2010年12月30日 木曜日
2010年の営業もいよいよ本日で最終日。日記もじっくり書こうと思っていたのですが、
今日は一日中お客さんとおしゃべりするうちに閉店時間がやってきたかんじで、
もう大晦日に日付が変わってしまった今頃になって更新している次第です。
実に理想的な最終日だったとも言えますね。

初めてご主人とご一緒に来店くださったり、千葉からブラウニーのお店をしている方が
はるばる来店してくださったり、とぎれなくお店が回っていき、気持ちよく年内の営業を終えました。

とても濃い時間も過ごしました。
太宰治の「メリイクリスマス」と村上春樹の「ノルウェイの森」に共通点を見つけた、と
文章を綴られたお客さんがいらっしゃっていて、
「アリエル」の本の内容って、水死する少女の話だって知ってた?と私に質問されたのです。
その時ちょうどお隣のテーブルに原さんがいらっしゃっていて、
「その本を持っているけど、実はまだ読んでいなくて・・・」というところから、ご一緒に太宰話で
盛り上がる流れに。
アリエルの件は私も知らなかったけど、その後を暗示しているのか?ちょっと読んでみたくなりましたね。

「緑の帽子と赤いコート」についての質問も受け、いやいや私はまだまだ読みが浅いな、と反省。
クリスマスカラーで綺麗、と雰囲気読みしかしていなかったけど、よく考えると当時の街中でそのスタイルだと
浮かないか?など色々と疑問も生まれてきました。
研究しがいがある作品かもしれませんね。いつか読書会で必ずとりあげよう。

原さんが立原道造もお好きだ、という話からだったか、先ほどのお客さんが軽井沢やヒヤシンスハウスなどの画像を
たくさんコンパクトPCに取り込んでおられたので、しばらく3人で眺めながら雑談タイムに。
福永武彦の「草の花」の舞台になった清瀬の画像も興味深く拝見しました。

先日朗読をされた建築家白井晟一についてもそのお客さんは大変詳しくて、
原さんに「ここに来てまた不思議な出会いがありましたね」と言われて、本当にそうだと驚いています。
何か共通するご縁を引き寄せる力がある人です。
「建築家白井晟一 精神と空間」の展示に先駆けて、原さんの朗読音声にて白井さんのエッセイがPCで聴けます。
原さんのブログで案内があります。

今日は原さんに「甘いものは大丈夫ですか?」と手作りのおせちをいただいたのですよ!
「甘いもの?だいすきですっ!!」と目を輝かせて答えたのは言うまでもないですが、
その後「これは錦玉子で、これできんとんで、」と説明してくれる原さんが可愛らしかった。
今、深夜のこんな時間にも関わらず、その朗読を聴きながらいただいてます。まさに至福の美味しさ、至福の時間です。


先日、写真家小島一郎の話をしてくれたお客さんがまたすぐに来てくださって、
男前列伝のDVDと写真を3枚ほどコピーしたものを丁寧にファイルして持参してくださったんです。なんとありがたい!
さっそく店内に貼らせていただきました。
DVDはお正月休みで拝見したいと思います。
写真は例の十三湖の映画館のものを1枚ご紹介します。


実に深い雰囲気を醸し出していますね。今でも一部残っているというのがまたいい。
番組を見たらきっとまた興味を惹かれるだろうし、小島一郎、しばらく追いかけてみようかなと思います。


香川の澤田さんが今年も可愛らしい干支の置物を送ってくださったんです!

寅ちゃんペアからうさちゃんペアへバトンタッチです。
右側が2011年のうちの窓辺に居座ってくれる事になるでしょう、うさぎの置物。手前が可愛らしい動物のマグネット。
すべて手作りらしいのですよね。共通して柔らかいムードがあって、大好きです。
今年もまた通り行く子供達の和みキャラとして活躍してくれそうです。

では、今年の日記はこれにておしまいです。
そして昨年同様、今年もまだ年賀状が1枚も書けていません・・・
紅白を見ながらのんびり進めたいと思います。
まずはハガキを用意しなくては

2010年は色々とありがとうございました。
2011年もフォスフォレッセンスをどうぞよろしくお願いします。
うさぎのようにピョンピョン跳ねる事ができる年になりますように


2010年12月24日 金曜日
クリスマスですね。お店の飾り付けもしました。
例年通り親子連れで窓辺を見て反応してくれる光景が、私の気持ちを温めてくれています。
毎年この時期、サンタのようにクリスマスの飾りや絵本を送ってくださるお客さんがいらっしゃるのですが、
今年も到着しました。実にありがたいですね。
おかげさまでクリスマスの飾りは年々少しづつ増えているんですよ。

先日禅林寺に行った時、墓前に立ってビックリしました。クリスマス仕様だったんです。
赤と白の塗り枝がお花と一緒に添えられていました。
クリスマスカラーというと赤と緑が定番のようですが、赤と白も良いですよ。
津軽の真っ白な雪を思わせます。

そういえば以前に日記に書いた、津軽の白いリンゴ、新宿高野でお披露目されているのを見てきました。
販売は今のところ未定、と店員さんは言われていましたが、
記事では来年にでも販売する、とあったのでいつか買う事ができれば良いな、と思います。

今夜は525円のケーキと188円のシャンメリーを夫と半分こし、
マイケルとMステをいったりきたりしながら見て過ごすクリスマスイブになりそうです。
今日が仕事納めで明日からプーケット島へ行って1月半ばまでゆっくり過ごすというお客さんに
「私なんて525円の」というかんじで話すと、
「そういう時が一番幸せなんですよ」と言われ、なんだか妙に納得してしまった。
そうかもしれないですね・・・

