがおきました。
さすが薬師寺の坊さんの話は面白い、これか、伝統は受け継がれているのですね、
と自分も奈良の修学旅行を体験できたような気分になって、かなり楽しくなってきました。
旅はひとり派だけど、今、この可笑しさを笑いあえる友が隣にいたらもっと楽しかったかな、とふと考えました。

扁額には「不東」の文字。
「不東」とは、玄奘三蔵が仏教経典を求めてインドへ旅立ったときに
「目的を達成するまでは東の方、唐には決して帰らない」という強い意思を示した言葉だと説明してくださりました。
なら私は「不西」だな、なんて思いながら手を合わせる。
西岡常一棟梁が経てた寺院の中でも復元でなくオリジナルで愛着が深いものだと知り、感慨深い。

大唐西域壁画殿では平山郁夫画伯の絵画を鑑賞。素晴らしかった。
特にラピスラズリを散りばめたという天井の夜空の絵が良かった。夜に観ると一層の輝きを増すように感じる。
一生忘れ得ない、奈良の夜になりました。

また、帰り道にすれ違うお坊さんたち、その度に
「ありがとうございました、気いつけて」と丁寧に挨拶してくださる。
お坊さんに「気いつけて」と言われたら、お守りを身に着けたような気分になった。
お坊さん、いいかもしない。
朝5時に起床らしいのに、夜遅くても背筋がしゅっと伸びてる後姿はとてもかっこいい。
せんとくん、鹿、バス、お坊さん、なんか恋多き人だな、私。

夜間拝観を十二分に堪能したので、物販ももう終わりがけで人もまばら。
あの場で「じれったいローション」を購入するのはちょい恥ずかしいので、何も買わずに駅に向かいました。
財布に余裕があれば絶対購入したかったのにな・・・
いや、使い道なさそうだけど、こういうシャレ心がある商品を開発した心意気が好きなので記念に欲しかったのです。

ライブ後もたっぷりと薬師寺にいたので、もう電車も空き空き。
ホームで佇んでいると、同じくお一人様でライブに来たっぽい女性の方がニコッと微笑んでくださったので、
微笑返しすると、「お1人でいらっしゃったんですか?」から会話が始まる。
私と同じく関東から遠征してらっしゃった模様。大阪に実家があるところも共通点だし、
初対面だというのにとても話がはずんでしまいました。

すぐに西大寺に着いてしまったので、良かったら少しお茶しませんか?という事になって
構内のカフェに入りました。わー、すっごい楽しい展開ー!と心はウキウキ♪

何これ?カワイイ!とせんとくんアイスカフェラテを二人とも注文。


そして2人とも記念撮影してるし。

ここでひとつ小さな決心。
太宰ラテを開発しよう!と。
過去にもそんな話を夫とした事はあったのですが、
文学というもの、作家をキャラ化するようなのは、毛嫌いする人も多いのではないか、と
その話は流れていたのです。

でも、うちには遠方からもよくお客さんが来店されます。
そんな時に、ちょっとほっこりした気分になれるのって悪くないんじゃないかと、
身をもって体験したわけです。
大々的に出すのではなく、こういうのもありますよ、的なところから
はじめてみるのもいいんじゃないかと。まずは実行。トライしてみてから続けるかは決めれば
いいんじゃない?って思いました。

とにかく、このラテを前に緊張の糸も溶け、話が弾んだのは言うまでもありません。
そしてこれまた共通点が。
そんなに安全地帯の大ファンというわけではなかったけど、
玉置さんの言動が注目されて、youtubeなどを見る機会が多くなった事がきっかけでハマった、これも一緒。

私は特にアンプラグドライブの「好きさ」でズキューン!と打ち抜かれたのがきっかけでした。
その女性も、それまではジャズなどがお好きだったのに、最近はライブ行きまくりみたいです。羨ましい。。。
「どうして全盛期にこの魅力に気付かなかったんでしょうか?」という議題になり、
結論は「大人にならないとこの魅力には気付けなかったのでしょう」という答になりました。
当事からファンの人たちはたしかに、ちょっと大人っぽい子が多かったような気がする。