「なんかイライラする事があったんですけど、ここに来ると本当に落ち着きます」という
お客さんからの嬉しいお言葉も聞けたし、今年もこうしてこのお店でクリスマスが過ごせたというのが
当たり前のようで、とても幸せな事なのかもしれませんね。


これがその525円のブッシュ・ド・ノエルです。
クリスマスくらいは丸いホールケーキを来年こそは食べたいな


お金をかけないでクリスマス気分を味わえるといえば、イルミネーション。先日見てきました。

恵比寿ガーデンプレイスのバカラシャンデリア
来年1月10日まで見れるらしいですよ。

世界最大級のバカラ製シャンデリアということで、見たかったんです。
綺麗だった〜。人も多すぎず、イルミもセンス良く気持ち良い空間でした。
昨年はミッドタウン、表参道でイルミを見たので、今年は恵比寿のこちらを選びました。
クリスマスの時期のイルミは大好きだし、キラキラしたものを見てパワーチャージもたまには必要ですね。

数時間並んでクタクタになりながらパワースポットに行くのなら、
クリスマス前のこの時期のアクセサリー売り場の強力な磁場を浴びて帰る方を選びます。
たしかいつかの12月にもそんなことを日記に書いたような記憶がありますね。

伊勢丹のアクセサリー売り場のパワーはハンパなかった。
自分の好きな人が喜ぶ顔を想像しながら選ぶ男女、この時期こそばんばん売るわよ!っていう店員さんの気合、
上のシャンデリアの画像じゃないけど、天井に炎が燃えてるのが見えるようでしたよ(笑)
私はもちろんウォッチングだけ。自分へのご褒美にアクセサリーが買えるクリスマスは何年後になるのだろうか・・・

でも先日の朗読会の時間とか、ケーキを食べて美味しいと感じられる甘感とか、
満月の輝きを見つめて思いを馳せたり、
サファイヤよりも美しい鹿たちの瞳を目の奥に映し出したりして、
それだけで満ち足りてゆくものを感じられるようになった。

心にふと落ちる影を忘れたくて、一瞬の物欲を満たすために、
自分の身の丈以上の買い物をしては後悔するようなこと、恥ずかしながらこの歳になるまでよくあったんです。
特に街が華やぐこの時期に・・・
でも通り過ぎたようです。枯れていくのも、悪い事ばかりではないようです。
それになにより本があるし。本があればこの先もきっと大丈夫。

では家へ帰ってケーキを食べましょう。
皆様にとっても、良きクリスマスイブでありますように。
merry X'mas


2010年12月23日 木曜日
先日「津軽に行こうと思っています」と1人の男性が来店されました。
しばらくお話を伺うと、小島一郎という写真家を知る事によって、太宰治にも興味を持ち、
ここのところいくつかの小説を読み始めたら面白くてハマっているとのこと。
小島一郎という写真家を恥ずかしながら知らなかったのですが、
説明を熱く語られるのを聞いて、ネットで調べていくと私もとてもこの人物に惹かれていきました。

そのお客さんが小島一郎を知ったのは、BSの男前列伝という番組。
昭和30年代の青森で、津軽の日常を映し続け、「写真界のミレー」と言われた写真家。
東京に出るも、都会の空はあまりに津軽とは違い、シャッターを押せなくなってしまい、北へ帰る。
1964年7月7日、享年39歳でこの世を去る、
39歳というのもシンクロしたのですが、その小島一郎本人の画像を見て、
どことなく太宰似のいい男だった事も私の男前センサーがおおいに働いた。

なによりも驚いたのはその写真。
お客さんから教わり、「小島一郎写真集成」で検索して何枚かネットで見ることができましたが、
ミレーの絵画のよう。しかし穏やかさではなく、北国の農耕生活の厳しさが伝わってくる。
ディスプレイを通してでなく、写真集を手に直接見てみたい衝動に駆られました。

この目の前の男性は、もっと強い衝撃だったのでしょう。
そこから津軽に関して辿っていき、太宰にも傾倒し、このお店まで到着してくださったのだから。
計画している津軽旅行は私が経験した4泊5日とかそういうのではなく、
じっくり腰を据えて周られるとのことで、なんともいえず羨ましい。

気になる情報も得られました。かつて十三湖の湖畔に映画館があったそうです。
小島一郎の写真にあるそうです。
現在もその映画館の一部が残っているとか。今すぐ確かめたくなりますよね。
津軽の湖畔に映画館があった・・・なんというか、現実の世界でもファンタジーはたくさん隠れているものですね。

BSはなかなかいい仕事してますね。そういえばNHKBSも大晦日に深夜ぶっとおしで、
太宰治短編小説集を再放送するようですよ。ただ年末は変動も多いので番組表でまたチェックしてみて下さいね。


女子会についてですが、男性からの方がなぜか反応があります。
「男子は参加できないんですか?」とか「大人の、ってつくと妙に色っぽいかんじですよね」とか(笑)
クリスマスももうすぐ終わり、いよいよ今年もあと1週間と少し。
30日まで日がありますので、今からでもよろしかったらご検討下さいね。

思いついたきっかけは、先日横浜国立大学のゼミの皆さんがお店に来店してくださった事。
約10名様のご来店で、お店はぎゅうぎゅう&てんやわんやだったのですが、
皆さんとても楽しそうに過ごしてくださったんですよ。

このお店でもう3年以上ずっと売れていなかった源氏物語占いの本がここへきてまさかの大活躍。
お1人づつ占っていき、「藤壺」とか「朧月夜」とかについて読み上げられるのですが、
ものすごい盛り上がりでした。夜の方面もあからさまに書いてあるのを、高らかに読み上げるとか、
これぞ大人の会、といった風情でなんともいい雰囲気でした。
長年売れなかった本も、いっきに大ブレイクして良かったです。

静かに1人、本とコーヒーの時間を過ごす、ここのお店は主にこんなイメージがあるようですが、
たまには本をきっかけに皆でワイワイという場所にも是非使っていただきたいな、と思って
女子会企画を打ち出してみたわけです。
期間が終了しても、以降は持ち込みなどの制限はあるものの、営業時間内までの貸切は受け付けていますので
どうぞご利用下さい。


2010年12月20日 月曜日
18日の朗読会、今回は天災も来ず、突然のアクシデントもなく、無事に終了いたしました。
気持ちよい青空が広がり、第一部・第二部とも満席でお1人もキャンセルなく
時間通りに滞りなく進行し、中村さんの朗読も素晴らしく、満点な1日だったのではないかと思います。
皆様、本当にありがとうございました。

予想外に嬉しい展開がありました。
第一部に10歳の男の子がお母様と出席されたのですが、その男の子に「女神」が大ウケ!
随所随所で彼の笑い声が響き、なんともいえず和やかなムードになっていました。
子供ってすごい。子供の心と耳と想像力で「女神」を聴いたらこんなに笑いが止まらず愉しめるのですね。これは発見でした。
勿論、中村さんの朗読の力あってこその事でしょうけど、何より太宰が喜ぶでしょうね、

「女神」について個人的に思い入れがある事は以前の日記にも書いたと思うのでここでは省きますが、
人は誰でも小さな奇跡のエピソードを持っていると思います。
私自身の奇跡が詰まった物語なので、特に思い入れたっぷりで聴いていました。あたふたしながらも。
私にとってもクリスマスプレゼントみたいな時間でした。

本日中村さんが来店してくださって、参加者さんからのメールや感想を伝えてくださりました。
嬉しいお言葉ばかりでとても嬉しかったのですが、
「昭和20年代の三鷹の風景が目に浮かぶようでした」という感想におおいに共感しました。

時代は変わり、作者ももういないけれど、師走の三鷹の駅前の風景が、たしかに見えたのです。
あの日、皆さんそれぞれの想像の中でも同じように見えていたのではないかと思います。
色々なものが流れ、変化していっても、人間の心の中の風景はそう変わらないものなのだな、と
ホッとするような感覚もありました。
当時も現在も同じ師走、人は街を行き交い、その流れをボーッっと見つけている者が存在する。
同じだな、と思いました。



朗読会当日、幸田先生から中村さんに豪華なお花が贈られました。
素敵なサプライズに中村さんも私も大感激。


中村さんと色々話していると、小学生の仲良し2人組がご来店。
優しく彼女達に話しかける中村さん。
お年玉の話題になり、「欲しいものがあるからお金を貯めているの」という小学生の女の子。
「何が欲しいの?」と質問すると、
「家を買いたいの」ですって。これにはちょっとぶったまげました。

変わりゆくものも、たしかにあるようです。昔の子供たちとはちょっと違いますね。
でも、夢は大きいほど良い。小さなものでも、貯めていけば必ず大きくなる。
そんな彼女達の夢を見守っていける、近所のお気に入りのお店のお姉さん
(おばちゃんでしょって突っ込みはなし!)でい続けたいです。


2010年12月12日 日曜日
いよいよ12月になりました。冬の到来ですね。
寒いのは苦手なのですが、hotな出来事もありまして・・・
超久しぶりに夫にデートに誘われました♪
そのプランがヤマトの映画鑑賞でなければ喜んでおでかけしていたと思います(笑)
私は「ノルウェイの森」の方が断然観たいのですが、彼はそっちは無関心。
でも思い入れがありすぎる小説なので、1人でじっくり鑑賞するのが良さそうです。

昨日お客さんとも話していたのですが、この小説を初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。
ただ村上春樹が好きな人でも、「ノルウェイはどちらかというと好きな方ではない」という感想もよく耳にしますね。
私はハマったな〜。晩御飯を食べるのも忘れて上巻、下巻、と一気に読んだ日をまだ鮮明に覚えてる。
読書の愉しみというものを貪る様に味わった、というかんじでした。
東京に住んでいる今、44歳になった今、新たに読み直してみようと思います。

映画公開を記念して、窓辺には村上春樹の本や関連本を並べています。
残念ながら肝心の「ノルウェイの森」は在庫がただ今ありませんので、
赤と緑の装丁の本を交互に並べたりして、ちょっと「ノルウェイチックな窓辺」になっていますよ。
例えば中原淳一の「美しく生きる言葉」と「女性を美しくする言葉」とか。
これも素敵な本ですし、クリスマスプレゼントにしてもいいかもしれませんね。

なんだかあまりに日々が早く過ぎていって、今年ももうわずかだという実感がありませんが、
不況の波は当然のように我が店にもやってきました。
大変厳しい下半期でしたね。そこで、あとわずかな今月ですが、ひとつ企画を考えました。


サヨナラ2010年特別企画 大人の女子会してみませんか?