狂気とギリギリの狭間のところでものすごいパワーを発揮している、
その妖しさにどうしようもなく惹かれてしまう、
やっぱり「消えそうで、燃えそうな」って表現がしっくりくるかな。

あとは今日のライブでの見所の話。
彼女からはアコーステシックの時の田中さんの表情がよく見えて、
目を閉じて玉置さんの歌声に浸ってるさまを見て感動されたそうです。
「あんな顔して隣でおられたらもう・・」と、私の席からは見えなかったエピを教えてくださって感謝。

「今日のオレンジは良かった」談義も。
他の場所のライブと今日の歌い方はやはり違ったようです。
大阪の方が今日振り替えで来ているので、申し訳ない事をしたな、っていう気持ちがこもってる気がした、と
言われてた。そういえば大阪は「オレンジ」半端になったのだったかな?

と、ずっと1人だったのでお互いに安地談義が白熱。
閉店の時間になってしまうまでしゃべりまくってました。
思いはひとつ、「今玉置さんのファンって事をまわりの人に言えるムードじゃないから」
そう、だから嬉しくて初対面なのに意気投合しまくりでした。

連絡先を交換して、今度機会があったら、田中さんのカフェにご一緒しましょう、と別れました。
今まで「玉トモ」といえば玉木君しか浮かばなかったけど、玉置さんの方の「玉トモ」が出来て嬉しい〜
ananの占い、当ってるかも!

ということで、奈良の夜は更けていきました。
安全地帯の今後が明るいものである事、
大阪・福岡に行ってた人の気持ちが落ち着く事、
私の今後も明るくなっていく事、
いろんな事が良くなっていく事を願いつつ・・・
また奈良にいける日を夢見て、おやすみなさい。


あまりに可愛くて、起こさぬようにそーっと撮りました。
幸せそう・・・



2010年9月25日 土曜日
長らくお休みをいただきまして、三鷹で普通の日々に戻ればもうすっかり季節は秋。
23日木曜日、久しぶりの開店お一人目のお客様は朗読の中村さん。
先ほどひとまず急ぎで秋の朗読会の変更事項のお知らせをアップしましたが、
ご希望者多数により一日2回公演にする事を決める相談に休み明け早々にご来店頂きました。

人気ぶりにさすが・・・と驚くと同時に、一日二回は初の試みなので、
不手際のないようにしっかりしなくては、と緊張するのですが、
たくさんあがっているという「参加したい」という声に出来るだけお答えできれば、と決めました。

中村さんの師である幸田弘子さんが太宰の「ヴィヨンの妻」を朗読されます。

10月7日(木)〜9日(土)紀尾井小ホール 入場料4000円
予約・お問い合わせ 幸田弘子の会TEL03-3655-2705(10時〜6時 土日祝休)
樋口一葉の「にごりえ」と太宰の「ヴィヨンの妻」が聴けるなんて・・・
今なら店内にチラシがありますので、お持ち帰り下さいね。

先日、幸田先生は太田治子さんと対談もされたそうで、内容が気になります。
中村さん曰く、先生は太田さんの事を、「治子ちゃん」と呼ばれるそうで。
もし対談の冊子が出来た暁にはお店にも1冊頂けるとのこと、読める事、楽しみにしています。

秋の読書会も近づきました。
この作品がしたい、発表します!という方、募集中です。
特になければまた私が決める事になります。
日程は毎年読書週間のあたりに行うので、今年は11月6日か11月13日の土曜日になります。
10月上旬には決定して詳細を発表しますね。