12月30日までの営業日で貸切の予約があれば22時まで営業時間を延長いたします。
2日前までにお知らせ下さい。
12時〜22時までの間で貸切料1時間3000円で受付いたします。
今回の企画に限り、ワンオーダー以上のご注文をいただけましたら、あとは持ち込み可能といたします。
ワインやシャンパン、軽食、OK。ちなみにビールはメニューにございますのでよろしかったらご注文下さい。
コンセントはひとつご自由に使っていただけますので、
エレキギターやマイク、アロマディフューザー、ナノケア、マッサージチェアなど使用していただけます。
勿論、キャンドルもOKです。
(こちらでは用意できませんので、持参下さい)
人数はお1人様〜10名様まで可能です。

ここのお店だと絵的にはSATCのような陽気なガールズトークのイメージよりは、ジェーンオースティンの読書会のような
読書会や朗読会を静かに行っている場面を思い浮かべられる方が多いようです。
勿論そのような会に是非ご利用いただきたいのですが、
今回は、2010年のユーウツをぶっとばせ!的な、最後くらいちょっとワイワイいっときます?感覚
でも全然OKです。またはお一人様女子会でアロマ炊いて瞑想、または月齢カレンダーで日程を調整してガラス越しの月光浴、
など今年の最後に、頑張った自分にご褒美タイムを、というのもいいんじゃないでしょうか。

女子会という、中には「女子という言葉はちょっと抵抗がある」という人もいそうな言葉をあえて使ったのは
あとちょっとで終わる今年限定の泡のような企画なのだから、あえて流行りものにのっからせてもらおうと決めました。
来年以降使うにはちょっと微妙かもしれないのでもう年の瀬の勢いで。
そんなノリだから、ポップもあえて手書きのゆるゆる。イラストもゆるゆる。

そうは言っても男子もOKですので。あとは普段忙しいお母さんのために親子会を、とか歓迎いたしますよ。
赤ちゃんと一緒に貸切でゆっくり過ごす、そんな時間にもご利用いただけたら嬉しいです。
クリスマス会、忘年会、要するになんでもアリって事です。
この機会に是非ご利用下さいませ!お問い合わせ。質問もお気軽にどうぞ。

また、今月中は営業時間中に貸切が生じる事もございます。前日までに必ずHPトップにお知らせいたしますので、
確認いただいてからのご来店をお勧めいたします。

まずは12月18日、いよいよ中村さんの朗読会です。
今回も2部とも定員となりました。この日は通常営業は17時50分までとなりますので、どうぞよろしくお願いします。
参加いただける方はどうぞお気をつけてお越し下さいね。穏やかな気候である事を願っています。

クリスマスの飾り付けをたくさんして「メリイクリスマス」の朗読を拝聴出来たら雰囲気抜群だと思うのですが、
当日はこの小さな店内で椅子や机の大移動を行う関係上、あまり装飾が出来ないのです。
でもきっと、朗読だけでムードはたっぷりになる気がしています。
二部構成は初めてなので緊張もしていますが、楽しみな気持ちの方が大きいですね。





朗読の原さんがお店に立ち寄ってくれました。
さっそく店内にチラシを置いています。写真が新しくなってますね。こちらのお着物姿も素敵・・・
ネットワーク大学の講座や食茶房「むうぷ」での朗読会など、来年も大活躍の模様。
詳しくはブログでチェックしてみて下さいね。



2010年11月25日 木曜日
秋が深まってきましたね。お店の前の三鷹通りもすっかり紅葉しています。

       
こんなかんじです。秋はお店に一番似合う季節とよく言われます。  窓辺へちょっとした演出ディスプレイしてみました。

開店準備をしながら、今日の天声人語の読後の余韻がずっと続いていた。
青森の女生徒が白い林檎を開発した事にからめて、寺山修司や北原白秋の歌が載っていた。
私の心を打ったのは、古い時代の訳ありの一首。

君かへす朝の舗石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ 北原白秋

たった三十一文字が、頭を離れず、詳しい背景を調べたくないくらいに浸りきった。
「とりわけ下の句など、白い林檎への賛歌のようだ。」と記事では結ばれていた。

そんな時、紅葉の通りの奥から鮮やかなブルーのトレンチコート姿の中村さんが歩いてきた。
ちょっと映画の1シーンみたいでした。
そしてご出身の青森から贈られてきたという林檎をくださった。
そっと鼻を近づけると、久しぶりに味わった自然の甘い香りがした。
林檎は東洋でも西洋でも神の贈り物なのだ、それほどまで思わせる完璧な香り。

先日、「第20回映画祭多摩シネマフォーラム」の司会を務められ、
女優の寺島しのぶさんとお会いした話や、はやぶさプロジェクトマネージャーの川口淳一郎教授との
トークの話など興味深くお聞きしました。
今年もいろんな出来事があったけれど、一番心を熱くさせたニュース第一位は「はやぶさ」な私に
とってはその後の続報も嬉しい限りで、その快挙にいつも勇気をもらっています。

12月18日の中村さんの朗読会の参加申し込み受付は、2部とも満席となりましたので、
キャンセルがあった場合の了解済での希望受付のみとなります。
どうぞよろしくお願いいたします。


私的今年の第一位趣味部門はやっぱり奈良の旅ですね。
あの旅日記を読んでくださったお客さんが、「奈良を一緒に歩いてるみたいでした」と言ってくださったのも
とても嬉しかった。あと「鹿の可愛さに癒されました」とか言ってくださる事も。

ただ心残りもあります。一番行きたかった浮見堂、池の水面に浮かぶシルエットの美しさに酔いたかったので
暗くなってから行く、と決めていたのですが、暗くなってからは周辺を1人で歩くのをビビッてしまった。
ここはいつか1人行動じゃない時に行く事にします。

すっかり奈良に心を奪われた私に、お客さんが「東大寺大仏展」の招待券をプレゼントしてくださりました。


これは行けて良かったです。国宝誕生釈迦仏立像や八角燈籠は勿論、正倉院宝物も鑑賞できました。
この「よう!」ってかんじの微笑み、実際に見れて感動しました。

東大寺大仏殿の土中から見つかった金銀荘大刀2本が、正倉院から取り出された「陽寶劔」「陰寶劔」と
判明されたニュースから間もないのでかなりの人ごみかと心配したのですが、雨の平日という事もあり大丈夫でした。
しかし1250年ぶり幻の宝剣と判明なんて、歴史の世界は文学のロマンティックさを
すっと飛び越えてしまうような壮大さがありますね。
この宝剣の正体を見抜いた東芝製工業用エックス線装置にも、はやぶさと同じく「グッジョブ!」と声をかけたいです。

バーチャル・リアリティ映像「大仏の世界」で天井まで映し出された映像に感動し、じっくり時間をかけて鑑賞しました。
特に印象に残ったのは、縹縷(開眼縷)、快慶作の仏像、五劫思惟阿弥陀如来坐像、かな。

五劫思惟阿弥陀如来坐像は、五劫、すなわち何億年もの長い間、髪の伸びるのも構わず修行に没頭していた為に
パンチパーマのような螺髪になったということで、天然パーマな私はそのチャーミングな姿に親近感を覚えました。

一番美しいと感じたのは、快慶の「重文 地蔵菩薩立像」
唇が唯一赤い仏像で、衣に描かれた波打つ金泥の文様がなんともいえず綺麗。
鎌倉時代は力強い作品が多い印象ですが、こちらの仏像の繊細な美に深く感銘を受けました。
同行者に思わず「お洒落やね〜」を繰り返すと、周囲の人々も「おっしゃれ〜」と口々にしたのは面白かった。

同じ会場でも、阿修羅展の時はものすごいフィーバーで、入場者80万人を越えたらしいですね。
阿修羅展に行ったというお客さんは、女性のウットリ顔を見に行ったようなものだ、
ともオーバーに表現されていましたからね。
仏像界のアイドルを興福寺で観れた私は、かなりラッキーだったのですね。
その時に比べるとまだ八分の一くらいの入場者数のようですが、見どころたっぷりでかなりおススメです。
12月12日まで東京国立博物館平成館で開催中です。
新宿より先にはほとんど出かけない私の重い腰を上げて出かけて本当に良かった。
招待券をくださったお客さんに心より感謝申し上げます。


話は随分戻って、長い長い歴史の事を思うと、白い林檎や青い薔薇の誕生についても感慨深いものがある。
フルーツ店が「雪のようなりんごをクリスマス向けに売りたい」と準備しているらしい。
自然ではないものを嫌う人もいるかもしれないけど、私は見てみたい。
同じように、甘い香りがするのなら・・・

皮むきが面倒だからと林檎が敬遠される時世であるらしいけれど、
映画「抱擁のかけら」でペネロペ・クルス演じるレナが色鮮やかなキッチンで、
林檎を剥いている立ち姿は、ほんの一瞬しか映らないけれど、はっとするくらい美しかった。
せっかくいただいた青森の林檎、女優気分で皮をナイフで剥いてみるのもいいだろう。
その後はサクサクと音をたてて食べてみよう。

白い林檎を開発した女生徒は「りんごで地域を盛り上げたい思いがあった」らしい。
自分の事で精一杯で余裕のない日々を過ごしている私にはこの言葉はいい薬。
そんな思いで、もっと長いスパンで物事を観る眼を養いたい。
もう師走はすぐそこ。せわしない月だからこそ、じっくり考えなきゃいけない事がたくさん。
焦らずひとつひとつ片付けていかなくては。
まずは林檎を剥いて食べてから考えよう。


ラメ入りの葉牡丹。夜になるとキラキラと光を放ちます。
燐光っぽい、=フォスフォレッセンスっぽい雰囲気を発光しています。

先日の「皮膚と心」の読書会レポートをアップしました。
また思い出した事があれば追加していきます。
年末年始のお休みは、中旬までには決定し、トップページにアップします。
おそらく31日〜5日がお休みになりそうです。どうぞよろしくお願いします。



2010年11月13日 土曜日
読書会、無事終了しました。
参加いただいた方々、お疲れ様でした。

この日のために夜中にポテチを我慢せずに食べて、頬に吹き出物を作って望みました。
そんな事してもなんの得もないのに、そうしてしまう自分がちょっと愛おしい(笑)
私の青春時代といえば、木陰で文庫本を読む文学少女で・・・なんてことはなく、
ディスコで踊るのが楽しいタイプだった。
それでもとにかくニキビに悩まされた。ニキビが右頬に出来ている時は、
絶対に好きな男子にその方向が見える角度に立たなかったし、
顔の広範囲に出来てしまった日は学校を5時間目から行ったりしたし。

20代でもまだ治らずに、やっと二ヶ月ぶりにデート、という日に限ってものすごくニキビが出来て
嘘をついて延期してもらった事もあるくらい(Sさん、あの時はごめんなさい。もう時効ですよね?)
顔が見えない暗い場所は大好きだった。だからディスコ好きだったのかな?