↓希望者多数により、追加公演を行う事になりました。
詳しくはイベントページをご覧下さい。
19時〜20時の回は受付終了で、
追加の18時〜19時の回のみただ今参加ご希望受付中です。
その回ももう半分の5名様に達しておりますので、
行きたい!という方はお早めの申し込みをお奨めします。
どうぞよろしくお願いします。



前回お知らせした10月30日の中村雅子さんの朗読会は
定員となりましたので、参加申し込み受付を終了させていただきます。
尚、キャンセル待ちという事でよろしければお受けいたしますので、
ご相談下さい。

連休前なのでもっと更新で日記に書きたい事も色々あったのですが、
バタバタしておりましてもう夜になってしまいました・・・

連絡事項のみとなってしまいましたが、またゆっくりと書きますね。
来週木曜日23日より通常営業となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

朝晩冷え込んでまいりました。体調崩さぬよう、お気をつけくださいね。



2010年9月7日 火曜日
まずは秋の朗読会のお知らせです。


太宰を読む vol.3 朗読中村雅子さん 「ア、秋」「女神」
10月30日(土)19時〜20時 フォスフォレッセンス店内にて。
料金 千円(ドリンクつき)
要予約(10名様限定)
確実に行きたい、という方はお早目のご予約をお奨めいたします。

今回もこれまた素敵なチラシを中村さんからいただきました。
一足早い秋を感じさせられますね。
つい先日はひまわりのイラストで夏の始まりを感じていたというのに・・・
やはりこうしている間にも確実に時は流れているのですね。

土曜日には中村さんと国分寺さんが思い立ったようにフォスでデートでも、という計画になったようで、
店内賑やかな午後のひとときを私も楽しませていただきました。
フォス友さん(中村さんのブログのタイトルを見て、語感いいかんじ!と拝借させていただきました)っていいな。

演劇「津軽」東京公演のチラシをいただきました。


実際に芦野公園駅で劇が行われたのを体感したかった、と以前に日記に書いた演劇が東京にやってきます。
興味はあったけど現地まで行けず残念な思いをされた方々には朗報ですね。
演出家の方が手がけた津軽のドキュメント番組を中村さんがとても良かった、と言われていたので
ますます観たくなったのですが、土日開催ですね。
写真の空の色がなんともいいかんじ


小さな可愛らしい、フォス友さんが時々来てくれるのも夏の嬉しい出来事でした。
6歳の仲の良い女の子2人組が夏休み中は時々一緒に遊びに来てくれていたのです。
なんだかその子たちのツボに、このお店がハマることが出来たようで、
「私、ここだーいすき」とか「私、しょうらいここに住みたいの」とか嬉しい事言ってくれるんです。
そんな無邪気な彼女たちを見ていると、いくらでも借り暮らしさせてあげたくなる。

かと思うと、「ここはわたしが先に見つけたんだからね!」とちょっと勝気でおしゃまなところもあったり、
とにかく可愛くて仕方ないのです。とても礼儀正しいし。
どうやら他の誰にもここの事は話してなくて、2人だけの秘密の場所にしているみたいですよ。
2人はフォス友だね、というセリフは今は心の中で呟いておくとして、
10年後くらいにまだ一緒に来てくれていたら、言うことにしようかな。「10年前から思ってました」って。
「はい、あげる」ともらった石もその時もまだお店にあったら教えてあげよう。

明日水曜日、テレビ東京で「カチカチ山」のドラマがあるようですぞ。
女の名作選太宰治カチカチ山
出演者
田野木肇・太宰治…柄本明、稲葉宇佐子…野村真美、関口トラ…菅井きん 
どんな雰囲気になるのか全く読めないけど明日だったらこれは観れるかもしれない。