前置きが長くなりましたが、とにかくあの、ブツブツが出来るだけでこの世の終わりかとも
思う感覚は、イヤというほど知っているのでした。
あと、竹村書房から単行本化された時の表紙イラストに合わせて
当日の服装は、チェックのシャツワンピースにしました。
家にあった資生堂の口紅を、雰囲気創りのオブジェとして持参しました。

なんとか前日の11月12日、皮膚の日にレジュメを完成。
今回もとても楽しかった。2時間があっという間でした。
「皮膚と心」は特に男性と女性でとらえ方が違うのが興味深かったですね。
男の人って、視覚で文字を追っていくのだろうか?
新たな研究テーマが出来てしまいました。
この日の読書会の詳しい内容は、近日中にレポをアップする予定です。

読書会の最後に、参加いただいたお客さんからの素敵なサプライズがありました。


資生堂ギャラリーのポストカード。

読書会前に、銀座の資生堂ギャラリーに寄ってこられたそうで、参加者全員に
ポストカードをプレゼントしてくださったのです。
心から感謝申し上げます。
読書会前に、その作品のモチーフを探るというか、
こんな密かな気合を入れて来てくださった事も、とても嬉しく思います。

皆さんとっても喜ばれ、特に女性はウットリ状態でした。
こうして70年後も女性たちが歓喜するのを予期して太宰は「皮膚と心」を書いたのか、
銀座の化粧品会社の広告の図案家のストーリーを選んだ事は
先見の明もお見事、というべきか・・・
「皮膚と心」実にやりがいがある作品でした。
結論・太宰は女以上に女である。


2010年11月11日 木曜日
お客さんから「太宰の事が載ってたよ」と切抜きを頂きました。
夕刊フジの11月9日号、BOOKコーナー。
記事には仲代達矢さんが登場していて、吉祥寺の飲み屋で太宰と言葉を交わした時の
エピソードが書かれてありました。

「ちょっとお話を」と太宰に声をかけると「うるさいガキだね」と言われたそうです(笑)
太宰にすっかりかぶれていた頃だったそうで、本人に会えた事は嬉しかったでしょうね。
「うるさいガキだね」はそのニュアンスによってどうにでもとれる言葉ですが、
この記事のど真ん中ぶち抜き太字になっているのは、
「今も俳優より作家が上」だし、きっとガッカリする出会いではなかったのだろうかと
想像できます。
仲代さんが太宰をリスペクトしていたとは、初耳でした。

最近では、毛皮のマリーズの志磨遼平さんが、自らを「前世は太宰治かも」と
雑誌で語っていました。
吉祥寺の書店でブラブラしていた時、音楽雑誌コーナーにあった「MARQUEE」の表紙を見て、
なんとなく志磨さんって太宰が好きな人の匂いがすると思ってはいたのですが、
ここにその答が書かれてある気がする!って直感がしたのです。
案の定載ってた。

歳をとるにつれて記憶力はじめいろんなものが鈍っていきますが、
こういった妙な直感は最近冴えまくってるんですよ。
この調子で宝くじもドカーンと当てたらいいのにな〜

最近吉祥寺がリニューアルオープンラッシュなので、しょっちゅうウロウロしてます。
「今ロンロン」じゃなくて「今アトレ」に慣れていくのかな・・・
伊勢丹跡のコピスにもさっそく行きました。ジュンク堂は勿論、
axes femmeっていう、好きなショップが入っているので。

ロマカジになるのかな・・・ちょっとデコラティブなテイストもあり。
プチプラな方なのでお気に入りなのです。といってもウォッチング対象ですが。
ショップの造りもすごくロマンチック。
買ったのは400円台のハンケチ1枚のみ。小鳥と本のデザインでこれまたロマンチック〜!
この冬、使い倒したいと思います。

話戻って、お客さんからいただいたフジの記事の他の欄に、
ひし美ゆり子さんも登場していて、そのあまりのキュートさにひっくり返りそうになりました。
「好きな事してるからストレスたまらない」「悠々自適」と書いてあって、
この年齢でこの美貌をキープする秘訣はやっぱストレスフリー?と
あれから40年・・アンヌのひとりごと」というご自身のブログを拝見すると、
「あれはハッタリハッタリ〜(笑)」「外食産業にも見事な打撃なのよ。」等とあり、
「ハッタリ〜」とか、「現実逃避」と笑い飛ばせる明るさとか、今の私を大いに勇気づけたのでした。
そんなゆり子さん、Cafe&bar(バール)『TP's Cafe』(ティーピーズカフェ)というお店を
調布にオープンされるそうで。調布なら近いし今度行ってみようかな。

ちなみに私はウルトラマンシリーズではAが一番好きです!
そういえば昔、夫と京阪電車のどこかの駅で降りてウルトラマンカフェなる店に行った記憶がある。
その時、レジで「1200カネゴンになります」と「円」を「カネゴン」と店員さんが言っていた事だけは
ハッキリ憶えているのですが、どうも店員さん、照れがあってダメだった。
どこか恥ずかしさがあったようでした。新人さんだったのかな?
あーゆーのは思いっきりナリキリ&ノリノリでやらないと。
きっと太宰もそう言うだろうと思う。こういう時は人間、照れが入って中途半端になってはいけない、と。
と無理やり太宰を登場させたところで、本日のダラ日記を締めくくりたいと思います。


2010年11月7日 土曜日
初めて来店されたというお客さんから
「日々の呟きに映っていたお店はここですよね?」と言われました。
見つけていただいて、すごく嬉しかったです。

その前に来店されたお客さんも、映画をご覧になった方で、
感想なんかを話していたところだったので、驚きました。

かなり報告が遅くなりましたが、10月19日に東中野ポレポレで上映された
「日々の呟き-La Vie Murmuree」を観に行きました。
例のフランス人の監督が太宰治ドキュメンタリー映画を撮影した作品です。
今のところ上映の予定はないようですが、先の事は未定です。
これから観る事があるかもしれないので内容はまだ知りたくない、という方は本日の日記はとばして下さいね。


正直観に行くのは迷ってもいました。夜遅くに電車に乗らないといけないし、
会場は地下だし、体調に自信がなくて。
でも上映の日が第三火曜日でお店が定休日だったのも何かの縁ですし、
せっかくご招待いただいたし、何より映画を鑑賞したかったしマリー・シオネ両監督にもお会いしたかったので
出かける事にしました。

結果、本当に行って良かったです。
映画は2時間近い時間だったのにも関わらず、全く退屈させない、最後までグイグイひきつけられるものでした。
カメラワークが良い。臨場感があって、自分がそこにいるみたい。
映画を観たというより、「体験した」ような不思議な感覚が残りました。
男性のナレーションの声も良い。
時折フランス映画観てるような気分になるシーンもあった。

かなり貴重な映像も沢山観れました。
野平健一・房子ご夫妻のシーンでは、泣いてしまいました。
撮影後にお二人とも亡くなられているので、
上映前に監督からお二人に捧ぐ映画、というお言葉がありました。

昭和23年6月19日の事を回想される場面で、
夫人が「玉川上水のあたりを大の男二人が大声でわーわー泣いていた」と説明なさる時、
穏やかだった野平さんの表情が変わった。その一瞬で、野平さん、野原さんにとっての太宰治という存在が
いかに大きなものだったのかが見てとれる。
この日の喪失感の重さがズシッっと伝わってくる。

園子さんのお部屋のシーンも。1カットの中にも左端に額縁に入った父の写真、右端に肖像画が
目に入ってくる。その映像だけで十分に伝わってくるものがある。
取材での家族写真で、庭でにわとりを前に撮った写真の太宰の表情の変化について
笑って語られる園子さん、直に話しているような錯覚に陥る。このフィルムは実に貴重だと思う。
映画を観れた人はかなり幸運なのではないでしょうか。

そしてお店のシーンもちゃんとありました。来てくださったお客さんも映っていて、
良いシーンだったので感激しました。自分の姿はどう見ても冷静に正視できないんですけどね。
ほんの少しの時間でしたが、この1シーンを見て今日お客さんが来てくれたなんてとても嬉しいじゃないですか。

そしてこのお店で監督と出会った事がきっかけで、映画の主な登場人物になってらっしゃる方々も
いて、その事もとても嬉しく感じました。何か橋渡しのようなものが出来たのだと。
「ンダスゲマイネ」の作者さんの作品が出来るまでのシーンも多くあり、興味深く拝見しました。
作者さんと久しぶりにお話できたのも来て良かったと思えた事のひとつ。

ただ太宰=自殺というイメージを、この映画を観て再確認する人もいるかもしれない。
そういう描写は多々あった。
目をそむけたくなるようなカットもあった。私はそういうのダメなので、ちょっと回復に時間がかかった。
でもだからこそ、その事は認識しておかなくてはいけない、太宰を語る時避けて通れないと受け止めるきっかけになった。

小さなアパートで思い思いに太宰を語る若者たちのカットが多く使用されていたのですが、
メンタルクリニックに通っていたり、リスカ画像をPCで見ていたり(さきほどの目をそぬけたくなるというのはこれ)
血を着物につけたりの描写などがある。
でも、リアルです。自分の言葉で自由に語ってます。自分の場所で。

この映画に登場した人全てポーズでもファッションでもなく自分の太宰というものが確固としてある。
そして決して器用さを感じさせない。
だからこそ、観終わった後に、目撃者それぞれ、なんだ、やっぱり太宰の事一番わかってるの自分じゃん、
とも思わせてしまう不思議な力があるのです。
そこが新鮮。どこそこの教授が小奇麗なホテルのロビーで上品に太宰論を語るシーンは
教養番組でいくらでも観れそうだけど、ここには全くない。
そういった教養番組も意味があるし私は好きだけど、ドキュメンタリーではもっと生臭いものが
求められるかもしれないですね。そういう点では嵌っている。
ただ重くもあり、一言で「良かった!」と言うには憚られるかもしれませんね。
感想を軽いノリで「どうだった?」と求められたとしたら、うーん・・・と考えてしまうかも。

以前にも書いたように、私は太宰のやさしい部分を追及してきたい、と書いたし今でもそう思っている。
私のイメージや店の印象が、入ってみると全然暗くないからホッとする、という意見を聞いては喜んでるうちに、
暗い闇の部分もしっかりと太宰の一部なのだという事から目をそらしていたような気がする。
そういう意味ではひじょうにいいタイミングでこの映画を鑑賞出来た。

逆に、だからこそ私はこのままいくぞ、とも思う。
血なんて見るだけで失神しそう。手首なんて死んでも切らない。
酒も煙草もダメだけど、太宰治ファン代表のひとりと自負している。
このトシになってもいつでもどんどんマイブームがやってきて夢中になって、実に飽きっぽくて、その繰り返しで
ミーハーなのが私の欠点でもあり、元気の源の部分でもある。
でもこの個性でいてもいいのだと。自分のオリジナリティを大事にせよ、と思わせてくれるものでもあった。
太宰ファンの支持はふたつに分かれそうな気がするけど、ガッツリとお腹いっぱいにさせてくれて私は満足しました。
あの野平さんの瞳の奥に秘めた光を見れただけでも、とても大きなものが得られた。