フォスフォレッセンス舞台化らしいです。気になる〜

発売中の雑誌Numberの特集は「アスリートの本棚。読書が彼らを強くする」
表紙にもなっている長谷部誠の選んだ5冊に太宰の「人間失格」が入ってます。

明日は久しぶりに雨が降るかな?
台風の被害がない事を願いつつ、おやすみなさい
と突然眠気に襲われ、唐突に終了いたします。


2010年9月5日 日曜日
不思議な連鎖がこのところぽつり、またぽつり、と。これは良い傾向だ。

先日原さんが来られた時に、和服にも合いそうな紫色の日傘を持っておられて、
「その日傘素敵ですね」と声をかけると、「これは増田さんにいただいたの」とお聞きして、
増田さんの事が気になっていたら、昨日来てくださったんです。
以前に「みたかのみたか」誌上に登場された時、こちらの日記でも紹介させていただいた事があるのですが、
太宰の事をそれはそれは深く愛されている女性です。

以前にも何度かお店に来て下さったらしいのですが、あいにく私が不在の時ばかりだったようで、
意外にも初顔合わせだったのでした。
一度お話してみたいと思っていたので感激したのですが、
増田さんの方もいきなり「だばちゃん」を連呼。やはり「太宰を深く深く愛する」という
確固たる共通点があるので、店内がビシバシと太宰愛のシャワーに
洪水しそうな空間となるのにさほど時間はかからなかった。

先日太宰治の足跡案内ツアーが100回を迎え、新聞等にも報道されていた
みたか観光ガイド協会に所属されていらっしゃるのですが、
お話を伺っていると、私がお店でさまざまな太宰ファンやそうでない人と出会うのと同じように、
増田さんもいろいろな太宰ファンやそうでない人と出会っているようです。
そうして知識や情報、さまざまな体験が出来て太宰を深く知れていく体験をしているのは
同じ事だけど、ガイド協会の方々は皆さんボランティアでされている事を思うと
本当に頭が下がる。ツアー100回達成ご苦労様です、まだまだこれからも続けていただきたい、と
心より応援したい気持ちです。

私なんかより数え切れないほど禅林寺に行かれていて、お花は勿論墓石を磨いたり
とにかく清潔に整えていらっしゃるようで、繰り返すようだけど頭が下がる。
いつも禅林寺に行くとお花が古くないな、とかきれいでそこに立つとなんだかスーッっと
気持ちよいかんじがするけど、そこで思考が停止してしまう未熟者だった。
神様がしているのではない、必ず誰かがやっているからきれいなのだ。感謝しなければ。
想像力だけは歳をとる度に鋭くなっていくようでありたい。

私がそんな事を呟くと、「だってすごく幸せだから。
三鷹に太宰のお墓があって、近いからすぐに来れるなんて、本当に幸せだもの」と満面の笑みで語られる。
負けたー!ってかんじでした。
いや、でもこの負けは明日へと続くのです。血肉となる「負け」なのです。
ならば私は同じくらい店のガラス窓を磨け、の精神なのです。

でもずっこけるような、面白いシーンもありました。
やはりユーモアもないと。ただ愛の洪水シャワーバトルだけで終わるようじゃ太宰も不満足でしょう。

太宰関連本コーナーには、誰かが太宰の事に文中で触れた本も集めて置いています。
その本の太宰について触れてあるページに付箋をして、すぐに開けるようにしてあります。
そこに甲斐よしひろ「稲妻日記」がありまして、増田さんがその本を見つけて
「私、甲斐さん好きなのよ!」と本を棚から引き出しました。
そして付箋のあるページをめくって、増田さんは文字を声に出して読み始められました。

「三島がエッセイで言っとりました。
「俺は太宰が嫌いだけど、何が嫌いかって、あの顔が嫌いだ」ー(笑)説得力あります。
(白夜書房発行 甲斐よしひろスパーキング・エッセイ 稲妻日記PARTU 昭和63年初版帯付
P82文中より抜粋 当店販売価格150円)