鑑賞後、監督とトークの時間が少しありました。
「時々現れる救急車のサイレンは何か意味があるのですか?」という質問。
たしかにそれは私もちょっと違和感を感じていました。サイレンや踏み切りの信号の音が数箇所に登場します。
「救急車は何かしらの象徴である。それぞれの登場人物を撮影していて、
各自から緊迫感を感じたので、それを何かに例えて表現したかった」というお答えでした。

「太宰治について、文学というものと日々対峙している人間のドキュメンタリーも見たかったが、
そういう人は出ていなかったように思う。5年間探したそうだけど、いなかったのですか?」という
ストレートかつ実に良い質問には
「実は自分も太宰治が誰なのかわからない。ここに登場する人たちの小さな真実というものが全てである」
というようなお答えでした。このレポ全てうろ覚えなのでニュアンスの差異はあると思います。すみません。

基本的な事は、両監督はフランス人で、日本語は話さない。この映画、準備から撮影から上映された今日まで、
何から何まですべて通訳を介して行われている。
撮影時の苦労はかなりのものと想像できる。そう思うと、今日都内でこの上映会が行われ、
いろんな人に再会出来た事ってものすごい奇跡みたいな事に思えて改めて感動に包まれてしまう。

新たな出会いも体験出来、この日の収穫は大きい。
上映前に関係者集いのパーティが開催され、私も出席させていただきました。
ここで再会できた方もいらっしゃれば、初めてご挨拶できた方もいらっしゃいます。
私にワイングラスを渡してくださった上品な女性に話を伺うと、野平さんの娘さんでした。
この時に野平ご夫妻のお話が出来た事もあり、その後の映画シーンでは先ほども書いたように涙してしまいましたね。

お店のお客さんで、野平健一さんを尊敬している方、いらっしゃいますよ、と伝える事が出来て良かった。
房子夫人による太宰のエピソードでとても好きなのがあるんです、と伝える事も出来た。良かった。
猪瀬直樹さんも来られていて、「俺の本はちゃんと置いてある?」としっかり突っ込まれました。
「ピカレスク」は入荷しても結構すぐに売れてしまうのは社交辞令ではなく本当の話なのでそのままお答えしました。

通訳を務めたり、コーディネーターとしてお店と連絡を担当してくださった方々との再会も、
映画が完成し、上映が実現した事もあり感激もひとしおでした。心からお礼を言いたいです。
フランス語をペラペラ話す彼ら、彼女らは人としても魅力的なのが共通点でした。

でも本日、司会をされていた通訳の男性は知らない方でした。
この場にいたお客さんとも今日盛り上がってたのですが、知的イケメンさんで、
後悔した事があるとすれば、この方とお話出来なかった事くらいです(笑)
瞬時に質問と回答をお互いに伝える通訳って、ものすごく頭の回転が速いのだな、と感動し、
あんなところ見せられたら惚れてまうやろ〜ってかんじでした。

あ、もうひとつ後悔あった。今日お店のお客さんが何人か来ていらっしゃるということで、
終了後ご挨拶しようと思っていたのに、出来なかった事。
監督に挨拶していたらもう23時を回っていたので、きっと皆さんは会場前にでもいらっしゃるかな?と
急いで上がってみたら、誰もおらず。後で聞いたところによるとフロアにいらっしゃった模様。
遅かった事もあり、皆さん帰りを急がれたのだろうな、とそのまま帰宅していたのでした。

あれほど不安だった帰りの電車、この時は全然平気だった。
むしろいろんな人を眺めたい気分でいっぱい。映画に電車の移動シーンも多く登場していた影響もあるのかな。
三鷹駅で降車し、セブンイレブンの前あたりのデッキでしばし佇む。
5分以上そこでボーッっと駅前の風景をただ見てた。
なんというか、ガツーンと久々にきてるかんじ。
映画を観た後にこんな気持ちになったのは久しぶりです。この映画、大成功なんじゃないでしょうか。
とにかく人が見たくて、このまままっすぐ帰りたくない気分になった。
飲めないくせに、初めてバーに寄って一杯飲んでから帰りたい人の気持ちが分かった。

ありのままで何の操作もされていない純粋なものを観たからだろうか。
そして店のシーンが短いめなのも意味があると思う。
個々の太宰に対しての語りと対照的である。
独白もいいけれど、皆で話し合ってみる場もあるのだと知った人には新鮮に見えたかもしれない。
この場所を創り、この場所を提供し続ける事はしっかりと意味のある事なのだと思えた。

三鷹駅近くの飲み屋さんで太宰に会った事があるという人は揃って悪口を言う。
でも不思議とこの店に届く生前の太宰を知る人の声は「優しい人だったよ」というものばかり。嘘偽りない真実。
ここでいいのかもしれない。もうひとつの闇の部分にも目をそらさずにいつつ、
私の姿勢としては、これまで通り、優しさの追求で良い。そう、ありのままで良い。
そんな、濃い1日だったのでした。
マリー・シオネ監督のフィルムに参加出来た事、心からこの幸運に感謝したいと思います。
そして撮影に協力していただいたお客さんに「あのシーンは重要なポイントになってましたよ」と
お伝えし、改めて感謝の言葉を述べたいと思います。ありがとうございました。



inserted by FC2 system