その後一瞬気まずいムードが・・・ちょっとブラックジョークめいてるので、
間を置いてプッと噴き出しましたが。
声に出して読まれたから、妙に臨場感がありました。

パワフルな人はいっぱいいるな〜
そんな人たちにたくさん愛されていて、太宰は幸せな作家ですね、本当に。


「昭和の風貌」展のチラシをいただきました。文学サロンにあるようです。
17日から東京ミッドタウンの富士フイルムフォトサロン(フジフイルムスクエア内)にて開催。入場無料です。

まあ、これは夢中になりますよね、これは。このお姿は・・・

はぁ〜 壊れる前にそろそろ今日は退散します。


2010年9月3日 金曜日
ゆうべはこのところの熱帯夜に比べたら随分涼しい風が吹いていました。
もう秋の虫が鳴いてますよ、うちの近所は。

虫といえば、最近は窓側に飾る本の子供向けのコーナーを昆虫や草花、星などの本を選ぶ事が多いです。
以前に「昆虫と遊ぶ本」戸田デザイン発行の絵本を飾っていると↓


すぐに売れてしまって、その後も「ここにあった昆虫と遊ぶ本は売り切れましたか?」と
問い合わせが何度かありました。

ある日も、売り切れて残念、というご夫婦に、他の店内にあった昆虫図鑑を
「これではどうですか?」とお伺いしてみると、
『「このあいだ孫が、クワガタが僕の足からどんどんカラダの上に上がってきたんだよ!」と
目を輝かせて言うのよ、だから「昆虫図鑑」じゃなくて、「昆虫と遊ぼう」が良かったのよ』
というお答えで、そっか、この「あそぼう」が大事なんだな、と
同じ本を探してみました。

そしたら見つかったので、もう一度あのおじいちゃんおばあちゃんに見つけてもらえたら
お孫さんも喜んでくれるかな?と思って窓辺に飾っておきました。
今度は裏表紙を表にして。↓


なんだかそのお孫さんの体験の感覚に近い気がして。

そしたらすぐに見つけてくださって、お買い上げになられました。
お孫さんのひと夏の思い出とともに、喜んでもらえてたら良いな、と願います。
図鑑のように眺めて名前を覚えるのも良いけれど、夏休みはそんな虫たちとはじめて触れて、
遊ぶ体験をした子供たちがいっぱいいるのですよね。
私だって覚えてますもん。バッタを家まで靴の上にちょこん、と乗せて帰宅した時のあの幸せな気持ち。
草のむーっとした匂いとともに蘇る気がします。


産経新聞に最近太宰がよく登場しているようで、「これあげる」とお客さんがくださった
8月24日(火)の記事が今目の前にある。
倉橋健一の文学教室18 太宰治「斜陽」 これは太宰関連の最近の新聞記事の中でも
特にベタ褒めで、読んでいて嬉しくなってしまった。
「太宰が生きていれば、まっ先にノーベル文学賞をあげたい。」とまで。
井上靖も同じような発言をしていたんですよね。

この記事にも書いてあるけど、「斜陽」という作品は、発表された当時リアルタイムで読むのと
古典として現代の時間の流れの中で読むのとは、また違うものなのだろうと感じる。
激動の時代のなかで、放たれた「斜陽」の匂いはどんなだろうか?
こればかりは私がどんなに努力しても実現しない。一生味わえない。
タイムマシンでも本当に出来ちゃわない限り。
だからこそ、それを知っている人に、もっと教えてもらわなければ。

来世はまた人間になれる、でもタイムマシンには乗れない。
来世は虫だ。でも現世の人生最後にタイムマシンに乗れる。

この2択だったら、後者を選ぶかもしれない。
虫として生きてこの世界を眺めてみたい気もするし、
1人の少年にひと夏でも愛されたら、それも幸せかも。
その少年が飽きちゃって見向きもされない頃には、きっともう死んでしまうのだろうから。

そんな事言ったら、どのみち人生終わったら今までの一生を振り返る時間があるのに
って死後の世界を見た人に言われそう。
それってもしやアリエッティボケですか?とも言われそう・・・
いろんな事を考える夏です。


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